終わってみるとかなり大味な物語だった。
記憶喪失の主人公に森の洋館……と一見伝奇モノでも始まりそうな印象ですが、ゴリゴリのリアル世界。現代社会の金と権力の上に成り立つ虚像でした。
感想を眺めていると序盤を評価している方が多いように感じますが、僕はむしろ終盤、館が『楽園』として破綻し始めてからがワクワクしました。ああいうめちゃくちゃな状態が好きなので。
ヒロインとしては、双子と紡がかわいくて好きだった。
双子はその過去と沙羅の献身もさることながら、主人公の過去と空音の過去が上手く噛み合い、全体のお話に説得力が生まれたように感じました。
紡√……これはぼくは少し感動してしまった。なぜなら真実の愛というのは共謀罪にしかないと思うから。これまで『楽園』のために殺人を行ってきた紡を主人公は許容した。紡とこれからも一緒にいるために、紡を変わらず愛するために。時には自らの手も汚して、『楽園』の仕組みの一部となってその罪を共に背負うことを決意した。人によっては本当に愛しているからこそ悪いことは悪いと言って止めるべきだ、と考える者もいるでしょうが……ぼくは「愛」が善いものでも悪いものでもないと信じているんです。愛はただ愛しているから愛なのであって、それでいい。彼女がそうしたいというのなら、それが逃げでなくて、諦めでなくて、絶望でなくて――心の底からの願いだというのなら、それは叶えてやるべきだ。応援すべきだ。協力すべきだ。共にすべきだ。それが「愛」だ。
二人はこれからも、『楽園』の中心人物として、その幸せのために手を汚し続ける。それこそ永遠の愛なのだ。
……ところでどの√でも助からない人物が約二名。かわいそう。