大人になる それはきっと 涙をこらえるためじゃないんだから
ALcotの10周年記念となる作品で、ブランドのデビュー作Clover Heart'sのテイストを引き継いだような作品(らしい)です。Clover Heart'sの方はプレイしていないので、どの辺りにポイントがあるかはわかりません。ただ鬼ごっこ!、中の人などいない!で感じた個性的なキャラの掛け合いを残しつつ、人間模様を丁寧に描写した非常に暖かみのある作品に感じました。
キーポイントは「双子」
メインの杏鈴と杏璃、ヒカルとヘキル、つばめ、そして泉。ルートごとに展開されるストーリーはそれぞれ異なるものの、根底にあるのは過去と現在、そして変わる関係。
ヒカルとヘキルは二人でひとつのお話で、ミラーツインの特徴を活かした、双子ならではの葛藤と自分に気持ちにどう向き合っていくか。5つの個別ルートの中では一番シンプルで、あっさりしたお話でした。
双子のキーワードから、泉ルートにはある程度の予測が立ちます。ストーリー自体は大きくオリジナリティーのあるものではなかったですが、泉のキャラクターと結末の落としどころが好きだったのでよかったです。
つばめルートは泉や主人公も関わる演劇をベースにしたお話。展開はとても自分好みで、CVの遠野そよぎさんの演技もよかったですね。幼馴染みらしい葛藤も描かれ、個別ルートの中では安定感が光りました。
杏璃ルートは双子ならではの問題に直面し、どう乗り越えていくか、という王道スタイル。何故杏鈴ではなく杏璃で深くこのテーマを突っ込んだのかが疑問に残りますが、まとめかたは良くも悪くもきれいだったように思います。
杏鈴ルートはClover Day'sのメインストーリー。主人公の背景と和、杏璃との関係と決意。いろいろなできごとがぎゅっと詰まったお話です。妊娠騒動を契機として、エンディングまで加速していく構成ですが、もう少しゆっくり丁寧に進んでもよかったですね。一年後に場面転換するのが早すぎる気がします。
絵や音楽は非常に安定していていいですね。ちこたむさんやMANYOさん作曲のOPなど前作、前々作とは違ったアプローチがあり、うまく作品全体とマッチしていました。ALcotではおなじみですがタイトル画面が次第に変わっていく演出や、手紙形式のヒロインのモノローグなど、細かいところでこだわりが見えました。
ストーリーは大きく変わった設定などなく、純粋にキャラクターとシナリオで魅せる作品。10年がキーワードとしてどれほど機能していたかは微妙なところですが、丁寧で暖かみのある作品であることは確か。このあたりにALcotさんの入れ込み具合がうかがい知れますね。
ALcot歴もといエロゲ歴は浅いですが、これからも注目していきたいと思います。
豊穣なる日々は、ここから始まる-