桜色の瞬間を繋いだら吐息があふれて ほらまた君への想いがひとひら
実にParasolらしい作品というのがストレートな感想です。
学園の統廃合というのは、さして珍しくもないテーマですが、今作ではその統廃合を阻止するため、そして紗矢の父親の悪事を暴くため、ヒロインたちと協力していくのが共通ルート。
そこからの分岐として、しっくり馴染むのはやっぱり紗矢ルートですね。Parasolが定番にしている、妹、それも双子実妹という背徳性の高い設定でありますが、それをシリアスにさせないのは、作風からして正解なのでしょう。紗矢の父親からのカミングアウトが個別ルートとして中では大きな意味合いがあるも、それ以外に見せ場はなく思います。そもそもあれだけ攻撃的な悪役が居たわりには、次への展開がなく、結局はただイチャイチャして終わるだけです。それが売りなのかもしれませんが、あまりにも中身がなく感じました。ラストの名前の秘密も単発ではそれほどのインパクトはありませんでした。
芳野は卯衣さんらしい、明るさと想いの強さが光るヒロインですね。徐々に距離が近付いていく雰囲気がいちばんあるのは彼女であり、恋人になってからも初エッチシーンへの流れを含めて、個別ルートは良かったと思います。共通ルートでの統廃合に絡む内容が後半にあり、会長ということは他のルートではほぼ回収されませんが、このルートに関しては、上手く繋げたのではと感じます。が、やはり内容はお飾り程度であり、どうしてもヒロインとの1対1が中心になり、エピローグまでが単調に見えますね。これはどのルートでも言えるのですけど……
幼なじみ枠の美綾は、キャラクターとしては非常に良いと思います。ただ、それ以上でも以下でもなく、個別ルートは特に顕著ですが、付き合ってからは淡々とエッチシーンを重ねるだけで、どこがメインなのかわかりませんでした。幼なじみのように、ある程度過去があるならば、伏線を仕込むのは容易のはずなのですが、共通ルート以降の繋がりは一切なく、単にキャラクターとの"いちゃラブ"に終始します。そういうゲームなのだから、それでいいのでしょうが、本当にそれだけなのです…
ヒロイン中でいちばん好きなのは千歳。ビジュアルや声や性格すべてがストライクでした。恋愛研究という彼女の行動がきちんと意味のあるものだったのが個別ルートの中でわかりますが、それがストーリーのベースになっています。話の流れだけならとても好きな構成です。ただ、あまりにも展開早すぎます。せめてイベントをもう少し入れ込めなかったのかと思います。ストーリーを難しくさせないのはキャラゲーの宿命なのかもしれませんが、いくらか掘り下げることも可能だった印象は受けました。
どのルートをとっても描写の薄さは顕著で、そもそもストーリーというか設定からして、限界が見えています。キャラクターの素材は良いだけに、あとはその原石をどう光らせていくかは、シナリオ次第なところがあります。何も壮大なストーリーが必要なわけではなく、キャラクターの良さを立たせる話題でいいわけですから。その最低限がやはりParasolには難しいようで、何年も同じ轍を踏んでいるように思います。やはりキャラクターに惹かれるものがあって、今作もプレイを試みたわけですので、何かひとつの変革があれば次作こそは……と期待は持つのです。