人は「好きな人」と「好きでいてくれる人」どちらをとるべきなのでしょうか。そんなテーマのゲームです。
(ネタバレなし感想)
もともと自分は長いことエロスケには感想を投稿していませんでしたが、そんな自分でも何か書いてやろうと
思えるくらいの作品でした。エロスケをROM専していて、たまに感想書く人はよくわかるかもしれません。
とにかく読了感が半端ない。余韻に浸りたくて、音楽モードでボーっと音楽聴いたり、2chに入り浸って議論したり、
webのレビューみまくってる作品と出会えたのは久しぶりです。
【個人的推奨攻略順(2ch本スレテンプレ参照、独自改変)】
「-introductory chapter-」1周目
↓
サウンドノベル「雪が解け、そして雪が降るまで」
↓
「-introductory chapter-」2周目(イベントが追加されている)
↓
(C78)ドラマCD「祭りの前~ふたりの24時間~」(オフィシャルサイト通販にて再販中)
↓
公式HP公開中書き下ろしノベル「Twinkle Snow~夢想~」(オフィシャルサイトにpdf形式にてDL公開)
↓
サウンドノベル「歌を忘れた偶像(アイドル)」
↓
「-closing chapter-」ノーマルエンド
↓
「-closing chapter-」小春エンド
↓
「-closing chapter-」麻里エンド
↓
「-closing chapter-」千晶BADエンド(1週目は強制BAD)
↓
「-closing chapter-」千晶エンド
↓
「-introductory chapter-」3周目(千晶関連のイベントが追加されている)
↓
ドラマCD「祭りの日~舞台の下の物語~」(「-closing chapter-」予約キャンペーン特典)
↓
「-closing chapter-」雪菜エンド
↓
「-coda-」雪菜ノーマルエンド
↓
「-coda-」かずさノーマルエンド
↓
「-coda-」かずさTrueエンド
↓
「-coda-」雪菜大団円エンド
↓
ソフマップ限定特典ピロートークCD『幸せの日~ベッドの上の物語~』
↓
(C81)購入者限定販売書き下ろしドラマCD「一泊二日の凱旋」
とにかく物語のボリュームがデカいので、全てを網羅しようとすると投げそうになります。
個人的に-introductory chapter-をプレイして雪菜が気に入って雪菜の苦しむ姿がみたくない方は
-introductory chapter-⇒closing chapter- 雪菜ルート⇒-coda- 雪菜大団円エンド
で十分とも思っています。
以下から本格的に(ネタバレあり)の感想になります。
(システム)
若干使い勝手が悪かったです。バックログなども少々みずらい。セーブ数も100だと足りなくなる。
戯画ゲームなどにあるシーン回想は個人的にすごく欲しかったですね。
解像度が1280×720と高く、イストール容量も7G近くとでかいので、そりなりのPCじゃないと動かないと思います。
あと個人的に会話ウィンドウは消したほうが演出の感じが上がって良かったです。
(音楽)
演出や場面と相まって最高の演出をしてくれます。
ボーカル曲は特に良い場面で使ってくるので非常に印象的です。
また、ヒロインである「小木曽雪菜(CV:米澤円さん) 」が直接
歌っている曲はどれも涙なしには語れません。
個人的最高の曲:時の魔法
(シナリオ)
※自分は雪菜原理主義者なので、それに沿った感想を書かせていただきます。
一言で言うと、この物語の「主人公」は「北原春希」ではなく、「小木曽雪菜」です。
そして「ヒロイン」は間違いなく「冬馬かずさ」でしょう。
高校編-introductory chapter-⇒大学編-closing chapter-⇒そしてまさかの社会人編-coda-
-introductory chapter-では3人の出会い、すれちがい、過ち、別れが描かれます。
最終的に「三人」が「一人」と「一人」になってしまいます。
-closing chapter-では「一人」と「一人」がもう一度「二人」になります。
-coda-では「二人」に再び「一人」が現れたときの結末が描かれます。
ゲーム内時間では実に5年という長い時間をかけて、物語は進んでいきます。
私がゲーム内で最も感じたテーマは2つ
1:『初恋という名の呪い』
2:『小木曽雪菜という女性の強さ』
1:『初恋という名の呪い』
そもそも、男女の恋愛観には差があると言われていて、
男性は恋を「名前を付けて保存」
女性は恋を「上書き保存」
などと揶揄されますが、この物語は前者の男性的な想いが如実に現れています。
主人公春希はかずさに一目ぼれをして、それを消化できないまま大人になってしまいます。
そう、主人公が他のヒロインとどんなに幸せになろうと、初恋の相手「かずさ」のことは忘れることができません。
だから-closing chapter-においてかずさとのことを振り切り(ったつもり)で
雪菜とよりを戻して2年が経過してイチャチャラブラブの生活を送って-coda-において婚約直前までいったとしても、
「かずさ」が現れた途端、春希は「君が望む永遠」の「鳴海孝之」もびっくりのエクストリーム屑に為り得ます。
(本編独白抜粋)
かずさ…どうして…
どうして俺は、お前の側にいると、
いつもいつも、最低の人間になってしまうんだろう。
どうして…
大切なもの全てを、
こんなにもあっさりと捨ててしまうんだろう。
どうして、どうして…
そう、ラスボスである「かずさ」を倒すためには
ラスボスの手先になって世界を滅ぼす(かずさルート)
主人公では倒せず光の勇者雪菜に頼る(雪菜ルート)
しかないのです。
世界を滅ぼすというのは比喩ではありません。本当にかずさだけを愛して「北原春希」が築いてきた「全て」をぶち壊します。
必死に頑張って就職した会社の人間関係
10年近く付き合ってきた親友との関係、そして親友の10年来の恋愛
本当の家族のように付き合ってきた雪菜の家族との清算
描かれてはいませんが、日本という国での「北原春希」の生きてきた軌跡全て
そしてかつての最愛の人雪菜をも分裂症、健忘症のような精神障害にして挙句事故に遭わせてしまいます。
プレイヤーの心がぶちこわれそうになり、本当に雪菜好きにはトラウマ物のエンディングです。
とにかく一貫しているのは主人公の「かずさ」への特別な想い、もとい呪いです。
かずさの恋愛観は非常に単純。「自分と春希さえいればあとはどうでもいい」
故によく言われるのはかずさエンドは「WHITE ALBUM」というテーマに相応しい共に堕ちていくエンドだと言われています。
私がかずさエンドが許せないのはかずさの人間的成長がないことにあります。
人は二人だけでは生きてゆけません。
かずさルートですとかずさは春希に甘えすぎて本当にそれ以外のものはなくなっています。
本人はそれでいいかもしれませんが、人間としてダメなままというは良いことなのでしょうか。
2:『小木曽雪菜という女性の強さ』
かずさが徹底的に「弱くてダメ」な女性として描かれている反面、
雪菜は「成長していく強い」女性として描かれます。
-introductory chapter-においては
最初に春希と付き合いますが、最終的に春希に振られてしまいます。
春希の初恋も、ファーストキスも、そして初体験さえもすべてかずさに奪われてしまいます。
この出来事は春希と結ばれた3年後以降、5年経っても雪菜を悩ませ続けます。
それでも雪菜は傷ついた春希の傍を離れる選択をすることをしませんでした。
そして3年の時が経過します。
-closing chapter-においては
他ヒロインルートでは噛ませとして徹底的に振られます。
ありとあらゆる振られ方をしてプレイヤーの心を揺さぶります。
「もう雪菜を救ってやれよ」と思った方は数知れず。
この想いを簡単に知るにはカウントダウンボイス10日目を聞くとよくわかります。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16407146
(以下雪菜独白)
ねぇ、春希君、好きな人、出来たのかなぁ?
少しは…ふっきれたのかなぁ
もしそうなら…今度紹介してね?
大丈夫、あたし変なこと言わないから
貴方を苦しめるような態度とらないから
春希君…早く振ってよ
あたしを…楽にしてよぉ…
もうこれだけで心抉られて死にそうになります。
それでも雪菜は歯を食いしばって他ヒロインと幸せになろうとする春希を祝福します。
どんなルートでも最後を雪菜がもっていくと言われる所以はここにあります。
そして肝心の自身の雪菜ルートでは
つかず離れずの関係をしてきた春希とついに結ばれることができます。
雪菜は春希を好きでいるために大好きな歌うことを止めました。
歌を歌うと「三人」でいた頃を思い出してしまうからです。
しかし、春希はもう一度彼女を救うために再び歌わせることを決意します。
「三人」でいた頃の、しかもかずさを想って作った曲「届かない恋」を歌わせることによって、
過去を完全に断ち切ろうとしたのです。
-closing chapter-雪菜ルートの春希に限っては主人公のようなカッコイイ活躍がみれるはずです。
結果、雪菜を再び歌を歌うことができるようになり、春希と結ばれます。
ここでのHシーンは感涙モノ。
「雪菜、よかったなー」と思えるはず。
そして、春希は3年前に渡すはずだった指輪を雪菜に渡すことができて、
物語は幸せに終了。
……というわけにはいきませんでした。
2年後、結婚秒読みという幸せな生活を送っていた二人に最後の刺客が現れます。
そう、冬馬かずさです。
-coda- 最終章の始まりです。
春希は再び現れた初恋の人と生涯愛し続けると誓った人との間で揺れ動きます。
そんなの普通ありえないだろ、とツッコみは入りますが、前述の通りそれだけ
春希の中でかずさという女性は特別で魔性の女なのです。
雪菜はそんな春希をみて、「待つ」ことに決めました。
自分が傍にいて支え続けた5年間、愛し愛されることを決めた2年間の絆を信じたのです。
そしてもし自分を頼ってくることがあったら今度こそ春希を救ってあげよう、
そう、2年前自分が春希を救ってくれたように。
それでも不幸なことが重なり、かずさは崩れかけてしまい、ピアノを止めようとして、春希を必要に求めます。
ここで春希はかずさが立ち直るまではかずさの傍にいることを決めました。
しかし、かずさという女性はとても弱く、自身の母親曜子と春希が自分の傍にいない世界は生きている価値
すらないものだと駄々をこねます。
かずさの近くにいれば癇癪を起こして迫られ、かといって遠くにいくこともできず。
冬馬かずさという女性を救うためには北原春希が傍にいる以外はありません。
けれども、春希は雪菜を愛しており、全てを捨てることはできません。
どうすればいいのか。
どうすればかずさに再びピアノを弾かせ、元のかずさにすることができるのか。
……答えは前述の通り、「雪菜に頼る」ことでした。
曜子、春希以外の唯一の人間関係、そして唯一の親友である雪菜であれば。
答えを待ってた雪菜は春希の救いを快諾して再びかずさと相対します。
そして、5年前の別れの決着をつけます。再び「三人」に戻るために。
ここのシーンは本当に名シーンです。
雪菜のかずさへの想い、嫉妬、愛。
特に愛の部分は深く、雪菜自身が「5年という時間かけてやっとかずさと並ぶことができた」と吐露するほどです。
雪菜の努力の甲斐あってかずさは再びピアノを弾くことを決意し、
5年前の「三人」に戻ることができます。
そして、真に「三人」の曲である「時の魔法」が完成します。
全ての清算ができた春希はようやく雪菜にプロポーズをして、ハッピーエンド。
ちなみに、雪菜は春希がプロポーズをした後すぐOKをしませんでした。
5年間待ち続けた雪菜の「5分間のわがまま」は本当に名シーンです。
このエンドが通称「大団円エンド」と呼ばれるのは春希と雪菜が結婚したからではありません。
小木曽雪菜という女性の恋愛観はかずさとは正反対で、「自分も、周りも幸福でなければ幸福にはなれない」
というところです。
このエンドでは他では描かれない「周りの幸福」も描かれます。
・かずさは音楽と真に向き合い、人間関係も回復して友人を得る
・親友である武也と依緒が長年の想いを遂げて結ばれる
・春希が他のルートで逃げ続けた自身の母親と向き合い、和解をする
特に最後の項は雪菜の強い後押しと努力で実現しました。
他の人間にはできないことでしょう。
以上のことから雪菜の強さが伝わったら幸いです。
幸せになろうともがきつづけ、苦しみ抜いて、やっとの想いで手に入れた最高の幸せ。
WAらしいエンドがかずさエンドならば、丸戸さんらしい温かい世界のエンドは雪菜大団円エンドかと思います。
北原雪菜の今後に幸あれ。
最後に。
ライターである丸戸氏のメッセージ「負けて勝つ」は本当に真理だと思います。