また新しい朝が来れば 澄んだ風が心を満たすでしょう
さて「夢」という言葉を辞書で引いてみると
1.睡眠中に、あたかも現実の経験であるかのように感じる一連の観念や心像。
2.将来実現させたいと思っている事柄。
と出てきます。
新ブランドLaplacianのデビュー作は、そんな「夢」をキーワードに、その2つの意味での「夢」を描いた作品となっていました。
共通ルートはいたってシンプルで、夢の中の少女と、各ヒロインとの顔合わせがメインですね。個別ルートの分岐前に縁日イベントがありますが、大方の流れではこういった大きな催しに向けて、みんなで乗り越える!というのが常でしょうが、今作はそこには重点は置いておらず、あくまで通過点として、メインの話は各個別ルートにあるようです。
時雨はハーフのロリ巨乳というわかりやすいヒロイン。キャラクターは色々立ちすぎな気もしますけれど。おっぱいとバレーのコラボレーションはどこかで見たような気もしますが、ルートは素直に仲間と共に試合に向けて、時にぶつかり時に認めあい青春モノです。部員のサブキャラたちが上手くストーリーを作っていたのが印象的でした。ただもう少し合宿のイベント等を通して気持ちを通じ合わせるシーンがあるとよかったですね。
真里奈ルートは医者の娘という、親からの決められたレールをその性格から断れない…というスタンスから始まりますね。これをピアノを通して、自分の「夢」を求めていきたいという本当の気持ちを打ち明けて、というのが本筋。音楽が印象的なこの作品において、テーマ性がよく出ており、またエンディングからも次が意識されておりとても心地よいお話でした。
七ノ羽はザ・文学少女。ストーリーも書き物を通したもので、父親との距離もそれをフィルターに近づけさせていきます。シンプルながらきちんと気持ちに向き合っていくのが読み手としても嬉しく、最後の鍋のシーンではホロリとしてしまいました。最も夢視点が上手く活かされていたのがこのルートであり、表とは違う自分を見せる、つまり心の奥にある本当の自分を意識させ、表の世界に昇華させていくという構図が出来ていたように思います。
さて由衣がメインなわけですが、1周目は
通常END、そして2周目にTRUEENDといった具合でしょうか。みことと由衣、主人公の関係性がこのルート、というか全体の軸として描かれていきます。結局のところハッピーエンドはわかりきっているので、その過程がどう展開されるのかに注目はありましたが、尺が足りないのかなと思います。話が佳境にも関わらずポンポン進むので、もう少し立ち止まって考えさせるようなエピソードがひとつあるとおもしろくなりそうです。が、スタートからのテンポがある種ウリとも取れるので、この配分でもいいのかな。僕はこれで及第点だと思いますが果たしてどうでしょうか。
みことルートは、一瞬ネタのように思いますが、想像していたよりはきちんと作られていましたね。立ち絵や制服や髪型の差分を作っただけに出番もっと欲しかったというのが個人的なワガママなのは承知の上。
全体的な粗さはあるものの、処女作ならではの勢いがありました。とくに、これはコンプ後のスタッフルームでも触れられていましたが、音楽が素晴らしい。BGM含めてではありますが、やっぱり主題歌のキミトユメミシ、そしてスルメのEDたち……これはひとつの矜持としてこれからも持っていてほしいですね。細かな描写や繋ぎ方に改良の余地はあるようには思いますが、作品としての格子はハイレベルで完成されており、また多分野での造詣の深さもうかがえます。ネタ要素が強いのかとも思いましたが、絶妙な駆け引きで展開され、静と動の使い分けが上手いなと感じます。これが真面目と不真面目の境目なのかな。新作がすでに発表されていますが、このスタイルを貫いてさらにレベル高く繰り広げられるものと思いますので期待したいところです。