怪しさと妖しさ
本当に不思議な作品である。
何か大事件が起こる訳でもなく、淡々と話が展開してゆく実に地味なもの。にもかかわらず、なぜこんなにも面白いのか。
それは物語の世界から漂う、怪しくかつ妖しい雰囲気が絶妙だからだろう。
特に何が起こると言うわけでもないが、言い方を変えれば、今にも何か事件が勃発しそうな、そんなピリッとした緊張感が常に漂っている。
次第にじわりじわりと状況が不穏な顔を見せ、驚きの結末が待っている。このバランスが実に上手い。
土天氏の見事な筆力にも感嘆した。
パッケージを見て疑問を抱いた方は多いと思うが、オールクリアすれば、その疑問を見事に氷解する事だろう。