天才が創り上げた、完璧なシナリオ
私が本サイトで初めて100点を付けた作品である。
先に述べておくが、このシナリオライターは天才だ。
凡人がいくら努力しても手にする事の出来ない“技”を持っている。さらにそれを自在に扱える術も。
例えば、この場面はこういう描写にしたら一番面白い・盛り上がる展開になるであろう、という場面があったとしたら、常にベストな描写をしてくるのだ。
だからこそ物語に引き込まれる、いや、引き込まれざるを得ないのだ。
これはもう天性のセンス以外の何物でもない。
どこの世界にも天才はいるものだが、よもや同人の世界でこれほどまでの逸材に出会えるとは思わなかった。
さて、この作品には2つの物語が展開される。
1つは脅迫凌辱ものだ。
単純に不愉快なので私の好みではないのだが、先に述べたように、ライターの完璧なまでの筆力に圧倒され、不覚にも読み入ってしまった。
主人公の気弱な少女が、じわりじわりと堕ちていく様を実に不愉快に、しかし絶妙なテキストで読ませてくれる。
このジャンルから見ても、本作は傑作だろう。
だが、それ以上に傑作と言えるのが、2つ目の物語だ。
これ関してはネタバレ厳禁、ネタバレだと絶対に面白くなくなるので、どういう詳細かは伏せさせていただくが、
クライマックスには、私はもう天啓に打たれたかのような衝撃が走った。まさかこういう展開になるとは。
と同時に、それまでの何気ない描写が実は伏線であったことに気づかされる。
そしてさらに加えて言うと、本作の題名である。
妙な題名だと思われた方も多いと思う。しかしそのクライマックスを見れば、これもまた完璧なタイトルであると実感せざるを得ない。
このあたりの塩梅もまた、天才の所業といえよう。
もし私が物書きの職に就いていたら、これほどの天才がいたのかと挫折していたと思う。
誠に遺憾ながら、本作は未完成作品であり、十中八九、サークルの活動も停止している。
しかしこれほどのものを創り上げる天才が世に羽ばたかないのは絶対に間違っている。
これほどの筆力を見出さない文壇は腐っている。
この制作者の方が、今どこかで別の名で大成しているであろうことを願うばかりである。