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比翼れんりさんのピュアソングガーデン!の長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
ピュアソングガーデン!
ブランド
PULLTOP
得点
61
参照数
476

一言コメント

幸せは未来だけじゃなくて 君のとこへ持ってったっていい

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

PULLTOPの新作は、前々作にあたるココロファンクションに近い世界をモデルに、近未来の情報の海を舞台にしたお話です。タイトルにある「ピュアソングガーデン」というお祭りの前に起こった、タイムシフトしてきたという、いろはを中心にストーリーはスタートし、いろはが帰るまでの短期間が、各ルートの持ち時間という感じで、明らかに描写が先にも後にも足らないですね…… (後日談はFDありきでしょうけど)


玖音は付き合いが長すぎるヒロインで、わりと設定としてはありきたり。ヒロインではなく、キャラクターとしては嫌いではないものの、個別ルートは先に発展するストーリーではなく、今の延長戦といった感じがあります。いろはの曲づくりという流れはかなり期待できそうなイベントだったわりに、いろは帰還までの展開がお粗末すぎ、確かに玖音が主役なのはわかるのですが、ピュアソングガーデンというお祭りだから楽しければいいというのもわかるのですが、、、 エッチシーンばかり印象に残り、こういうものをPULLTOPで十八番にされると、他ブランドとの差別化もわからなくなり、もう少しキャラクターひとりひとりの心情の機微をつかまえて描いてほしいものです。

明日歌は唯一の後輩ヒロインで、先輩先輩言ってくるのがなかなかかわいいですね。キャラクターとしてはヒロインの中で一番好みで、声や絵もよくマッチしていたように思います。ストーリーは、VRハザードを越えて、いろはと明日歌で歌を披露する……はずが、いろはが先に帰るとのことで、明日歌が一人で歌うことに。そこで歌う自信を日々付けながら、感動の当日に~ という、ピュアソングガーデンというタイトルらしい、展開なのでしょうが、イマイチ盛り上がらないですね。そもそもの世界観が、作中1ヶ月程度の尺で繰り広げるには限界がありすぎる。

律。こういう大人のお姉さんのヒロインがどれほど需要があるのかはわからないですが、個人的にはあまり好かないタイプです。それは個人差あるので置いておくにして、個別ルートは、そもそものVRハザードの責任というのもあり、謹慎した律と恋仲になり、なんやかんやで、復帰し、最後にいろはとすずを見送り、またすずに会うために、主人公と二人で力を合わせてがんばろう!という、終始盛り上がりも何もないもの。最初から最後まで、プレイするのが辛く感じるのも久々でした。

いろはルートは、VRハザードが継続し、いろはがこの世界で残り、解決を目指していく、という世界観を再活用する、言ってみれば同じ事を繰り返すお話。いろはがVRアイドルとして認められていく様や、アイではなく本当の自分として、事件に向き合っていくのは、展開としてはアリかなと思います。が、話が表面上だけで進んでいる感じがあり、ストーリーの芯にあるものは、見えてきませんでした。最終的な展開である、VRハザードの終息まであと少しまでいったのにある出来事で絶望的に……でもみんなで力を合わせて解決! というお約束な展開ではあるものの、中身がスカスカで笑いさえ出てきますね。ラストに未来にいろはが帰るところは、大きな超展開なくちょっとホッとしました。
が、アンコールとしてその後のお話がありました。今度は身体も時間遡行できるそうで、それはすごいね。織姫と彦星状態な関係性となりましたが、今度は未来に主人公たちが行き、みんなでピュアソングガーデン(ワールド)の集大成となって、めでたくFinとなるわけですね。最初から最後まで、テーマにこだわりたいのはわかりますが、正直飽きが来ますよね。

いろはルートからの分岐ですずルートがありますね。個人的にはこちらの方が後味や構成的にも好きです。いろはは未来に帰るも、すず(コピー?)が残り、その後の後始末をするという、サブストーリーです。すずが心を通わせていく流れやラストで実体として手を繋ぐ終わりかたは中々にいいですね。

全体的に世界観が大きいようで小さくまとまった印象を受けました。PULLTOPは安定した作品を供給するイメージでしたが、今回ばかりはどうしたのだろう、というのが個人的な感想。傾向としてFDが出そうですが、新規一転な新作を待つばかりです。