漣は遠く消え 淡い波の詩が胸に響く
時間遡行ものというのはかなりあると思いますが、今作は少し違います。
大きな部分として「未来は変えられない」ことが根幹にあります。この大原則が活きるのは、やはりメインの詩乃ルートとRe:Callルートでしょうか。
まず大きく見ると、詩乃以外のヒロイン3ルートは、どれもこれも独立した話というのが目につきます。藍里と未喜ルートは比較的軽めではありますが、テーマがはっきりとしていてわかりやすいです。ただその分、ストーリーがそれだけになってしまって淡白な印象を受けます。正直もったいないと感じるところです。そしてゆめルートは少々重め。中盤まではゾクゾクして面白かったんですが、エンディングがあっさり綺麗に終わりすぎた気もします。
最後にメインの詩乃ルート。
「未来は変えられない」
時間遡行ものの中心に置かれるのは、やはり"時間を戻してやり直す"ことにあると思いますが、今作はそれと反する気持ちのいいまで割りきったストーリー。
「時間は有限」
くり返し続け、無限の時間のなかで、主人公もひとりの少女を救おうとしますが、限りは必ずあります。過去を振り返るのはこれで終わり、未来へ… 詩乃ルートエンディングの時計の演出といい、ラストといい、じわじわきます。
タイトルも去ることながら、音楽がとてもいいです。BGMの使い方ですとか、OPのRe:Callが秀逸。
個別ルートの細かい部分には、もう少しほしいなぁ…と思うところもありましたが、トータルで見れば詩乃ルートですべて決まった印象。
ルートごとに登場キャラが少なく、みんなで解決ではなく、個人個人の問題に向き合っていたことが好ポイント。
必ずしもハッピーエンドではないでしょうし、納得する展開でもないかもしれません。それこそ人を選ぶ作品と言われたりもするかもしれません。
しかしテーマが活きた作品。
確かに未来は変えられないけど、その中でできることがある。それを掴みに行く物語。
未来を変えることはできない
そう、それは、例えば君が私の心を変えることのできないように-
「できない私が、くり返す。」
この"私"は主人公ではなく漣さんのことなのかもしれませんね。