はるかかなた 手を伸ばせば夏の青
SORAHANEといえば爽やかな雰囲気の中で生と死をテーマにしたストーリーが十八番ですが、今作はデビュー作「AQUA」に通じるものはあるも前二作とは少し違うようです。
どのルートでも「死」とそこから生まれる「生」がベースにありますが、前二作とは違うのはそこに突飛な設定を入れなかったこと。「AQUA」や「さくら、咲きました。」では非日常の出来事を軸にしたシナリオでしたが、今作は日常の中で「死」にどう向き合っていくか。これが掘り下げ方が甘いようで、どうも雑な印象を受けます。
顕著なのが雫ルートで、母親の死はあまりにも重すぎます。そのわりに後に続くストーリーが軽い印象を受け、アテナの件だけで十分な気がします。同じく心音ルートは、これも家族の死が根底にあるわけですが、もう少し葛藤があってもいいものではないでしょうか。全体的に盛り上がりが小さいように思いました。
ただストーリーは双子、兄妹に重きが置かれているため、はるかルート、結衣ルートがメインといったところでしょうか。結衣ルートは、典型的なストーリー運びで面白い半面、所々描写が省かれている印象も受けます。これが意図したものなら仕方ありませんがもう少し丁寧に描いてほしかったですね。
はるかルートは作品の肝になるお話で、通常ルートでは「死」、グランドルートでは「生」を考えていきます。病気というのがリアルで、この描写が曖昧になるか否かでストーリーの重みが変わります。病気の設定は簡単にシリアス場面を作れますから、扱いには要注意ですが、主人公の個性が強く出た印象はあるものの、テーマ性は出ていたのでよかったと思います。
綺麗な背景や音楽は相変わらずレベル高くまとまっています。が、問題はシステム。発売当初から騒がれていましたが、前二作とは変えてきたようで、強制終了やフリーズの嵐です。自分はパッチver.1.20を当ててプレイしましたが、それでも強制終了はあります。使い勝手のよかったシナリオプレーヤーもなくなり残念です。次回作ではこのあたりの対応が課題になってくるのでしょうか。
SORAHANEといえば青い羽根。今作はそんなイメージを取り入れた日常の中で展開される生と死のお話でした。
わたしのために泣いてくれて-ありがとう。