心の壁の向こうには ただ何があるの それをわかりたくて
ストーリーは前作と同様ほぼ選択肢なしの一本道。ラストがメインヒロインのルートというのも同じです。ただ違うのは、そこに至るまでの過程であり、メインシナリオの魅せ方であります。
共通ルートと言うべきが正しいかわかりませんが、もしくは永遠ルート前半ともいうべき序盤。心が読める者と心を読ませない者のひとつの結末をまざまざと見せつけられました。
そこから入っていく真響ルートとはるかルート。真響ルートは典型的な幼馴染みルートで、永遠がいたこそから気づけた、近すぎる心を読み解くお話。永遠との区切りをつけ、新しい一歩を踏み出す王道中の王道ながら、清々しいルートだったと思います。はるかルートは、小説という、ある種心理描写の塊みたいなツールを用いながら心の奥に迫っていくお話。永遠ルートの布石ともいうべき、言葉の力を感じさせるルートだったと思います。キャッチフレーズのような「さよならは、きみだけを。」はこの二人のルートに活きているように思えてなりません。
そしてメインの永遠ルート。
展開的には少し強引な気もしますが、現代社会の根底にある、心を丁寧にほどいていくお話。誰しも抱える心の壁をはっきりと描き、その深淵から救い出す、ある意味お約束とも言えるヒーロー的ストーリー。これは前二人のルートが踏み台となって大きくメインルートに活きていると思います。
全体的に気になったのはサブキャラクターの立ち位置。出るところにしっかり出て、ヒロインを立たせるべきところでは下がる。これがどの場面でも絶妙であり、人によっては、なぜあのサブのルートが無いのかとか、描写不足だとか、あるでしょうが、個人的にはこれが正解な気がします。前述のとおりヒロインの中でも、結局メインの永遠のためのお話であり、すべてがラストへのステップに過ぎません。
CGや音楽は今回もハイレベル。
前作12の月のイヴは、非常に分かりやすいストーリー構成で、すーっと入ってくるお話でした。純粋に面白かったと言えるのはむしろ12の月のイヴのほう。ただ今作は非常に難しい作品だと思います。ストーリーが難しいわけではなく、各場面ごとのストーリーをどう捉え、エンディングまでの過程をどう読んでいくか、ある意味考察ゲーに近いところがあります。正直こういう感想でいいのか自分でも悩みます。ただインタラクティブノベルとしての要素が出ていたのは前作以上であり、心の描き方も上手かったと感じました。
エロ面も含めいろんな意味でとても面白い作品を提供するminori。正直過去作品をやっていないので、過去に比べたらこんなの…と思う人もいるでしょうが、一作品としては十分楽しめたと思います。
さよならは、きみだけを。