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死刑囚さんの蛇足の長文感想

ユーザー
死刑囚
ゲーム
蛇足
ブランド
Waffle
得点
100
参照数
125

一言コメント

"個人的には"最高のゲーム。大満足の100点

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作に触れずにプレイしたものの理解できない内容などはほとんど無く、最後まで楽しめた。一周目(虐殺)→二~五周目(首吊り・個別)→六周目(グランド)→蛇足√と進むたびに雰囲気も内容も大きく変わり、良い意味で裏切られ続けた。ストーリーや演出、キャラクター、その他全てが自分に刺さったと言っていい作品。ただし人に勧められるかと言われたら好みが分かれすぎる……特に蛇足√は怒る人は本当に怒りそう

一周目
事前知識ゼロ、何もわからない状態からのスタート。『駄作をやっていたらわかるのかな?』的なものも感じつつ(未プレイだがたぶん関係ない)、突然の展開の急変に驚きつつも虐殺。素面の主人公の性格が思ったよりも粗野だったことに少し驚きながらも平和なパートは楽しかったが、長くは無かったためまだ思い入れもなく虐殺に臨めた。Hシーンの台詞回しでこの作品が明らかに尋常ではないことには気づくものの、凌辱ゲー特有のオーバーリアクション的なものかな?と軽く受け止めつつ射精させていただいた。ちなみに私は凌辱ゲーはほとんどやったことは無いのでジャンル全体の雰囲気はよくわかっていない。

咎√
(少ない方ではあるものの)今までやったあらゆる作品の全√の中でもトップクラスに好きになれた√。咎の性格が好みなのもそうだが、ここからの流れを決める一つ目の個別√であったことも大きい。謎だらけの中で眺めるしかできなかった虐殺の後で始まる曖昧な男女関係が本当に良かった。個別の中でも最もメリーバッドエンド的というか、染み入るような終わり方だった。これは考えすぎかもしれないが、パラレルになるとはいえ虐殺√で咎にとっては"死"そのものであった主人公と最後のスチルで手を結んで首を吊っていたのは、死から逃げ続けていた咎への二重の皮肉のようで面白いとも感じた。あともうとにかく咎が可愛い。ビジュが良すぎる。

萌√
虐殺にて明らかに尋常じゃない反応を示していたことがずっと引っかかっていた萌。過去は壮絶ながらも語り口はコミカルで、とても楽しみながら読み進めることができた。というか名言が多すぎて面白かった。最後のHシーンを含めて全体的にギャグ√っぽさはだいぶあったが、あそこまで突き抜けるともう面白いの一言に尽きるといったところ。
他の√はある程度心の動きとかカタルシス的なものを感じたのだけれど、思い返せば萌だけは回想と膣に異物を挿入していたシーンの記憶しかないな……

アニマ√
私はロリコンではあるが、あまりガッツリ幼い系のエロゲヒロインを好きになることが多くなかった……が、アニマ可愛い。好き。めちゃめちゃえっちだった。フェラシーンが最高。
……まぁそれはともかく。今までと違い、希死念慮を持つヒロインを主人公が生かそうとする√で、性質的には一般的な純愛エロゲと近いシナリオだった。気がする。そして今までずっとシルエットだけだった"鬼"も登場して、謎が少しずつ解け始めてきた感覚があった。前作をプレイはしていないものの公式HPを見ていたため、そちらとこちらの『灰樹 由貴』のビジュアルの違いには戸惑っていたし、それが最終的に伏線にもなっていたわけだけれども。

ミルキ√
虐殺√での笑顔や、今まで必ず一日目に死んでいたことから謎の多かったヒロイン。主人公とミルキ、お互いが化け物であることを認めながら人間として最期を迎えたラストは感慨深かった。あと白くなったミルキ可愛い。ミルキの複雑な設定からなる雰囲気を上手く匂わせ続けていたシナリオの手腕には脱帽。
CG鑑賞画面的にグランド的なものがあるのは気づいていたものの、未来の無いミルキの存在はそれを考えるにおいて難しいものだった。何にしろ最終的に死んだわけだが。

皇√
というかグランド。まさか最終的に妹に帰結するとは思わなんだ。
今までの個別とは一転、アツい作品のように皆で前を向いて歩きだそうとする話だった。こういう展開好き。皆で『クソがああああああああ』って言うとこ激アツだった。語られた過去からするとご都合な部分はままあった(今まで影も形も無かった触手の化け物が突然現れたことや、紅香が護衛をつけなかったことなど)が、各√で首を吊るヒロインや主人公を楽しみつつも心のどこかで『こうなったらいいな』と思っていた展開にしてくれた素晴らしいグランド。
皇も可愛かったし他ヒロイン達とも仲良くやっていけそうで満足。こういうの好きです。
良い終わり方だった……90点はつけてもいい。今まで触れてきた作品の中でも上位に入る傑作だ……!



と、その程度に思っていた。



蛇足√
これは本当に蛇足で、きっと人によっては怒って著しく点数が下がるんだろうな、とは思った。でも私にとっては加点だった。わざわざ注意書きまで出てくる『蛇足ルート』のボタンを押すのにはなかなか勇気が要ったし、確かに取返しのつかないひっくり返り方をしたが、後悔は無い。
まぁ私にしても塔の外の世界の"天城 類"やヒロイン達のその後が存在しないという点において微妙な気持ちにはなるが、そこはまぁ劇中劇としての『蛇足』への妄想ということで。
この話の本当に面白いところは、この世界の現実(『蛇足』が映画であるとしている世界)を、性愛持ちが化け物のまま生きているということだと思う。主人公達が唱えた『化け物は人間の世界で生きてはいけない』という命題とも、『化け物であることを否定し続けて人間として生きたい』という理想とも違う、『化け物が化け物のまま人間に紛れて生きる』をできていること。そしてそれが、よりによって皇の演者であるということ。これまでの全て……というか映画『蛇足』を完璧に否定するような皮肉っぷりに驚いた。あと声優の名義まで変える徹底ぶりに驚かされた。
皇の声いいなぁと思ってたら蒼乃むすびちゃんだった。好き。
そして何より、鏡花(皇の"演者")の性愛が死体性愛であったこと。メタ的に、グランドまでにおいてこれだけニッチな性愛が目白押しの中で死体性愛が無いことは少し引っかかっていた。皇の性愛が死体ではなくわざわざ殺人であることも。
だから蛇足√に入って状況を理解した段階で少し期待していたことではあった。
というのも、私自身が死体性愛者であるからだ。無論今のところ二次元の創作限定ではあるが。
だから、鏡花が死体性愛を持っていると知ったとき、これは私のためのゲームなのだと思った。ふと目について、なんとなく惹かれて、積みゲーも多い中で始めて、ここまで楽しんで進めてきたのはこの時のため。このゲームがリリースされたのも、きっと私が出会うためで、そんな運命だったのだとすら思えてくる。それほどまでに面白く、私好みで、私だからこそ良いと言える作品だったと、そう思う。

これ以上の作品には、あるいはもう出会えないかもしれない。文句無しの100点です。