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比翼れんりさんのフルキスの長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
フルキス
ブランド
戯画
得点
67
参照数
1248

一言コメント

ねぇ 君に恋をしてしまっていいですか…

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

戯画のキスシリーズですね。あんまりシリーズで縛っていくと、対比やコンセプトのネタ出しに困っていきそうだけれども……

今作の季節としては、春のイメージで、始まりの季節であり、別れの季節でもあります。

千桜はまさにその季節感に合ったヒロインで、出会いは桜の木の下で。徐々に仲を深めながら、親密になり恋人に、というテンプレながら、これまたお約束の引っ越しを重ねてきます。それを念頭に置いたお付き合いで、急転直下でぶっこんでこない分、印象は良いのですが、別れまでの濃密なイベントたちがエッチシーンしかなく心の交流が感じられないこと、引っ越したわりに「その後」が浅く、春休みに帰ってくるところまでが超特急もいいところ。千桜がそんな好きなタイプではなかったので、ひどくモチベーションの上がらないルートとなりました。

学生会長の陽子は年上ヒロインながら、少しだらけた一面もあり、案外好感の持てるヒロイン。わりと関係が元々あるようですが、あまり過去を振り返ることもなく、もっと言えば現在を楽しむためのイベント要素も少なく、やっぱりエッチシーンが主体。ストーリーとしての落とし所は、年上らしく一足先の卒業とその後の身の振り方。大学に追っかけて~というのは使い古されたものであるものの、場面が飛びすぎてあまり展開としては効果的ではなかったように思います。

幼なじみが強すぎて、恋心なんて気付かなかったゆっき。とても元気でそれでいて不器用で、でも恋したら人一倍純真なヒロインですね。元々キャラクターとしては、とても良いものがありましたが、個別ルートではかわいさに磨きがかかっていきましたね。エッチシーンも一歩ずつという、幼なじみから恋人へシフトしていく気持ちの違いに戸惑いながら、成長していくようです。ルートのストーリーにこれといったイベントはないと思いましたが、シンプルだからこそキャラクターが活きたのかなと感じます。

純恋は唯一後輩ヒロインで、妹の世話をしながら恋をしていく、がんばり屋の女の子です。ひとつひとつステップを踏んでいく様は作中では一番丁寧に描かれており、とても好感度が良いです。問題のエッチシーンも要所に無難に溶け込んでいて良かったですね。妹がわりとキーになり、後半の山で姉としても妹としても成長に繋がった描写かなと思いました。エピローグのCGがとても好きで、一枚の中にいろんなエピソードを感じ取れます。欲を言えばもっと続きが見たくなりました。


原画さんの贔屓目もあるとは思いますが、ルート、キャラクターによっては楽しくできました。ただ明らかにボリュームがダウンしており、キャラゲーとしてだれることがないのは長所なんですが、もう少し、恋をするまでの"過程"は描かないと感情移入も中途半端になってしまうように思いました。