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桃黒さんの赫炎のインガノック ~What a beautiful people~の長文感想

ユーザー
桃黒
ゲーム
赫炎のインガノック ~What a beautiful people~
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
90
参照数
1044

一言コメント

青い、青すぎる!だがそれがいい!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

正直、最初に序盤をプレイした時は
この陰鬱にして異邦的な世界観にほれぼれしたものです
だからこそ、この作品のエンディングで、
名ED曲IKOVEとともに、あの青空が見えたときに、
衝撃をうけてしまった

この作品のテーマはとてもわかりやすくて「手を伸ばすこと」「諦めないこと」
それは執拗に何度も出てくるから、当然分かっていたのだけど
その青い理想に対して、
たぶんこの作品の出す答えは「保留」であり「現状維持」であると
いい大人である自分は結論をだしていたんですよ

この陰鬱な世界だからこそ、救えないまま手をすりぬけていくものがあるからこそ
「ただ、そこで、できる限りのことをする、それは、現状の維持でしかないけれど
そこでできる限りのことをする人間の小ささも、また、美しい」
異形化から都市は解放されても、灰色の空は依然として残る
キーアは元の場所へ戻り、ギーもまた、同じように巡回医師を続ける
そんなエンディングでも悪くはないはずです。
そして自分も、きっとそんなEDだと、ある意味高をくくっていたわけで

そこへ来てあの青空。
あの青い理想をここまで手放しで讃えるのか、手を伸ばし続けた男に対しての答えが
こんなに混じりけのない純粋に美しいエンディングなのかと
理想に対しての作者の視点の優しさ、青さを讃える直球の理想主義
それに打ちのめされてしまった感じがしたのです

ああ、こんなにこの作品は青いのかと
そういえば、「あの果てにある青」を自分も知っていたのだと
今の自分は、知らずのうちにあきらめていたのだと
不意をつかれて気づかされてしまった、
そしてそれが意外にも、思いのほか心地よかった

寓話的であろうとも、純粋にまっすぐであるこの作品の主張に、
一筋の美しさを自分は感じました
だからこの作品は、自分の中では魂の一作です