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比翼れんりさんの約束の夏、まほろばの夢の長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
約束の夏、まほろばの夢
ブランド
ういんどみる
得点
60
参照数
398

一言コメント

突然巡るのは過去と未来の輪 消えていた記憶の渦に 悩みながら一歩ずつ近づけるよね

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ういんどみるの新作は、シナリオにminoriやPurple softwareで実績のある鏡遊さんを中心に、他の好きな作品にも関わっていたライターさんを加えた、かなり楽しみなクレジットでした。原画は前作を踏襲しつつ、最近のういんどみるではお馴染みのスタッフであり、それなりの期待がありました。ただヒロインみな原画が違うのは、違和感ないかな?と思いましたが、そこまで気にならず、そこはまとまっていたように思います。

ストーリーの中心は、言わずもがな「りんか」でしょう。夏休みにもどってきたりんかが実は主人公や他のヒロインたちと幼なじみで、不思議な力を持っていたのがわかり、どうして忘れていたのか、その真実を探っていくのがメインになります。共通ルートは、わりと短めで、どちらかというと、各ルートの掘り下げを足し合わせてゴールに近づいてくのが正しいのかなと思います。

陽鞠は「うそおおかみ」という能力で、嘘かどうかが判別できるというのが当初でした。ただ実は、心のうちがすべて見えてしまうのが正しく、それに悩む様がルートのひとつの山なのかなと思います。そもそものりんかと謎の巫女に近づく意味のあるルートだとは思いましたが、それはきっかけにすぎず、最終的な答えは出ませんでした。全体的に繋ぎの印象が強く、あまりメインヒロインのストーリーには感じません。キャラクターもそれほど好かず、山ガールというのは珍しいかなとは思いましたが、そこまで特長には見えませんでしたね。

星里奈のキャラクターは、あまり好かない設定に感じましたが、それほど堅すぎず、わりかしマイルドな印象があり、最後まで苦手なシーンもなくプレイできました。個別ルートについては、その能力に関することが中心になって、主人公と近付くことで起こりうる未来に対して、どう向き合い、回避、また乗り越えるか~という内容なのですが、中盤の山場だと思ったシーンから、エンディングまで飛びすぎて、中身がすっからかん。このルートでネタばらしはしないということにしろ、単体のストーリーとしては、オチもなく、4人中でも群を抜いた出来に感じました。

ちこたむ先生の絵に橘まおさんが声をあてる渚沙が可愛くないわけがない! との戦前の期待通りの作中いちばん好きなヒロインです。キャラクターとしても、幼なじみの要素が全面に出ており、共通ルートからその存在が楽しかった彼女です。個別ルートについては、小さい頃からの馴染みの関係ではお約束の、りんかとの恋のバトル(?)が中心です。どちらかというと、自分の気持ちに素直になる、というのが正しいのでしょうが、話の流れもおおよそ期待の範疇であり、崩れはしなかっただけでも、キャラクター補正で満足のいくルートに感じます。特に"変化"がないエンディングにも見えますが、幼なじみルートならば、これが正解なのかなとも思いました。

りんかルート序盤は渚沙ルートとは逆の立場の恋愛模様が中心でしょうか。中盤の姉が連れ戻しに来る辺りから話が動いていくのかと思いきや、そんなこともなく、最終的な伏線を回収し始めるのがルート後半という、かなり強引な流れを感じます。作品の集大成にあたるところですが、ここまでの伏線をひとつの筋にまとめるというよりは、5人の能力や不思議な繋がりと、りんかと主人公の子供の頃の話は別の線と考えた方が良いのかなと思いました。ルートロックはないですが、一応TRUEに相当するルートだとは思うのですが、正直、期待を超えるような切り返しもなく、ひねりもなく感じました。

全体的に古くから知っているコミュニティの中でのお話のため、大きく話が動くことはなく、そもそもの不思議な能力うんぬんかんぬんも、りんかルート以外ではそれほど深掘りされていなかったように思います。あくまで、能力はひとつのツールとして、話の中心は、ヒロインたちそれぞれの気持ちの確認と、過去と現在の違いを認識するようになっていく、ということなのかなと思います。大きくぶれる話ではないので、期待はずれとまでは言いませんが、随所、単調な話になりがちで、退屈に感じるところもあります。あとはキャラクターの描写絞りきれていないのも気になりますね。密な関係性であるはずなのですが、個々の我が強く出るシーンが多く、なぜそういう言動があるのか、理解できなく思うのがちらほらありました。加えて『「こう」だから「こう」でなければいけない』と前提と結論があらかじめレールのごとく決められているのを端々で感じてしまい、話の広がりを欠くそれも興ざめの一因に思いました。良くも悪くも話が小さくまとまってしまったのかなと感じた作品でした。エッチシーンは濃いめでよかったですが。