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比翼れんりさんのノラと皇女と野良猫ハート2の長文感想

ユーザー
比翼れんり
ゲーム
ノラと皇女と野良猫ハート2
ブランド
HARUKAZE
得点
82
参照数
460

一言コメント

例えば困難なおとぎ話でも 生き抜いて 旗を立てたら 星となる

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

HARUKAZEの2作目にして、アニメ化も話題になった「ノラとと」の続編ですね。"2"と銘打たれており、その性質としてはファンディスクというより、本編をベースに新たな物語が始まる、といった方が正しいのでしょう。

新キャラ、アイリスとノエルを中心に、ヒロイン昇格となったノブチナ、ルーシア、ユウラシアに加え、パトリシアや井田辺りがストーリーの中心になりますね。このあたりのメンツを見ても、本編メインヒロイン以上に話を作れる人物が多いというのが、ノラととの独特の世界を形作るピースなのかもしれません。


アイリスは、忘却された皇女で、パトリシアとの対比的に描かれるヒロインです。大きな設定に、幾分かクエスチョンは付くも、ストーリーのおおまかなキーとしては、「未来」と「過去」が軸になりそう。ノブチナはじめ、協力を得ながら、未来への進んでいく様がエンディングまで続きます。わりと話の根幹にあるのは単純なもので、ノエルの役割やアンクライ皇国の真相など、散りばめられたパーツはかなり深くあるも、ストレートなアイリスのキャラクターもあり、過去を生かしながら、未来に歩を進めながら現在を生きる、そんなラストに見えました。個人的には、ノラとと"らしい"ノリと構成を集大成させたように感じました。

「仲間は仲間を見捨てない。置いていったりなんかしない。一人ではできないことが世の中にはたくさんある」
ノラととという作品の芯にあるテーマは、ノブチナルートのこのセリフに凝縮されていると思いますが、まさにそれを最終的に体現してみせたのが、そのノブチナルート。家族や友情なんて、ありふれたテーマで、どんな創作物にも一言二言添えられるだけで、メリハリが付く万能調味料であります。ただ、このルートでの肝はやはりノブチナというヒロインらしくないヒロインの強さにあります。強さといっても単に力の問題ではなく、人を想う強さに関しては、作中イチなのは疑いがないでしょう。ストーリーとしては、伏線や展開が読みやすいものではあるも、ノブチナ1人だけではなく、そこはノラととらしく、田中ちゃんはじめサブキャラが中心に盛り上げていきます。不器用さが見え隠れするストレートなルートながら、根底にある意味は大きく「"命"とはなんだろう」であり、本編から通じて見ても、群を抜いたメッセージが込められているように感じました。

ルーシアは損な役回りだなあ、と思っていましたが、その過去と信念が補完されるルートです。幾分かは上2つより短めだと思いますが、前半に中身としては凝縮されている感じですね。中盤から後半にかけては、苦手な犬の克服とは言いつつも、エッチシーン中心のいちゃらぶ。元々のイメージから一転、ちょっと重いイメージが付いてしまったのは、どうなのかなあ、とは感じます。

ユウラシアに関してはヒロイン枠に加わったといえ、尺からしてもサブの延長というかなりのショートストーリー。ファンディスクくらいの気持ちで、純粋にキャラクターを楽しむのが正解かな。

本編での4ヒロインはシーン1枠のみで、アペンドレベルの扱い。やっぱりメインはアイリスとノブチナなのかなと感じますね。ただこれだけで、続編としての役割は十二分に果たしていると、本編と同等かそれ以上に満足感ある作品に仕上がっていたと強く思いました。