時を越え交わる奇跡 前世より深く強く
ALcotらしいキャラクターのノリを活かした不思議ファンタジーとなった今作。
ただでさえトンデモ設定が十八番のメーカーにおいて、さらにぶっ飛んだ設定。処女のまま母親って、なかなかおもしろい。秘匿を共通ルートの時点で全ヒロインに明かして、サブキャラ共々ストーリーを進めていく、わりと先を急ぐ展開。リコが正体を明かして、主人公サイドと和解、協力していく構図になるところまでが共通ルート。
リコルートはわりと物語の根幹に迫ります。サドは他のルートでも思ったけど、典型的な黒幕面。ラストに騒いで消えて行っただけの出番だったように見えましたが、とくにリコとの絡みはそこまでもなく。リコと主人公の関係が実は……というのが最大の見せ場だったのかなと思います。近親相姦なんでもござれ、だなぁ。ストーリーは全体を見渡せば必要なものかなと思いますが、リコのキャラクターがどうも合わず、終始楽しめなかったのは残念。2面性あるヒロインを月野きいろさんが好演されていたのは買いたいところ。
秤真理とは、キャラクターそのものを表した名前だなと思いました。個別ルートは本筋とは少しずれるものの、真理がなぜ正義の塊「委員長」として為るのか、その背景が語られるお話です。途中まではおそらくどの個別よりも好き。ただ父親の死の疑念から、悪霊と宗教、キナ臭い議員と、せっかくの伏線を回収する方法としてはいささか不発。せめて父親が遺したモノが真理の為にというなら、ルートとしては救いがあったように思いますが、結末は「えぇ……」と言葉が出るほど悲しい感じ。キャラクターが良かっただけに、本当にもったいないルートでした。
美命はその手のお嬢ということで、設定としてはありきたりかなと思いました。が、美命そのもののキャラクターは物語の核心に迫る布石。そもそも何故、美命自身が力を秘めているのか… というところが記憶の断片を時折交えながら語られていくのかなと思ったら、ラストのモノローグで回収、その後の解決方法もかなりの急転直下、さらには100年単位で戻れないと言ってた数クリック後に「戻れました。ハッピーエンド!」という、あまりにもスピードが出過ぎたエンディングです。個別ルートに尺がないわけではないので、必要なエピソードや種明かしをもっと絞って散りばめられていればよかったのにと思います。
アイリスはロリママァというジャンルにさらに妹要素がついて、何がなんだかというキャラクターになってしまいました。ストーリーは葛藤がベースに、アイリスと主人公の関係が主になりますね。ラストは随分強引に落としたという感じで、大団円というわけではなしに、二人で幸せにめでたし~という他のルートとは温度差があるように思います。キャラクターが立ってただけに、ルートに入ってからも軽快に行くのかと思っていたのだけれど………
結局、当初の善行を積んで、というのが活きなかった気がする……