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垣さんの灰瞳に機すの長文感想

ユーザー
ゲーム
灰瞳に機す
ブランド
お茶みどり
得点
91
参照数
367

一言コメント

悔しかったら、俺より幸せに死んでみせろ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ひっそりと高評価だったので気になって手に取ってきたが、なるほどこれは傑作だ。

先に難点を挙げると、それは2つ。
1つは非常にアクの強いくどいテキスト。特にギャグシーンのテキストは頭が痛くなるだろう。
もう1つはド級の鬱度。
胸糞シーンが山ほど出てくる。


この作品の真骨頂は、触れ込みにある通り、「選択肢」である。
長編な作品ながら、選択肢はたった1つしかない。しかし、その選択は究極の選択をプレイヤーに選ばされるのだ。


だが更に言うと、本作が伝えたいのは、どんな選択だろうと、そこに間違いは無いという事なのだ。


我々は常に選択をしながら日々を生きている。時を過ごしている。

些細な選択もあれば、自分の人生を分岐させてしまうような大きな選択もあることだろう。

もしあの時、別の選択をしていたら、今より良い未来が待っていたのではないか。
誰もが一度は想像した事があるifだと思う。


しかし、その想像自体が間違いなのだ。その、ある種、答え的なものが本作では描かれている。
本作にある究極の選択肢も、一見すると、ハッピーエンド・バットエンドに分かれているように見える。
もちろんハッピーエンドの方が良く、バッドエンドが悪いと思われるだろう。しかしそうではないのだ。
どちらが良い、どちらが悪いではなく、たとえバッドエンドであろうが、そこには重大な意義があるのだ。
そこには、ハッピーエンドよりもバッドエンドの方がより良いと感じ選んだ、自分の意志があるのだ。そしてそれは何よりも尊いものであり、それを否定してはならないのだ。

ハッピーエンドの描写の方に力を入れているアドベンチャーゲームは山ほどあるだろうが(と言うかそれが普通なのだが)、本作はバッドエンドの描写にも本気の描写をしている稀有な作品であり、そしてそこには非常に前向きで力を貰える強いメッセージが込められているのだ。
こういった作品に出会えた事が、私は実に喜ばしい。

傑作。