これから出会う人たちに見てほしいのは 乾き始めた涙の跡じゃなくて満天の笑顔
SMEE10周年として発売された今作は、そのタイトルどおり、恋人になるまでの過程や仲を深めていく様をひとつずつ描いていく、そんな作品です。雰囲気としては前々作のピュアコネクトに近いところがあるように思いますが、ヒロインや設定からして新しい部分もあり、今までのSMEEとこれからのSMEEが融合した作品に感じます。
亜子は義妹というこで、SMEEの妹枠は外さないだろうと思って望んだら、ストライクど真ん中でしたね。キャラクターとしては、定型的なブラコンも、くどすぎる要素はなく、純粋に主人公が大好きという気持ちが伝わってきます。主人公のシスコンも中々ですが、ふたりの軽快なやり取りは、妹ルートで陥りやすいシリアス面に入ることを徹底的に阻み、お約束の親バレも上手く収めた感じです。そもそものバックグラウンドたる主人公と亜子の子供時代のエピソードも所々入り、回収されるものもありますが、基本的に今の想いを確かめることに主眼は置かれ、エンディングの余韻の残しかたも個人的には好みでしたね。
咲さんは、年上のお姉さんで、正直好きになかなかなれないタイプ。けれども、対等に接する彼女らしさや、甘え方が上手く、そんなにマイナスな感触はありませんでした。ストーリーは、個性的なサブを交えながら、恋愛をステップアップしていく至極シンプルなもので、コレという見せ場はないのかなと感じます。ハムジローのキレ具合はさすがSMEEって感じですが。元々、咲は亜子や可憐と違って過去のベースがないヒロインですが、どうも付き合うまでが短く、さすがに気になりますね。付き合ってから育む恋心、これが今作のコンセプトというなら、しょうがないのかもしれませんけど。
ましろルートは咲以上に、気持ちを入れ込むことが難しいヒロインで、キャラクターだけではなくルートにも共感できるところは少なく感じました。ヒロインたちの中では、おそらく一番出会ってから付き合うまでが短く、付き合いはじめてから二人の距離が近づくというテーマに一番近いのかもしれませんが、どうもましろ自身の人となりが捉えきれなかったですね。ある程度の"共通"がないと、気持ちの揺らぎや恋心に移り変わっていく様がどうも弱く感じます。これもひとつの恋愛模様といえば、それまでなのですが、逆に僕の価値観が古いのかなとも思いました。エンディングの指輪を海に~という場面も、どうも彼女のキャラクターを表しているようで、反対に流れからして浮いているようにも見え、総じてあまり好きになれないルートでした。
久しぶりに森谷実園さん聞いたなあ、というレイナは、さすが森谷さん"らしさ"全開のキャラクターですね。ストーリーは女子寮に舞台の中心がありますが、ちょっと強引な持って行き方で、あまり強みという風には感じませんでした。キャラクターとしては、ましろのようにわりと強引に付き合う始まりからして、あまり好かないようにも最初は思っていましたが、ストレートなキャラクターはやっぱり強い。モデルうんぬんはわりと飾りで、純粋にレイナというキャラクターを楽しむだけのルートと見るならば、これで十分なのかなと感じました。他のルートとは違って、亜子が端々に入ってくるのが、単調になりがちな構成にアクセントとなっていて、その点は感触が良かったですね。
可憐はとてもメリハリのあるキャラクターで、さすが北見六花さんといったところ。亜子と同じく元々の関係性を前提に付き合い始めるので、いくらそこからの恋愛といっても、違和感なく自然と入ってくるかなという印象です。ストーリーもあまりごちゃごちゃせず、自分の好きなことに取り組む彼女を支える構図で、どれほど主人公がそれに近いことをしていたかは微妙なラインですが、各所に無駄がなく個人的には好きです。オカマ店長がプラス材料になるのもお約束ながら良かったです。これぞ正統派のSMEEといった感じです。
所々にあれ?といった印象があるも、SMEEの底力はありました。ただちょっとコンセプトを強く意識しすぎて、土台が弱いのに中身にウェイトが行きすぎてバランスに安定感が欠けた部分は否めません。こればかりは舵取り次第というのはありますが、クオリティを高いレベルでまとめてくるあたりは、キャラゲーメーカーとしての確固たる地位にいることの証明なのでしょう。