こんなに近くでキミを見つめてること いつの日か伝えたいよ
ストーリーはとてもシンプルで、変わった設定やトンデモな展開もありません。さらにミドルプライスなので、尺もそれほどありません。しかし非常に中身のある作品です。
開始からある程度キャラには関係図があり、それを感じつつ物語が進みます。キャラクターがかなり絞られているので、会話のテンポがよく、関係ができているので、説明的になることもありません。これが非常に気持ちよく、進められる要因です。ストーリーはエンディングまで大きく動くことはありませんが、ありふれた日常のありふれた関係の中で、およそ誰も気に止めないようなささやかな場面を切り取って紡がれる優しいお話です。
メインヒロインは三人ですが、真のヒロインなのはなぎさ一人。あとの二人はそれぞれの立場に合ったストーリーはありますが、おまけ的な立場でしょうか。なぎさルートのエンディングがとても好きなタイプで、こういった演出にはとんと弱いですね。恵はサブに徹し、個別ルートはありませんが、サイドストーリーを通して、妹としての立場をしっかりと描いていたと思います。タイトルの「となり」が単なる「隣」ではなく、関係性のなかでどういった意味を持つか考えて進めると面白いですね。
突き抜けた良さは無いと思いますが、非常に上手くまとまった作品であり、個人的には期待以上の出来。キャラクターの心理や関係を描写するのが上手いなと感じ、ミドルプライスならではのクオリティーだったかと思います。