サスペンスのち裏御伽話な作品
サスペンスなのは前半だけで、ヒロイン√に入るとカウンセリングに終始するため、
売り文句を期待して買った人は若干がっかりする仕様です。
ただし、自分にとってはサスペンスな前半は掴みの前座で、
おとぎ話を模したと思われる後半のヒロイン√こそが面白く感じました。
「おとぎ話のような~ 素敵なこの世界は~ 不帰の森を渡って逝く~ 孤共の世界~」
……と即狂で歌い出したくなるぐらいに。
カードと物語中のキーワードから、各ヒロインのモチーフはおそらく以下のものと推測されます。
・みちる:青い鳥のミチル
・知紗:ラプンツェル(チシャ)
・灰奈:シンデレラ
・紡:眠れる森の美女
・天音&陸乃:双子座(カストール&ポリュデウケース)
・沙羅:吸血鬼のアルフレッド(!?)
・真希奈:デウス・エクス・マキナ
何が非常に面白かったかと言うと、ヒロインの背景として原作の要素が読み替えて組み込まれている点。
中には、原作キャラに批判的(というか突っ込まずにはいられない?)とも思われる表現もあり、
原作に抱いていたイメージを一考したり、行間に隠れた部分への想像を掻き立てさせてもらいました。
以下、各キャラの感想
・みちる
原作を読んでいないため、原作とのリンク面では楽しめなかった。
「兄(チルチル)から離れてしまった」という点がミソっぽいと感じた。
罪無く正常精神の状態で地獄に落とされ、そこで幸せを求めて罪の意識に苦しむことになる悲惨な点など、
ライターは原作のミチルに対して何かしら含むものがあるのではないかと思われる。
ENDで一人だけ服装が変わってないのは楽園に対する操?
・知紗
魔女ならぬ大金持ちの養女。
ただし、塔に閉じ込められたのではなく、自分から引き篭もってしまった感がある。
淫らかさとか森で迷うとかロープとか、原作を彷彿とさせる点が多い。
精神的に最弱のゆとりでさっくり流し読みしていたため特に思う所なし。
・灰奈
原作シンデレラの悲痛な心の叫びを聞いた気がした。
「父親」を「王子」と読み替えたりすると悲惨さ倍増……。
・紡
死の運命を聞かされていなかったという原作に対し、耳を塞いでいたという改変。
原作から推測すると、紡の宿命(バカ)が両親の諍いの元だったと思われる。(笑)
昼は眠れる森の美女、夜は眠れぬ森の魔女という二面性が合わさったキャラ。
名前が紡で趣味が裁縫、凶器が裁縫道具、オチが茨道とか、どちらかと言うと魔女のキャラが強い気が。
・天音&陸乃
攻略後にWikiの双子座の神話の下りを読んで名前に納得。
性格の差異付けや、主人公が姉妹喧嘩を仲裁した辺りに面白みを覚えた。
・沙羅
原作を見ていないためよく分からない。
吸血鬼にはサラという名前が同じヒロインがいるみたいだが、
キャラ的にアルフレッド以外の何者でもないと思われる。(爆)
「大丈夫」、「何もできなかった」の下りがミソ?
・真希奈
どう考えて振舞おうが結局は都合の良い死に役。
水中引き込みENDは、楽園の維持に回った場合の主人公や、
みちるが味わってる悪夢の類だろうなと鬱な気分になった。
好きなヒロインはみちる。
立場上、割を喰ってるキャラというのは気の毒なほど分かりますが、
別におまけシナリオで無理にしなを作らせなくても十分可愛いですよ?
個人的に、ちぇりーそふとの「月光に濡れる教室で、僕は」の『天使』を髣髴とさせてくれました。
このライターさんは、まだあまり作品を出していませんが、
今後もこのクオリティで作品を提供してくれればお気に入りになるかもしれません。
閑話休題。
「どんなに辛い時も~ 孤りで泣いたりせずに~ 肩をくんでくじけないで~ 空を見上げよう~」
妄言多謝です。