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ルークさんの紫電 ~円環の絆~の長文感想

ユーザー
ルーク
ゲーム
紫電 ~円環の絆~
ブランド
hibiki works(暁WORKS響SIDE)
得点
30
参照数
4553

一言コメント

良い点と悪い点を上げました。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

良かった点

1:出てくる武器の種類が多かった事。独鈷杵が武器というのは個人的には斬新で良かったです。

2:キャラクター。衣装も声を当てる声優さんも、それぞれのキャラにマッチしていました(一部演技が微妙な場面もありますが……金剛斎役の比留間さんの、気合いを入れる時の声(ライラルート)や、やられた時の絶叫等)。

3:BGM。お気に入りはクロウ戦で流れる『ヒィヤッハァァァッ』とフツノミタマ復元時に流れる『f2n3TM』。OPはサビの部分は超最高なんですが、それ以外はちょっと(飛蘭さんとそのファンの方々、ごめんなさい)……冒頭の朔VS金剛斎の際に流れたやつと、ライラが教会でジャズを弾いている際のやつがおまけで聴けないのはマイナスポイント。




ヒロインの中で一番好きなキャラはあざみ。ラーメン食べて幸せそうなのが可愛かった。

他に好きなキャラは姫乃、瓦、ウォルロック。





一番好きなのはクロウです。

キャラ自体の造形、衣装と武器である手甲のデザイン、小池さんの声と演技、ハッチャケぶりと台詞回し、ミソカとの初戦で見せたラッシュ、蹴り、重い拳の一撃を全て使いこなす格闘。それらに合う雷撃使いでスピードキャラという設定。全てが調和して非常にグレートなキャラを作り上げていました。

ただ手甲のデザインに関して一部不満が。あの二本の針が大きく飛び出た爪の様な形状のせいで、針が拳より前にせり出しているのでパンチが相手の身体に当たらないし、掌底突きも出来ない。私的には、手の甲にある針自体は必要ですが長くせり出すギミックはいらないと思います。

せっかく羽があるんだから空中戦も見たかった。まあ巫女ご一行様の中で空飛んだのいませんが(あざみ、風遁・嵐壁を使ってる時、クロウの真上にい続けたみたいだし、風遁で空飛べないかなぁ)……せめて羽を生やし、空中から雷撃や羽飛ばし(設定資料集に書かれてます。鋭利な羽を飛び道具に出来るみたいです)で攻撃してくるクロウとの戦闘シーンが欲しかったなぁ。

後、手甲付けているんだから、ミソカの十束剣を受け止めたり受け流したりするとかも出来るんじゃないかと思います。

散々『種としての格が違う』と言っておきながら、人間のあざみやりんどうにスピードで負けているのはなんだかなぁ……




悪かった点

1:ルート分岐に関係なく、どちらを選んでもさして変化が無い、不必要だと感じる選択肢が多すぎる。全部で14箇所。

ハジマリ ノ ウタゲ→『沢の上流に続く遊歩道/沢から離れる遊歩道』、『ヤックでいいような気がする/せっかくだから頼むか』、『もう帰りやがったのか/まだいるんじゃねぇかな』

The mind wall→『このまま稗田を探すべき/仕方ないから近くの貸し衣装屋を紹介する』

仮面/素顔→『よく観察してみる/さっさと帰る』

蟲食む者、旧校舎の主→『前方に駆け込む/その場で回避する』

残留思念→『やっぱ屋上、か?/もしかして旧校舎……』、『そろそろやめとこう……/減るもんじゃねぇし、まだ見る』

ミソカとツヅキ→『周りを見渡してみる/ぼーっとしてる』

泡沫の楽園(朔ルート)→『何つってな/よし、行こう!』

滅びの序歌(あざみルート)→『屋上へ向かう/寄り道する』

キオク ノ クサリ(巴ルート)→『詳しく聞く/普通に聞く』

狼(巴ルート)→『適当に急いで済ませる/丁寧にゆっくり済ませる』、

清浄なる悪魔/不浄なる天使(ライラルート)→『このまましばらく……/いや、さっさとベッドに下ろそう』




2:個人的に意味不明、描写不足、不必要、ツッコミ所ありと感じた点や設定が多々ある事。以下に列挙しました。

・冒頭で朔が持っていた包み紙の中身は何だったのか? 天羽々斬の柄?

・冒頭の金剛斎のセリフ『用があるのは"臥龍の巫女"ではない……お前だよ。裂き手であり、舞い手であり、そして鍵である……』の"裂き手"とは何なのか? "舞い手"と"鍵"は分かるが……蛇腹剣を使って敵を切り裂く朔の事を言っているのだろうか?

・冒頭の朔のセリフ『一体何故私を探していたのかは知らないが、少なくともわかったことは、お前に捕まるわけにはいかないという事だ!』の「一体何故私を探していたのかは知らないが」は変だろう。自分が猿女の巫女であるという事、六波羅に自分の一族が掃討された理由を考えれば、何故探していたのかは見当はつくはず。

・OP前のクロウ達の行動は何の意味があったのだろうか? りんどうが天岩戸を掌握する為の龍脈の分岐点がどうとか言っていたから、その制圧なのだろうが、何故そうする必要があるのか描写不足なので何の意味があるのか分からず、『そんな事する必要はあるのか? 朔に天岩戸を開けさせればいいだけなのでは?』と思ってしまう。

・ウォルロックは何故聖人を嫌っているのか?

・冒頭での姫乃を始めとする陰陽寮の面々と白亜の蟲の大群との戦いのシーン。姫乃のセリフである『さて、先の手合わせでの感覚からいくと、あやつはおそらく……』、『となると、日が落ちるまでが勝負か……』とはどういう事なのか分からない。不必要なセリフだったのでは?

・そもそも、何故朔は授業をサボっているのか?

・異能力者や妖は何故、メディアやインターネットが普及している現代では生きて行きづらいのか? もう少し詳しく説明して欲しかった。

・何故、朔は自分の事をミソカに話そうとしなかったのか? そして話すシーンを描かなかったのは何故か? 学校に立てこもっている間に話した、という事にしたのだろうか? だったらそれは間違った演出だと思う。

・ガマの変化達との戦いの後やライラと別れた後など、仮面の女(白亜)がミソカを監視していたシーンは必要だったのか?

・金剛斎に罰を受けた後、仮面の女(白亜)は誰と会話していたのか? あのシーンは入れる意味があったのだろうか?

・ミソカがライラに"さーちゃん(朔)"とは誰か知っているかと話を振った際に、ライラは何故一瞬目を鋭くさせたのか? その話の後、何故朔を探していたのか?

・何故、クロウはミソカとの最初の戦闘以外で異能力者の脳神経をマヒさせる音色を使わなかったのか?

・何故、ミソカは異能力者の脳神経をマヒさせる音色が効かないのか? ミソカも復元者という『異能力者』のはずなのだが。

・何故、ミソカはクロウのスピードについてこれる様になったり、金剛斉との戦いでパワーアップしたりしていったのか? 納得いく説明が欲しかった。スサノオの戦闘技術と経験も復元して自分のものにしたからとか。

・初クロウ戦終了後、仮面の女(白亜)の声を聞いたミソカが、その声を『一斉に何人もの女が喋ってるみたいな奇妙な声』と形容したが、何の伏線にもなっていない。不要な描写だったのではないのか?

・ヒヨッコトリオの存在意義が不明。一歩間違うとブタ箱行きなミッションに何故付いていかせたのか? 普通はもっと簡単なミッションに付いていかせると思うのだが。ミソカの仲間嫌いの解決にも役立たなかったし。

・加賀見VSウォルロック戦、加賀見の『戯れ言をっ!!』と『何っ!?』というセリフの間、ハルバードの斬撃が一撃走っただけで、何が『何っ!?』なのか分からない。『今までより速く鋭い一撃だった』とかテキストを入れるべき。

・ミソカの能力に大まかな検討を付けていたのなら、姫乃は何故天羽々斬の柄ではなく蛍丸を渡したのか? ミソカが朔と出会う前だったから?

・白亜(クロウか?)は何故ミソカに夢幻投影を見せたのか? その理由が分からない。

・巴VS白亜戦、白亜の蟲が何故死ぬ蟲と死なない蟲に分かれたのか説明が無い。

・ライラの術は白亜やウォルロックを炭の塊に出来るが、その状態の時にもう一発術を浴びせて、チリも残さず消滅させる事で『不死者を殺す』事は出来ないのだろうか?

・あざみVSクロウは何か意味があったのだろうか?

・選択肢『周りを見渡してみる/ぼーっとしてる』の前の、『加賀見はウワサによると選民思想げなもんを持っているらしいな』というミソカの心理描写は不必要だったのではないか? 作中ではそのような事は無かった。

・巴はいつから朔が猿女の巫女だと知って、朔を護ろうとしていたのか?

・朔ルート序盤でのあざみの話によると、ミソカの昔の仲間だった片寄ら"裏切り者たち"は異実隊(巴が所属している異能種実動隊の略、のはず)の所属で、巴ルートでのツヅキの発言によると、昔のミソカは異支特とやらの所属だったらしいですが、ミソカを裏切ったミッションが何故『どこかへの潜入』なのか? そういうのは諜報部の仕事なのでは?

・加賀見達が運んでいた護摩壇様の木材と五大明王の像はどんな用途で持ち運んでいたのか?

・『禊手』とは不浄な存在である不死者に対して有効な力を持つ者って事だったが、ミソカの力は復元能力のみで、神の剣(天羽々斬、天之尾羽張、フツノミタマ)の力だから不死者に対して有効って設定でいいと思う。あざみのルートではそういう事になっていた(清浄なる神々の力は、不浄に大して有効)し、でないと十束剣の存在意義が薄れる。

・金剛斎が六波羅を利用して猿女の一族を掃討した理由(天岩戸の鍵がいくつもあっては意味が無い)が納得できない。鍵は多いほどいいだろうに。

・朔ルートでの金剛斎との最初の戦いで、ミソカが光の剣による二撃目の斬撃を回避した時、ツヅキが『いかん! ギリギリで避けるな!! 危険だぞ!!』と叫んだが、何故危険なのか伝わらなかった。三撃目を避けた瞬間、光の剣の刀身が伸びたとか、そういう描写が欲しかった。

・朔ルートでの金剛斎との最初の戦いで、ミソカがツヅキを逃がしたのは何故か? 朔の力で天岩戸を閉じて、金剛斎を自分もろとも閉じ込めるつもりだったのか? 閉じ込められるのは自分だけでいいと思ってツヅキを逃がしたのなら、その心情をテキストで描写すべきだった。

・ツヅキが朔ルートでの金剛斎との戦いで見せた『内包印』とは何なのか? 作中での描写を見る限り、普通に術を発動している様にしか見えないのだが。

・朔ルート。金剛斎と闘っていたはずのツヅキは、どうやって天岩戸まで戻ったのか?

・白亜はミソカの何処に惚れたのか?

・朔は何故フツヌシの怒りを買うような事をしたのか? 何故ミソカはその場に居合わせたのか?

・朔ルートの金剛斎との最終決戦。金剛斎に胸筋で天羽々斬を柄ごと粉々に砕かれたシーン、CGでは刀身が折られているだけになっている。

・朔がツクヨミを継いだ事が何故作中で説明されない?

・何故、ミソカは鳴神の記憶操作を受けたのか?

・あざみが猫舌という設定は必要なかった。今後のストーリー展開に繋がらないし、ラーメン好きなのに可哀想な設定だと思う。

・ミソカがあざみと最初の一言信義を交わす際に、イベントCGの背景が町並みではなく教室になっていた。

・あざみルートで、りんどうがあざみに渡したMOとこのシーンの一連の会話は何か意味があったのだろうか? このMO、その後のストーリー展開に繋がらなかったのだが……

・あざみルート、朔を取り戻しに陰陽寮に向かう最中に見かけた白亜は一体何なのか? 登場させる意味が無かった。

・姫乃の異能力に疑問点が。姫乃はミソカ&あざみとの初戦で両腕を斬られて敗北したわけだが、瞬時に再生して戦いを続ける事は出来なかったのか? この異能力には『すぐには再生できない』という設定が必要になる。また、『頭(脳)や心臓は再生できない』ということにしておかないと不死者になってしまう。

・ミソカ&あざみVS姫乃戦、姫乃は何故最初から龍の式神や龍勁を使わなかったのか? ただの慢心?

・姫乃との最終決戦で天羽々斬が復元出来なくなってしまうが、これは別になくてもいいシーンだったと思う。

・朔ルート、あざみルートの瓦は結局どうなったのか?

・朔とあざみの関係が描写不足。巴が千景との出会いを回想するシーンみたいに、『昔こんな事がありました~~』みたいな過去回想イベントを描写すべき。『あの日、誓ったこと』とやらも描写されなかったし。

・牛鬼との対決イベントの存在意義が不明。何もその後のストーリー展開に繋がるものが無い。

・ミソカが、何時、何処で、巴から天之尾羽張の柄を手に入れたのか描写が無い。

・巴ルートの後味が悪い。金剛斎がヨモツイクサの大群が出てくる罠を何で仕掛けたのか分からないし、普通に千景倒して子供も生まれて幸せに暮らしてます~でいいと思う。千景の魂もキッチリ成仏させておくべきだった。その方がスッキリする。

・巴ルートのクロウはどうなったのか?

・ライラがウォルロックの事をノスフェラトゥと呼ぶという設定は、別に無くても良かったのでないか? 普通にウォルロックと呼べばいいと思うが。

・ウォルロックは、一般市民に対してそうしたように、空間内部圧力変動能力を相手の身体に対して直接使えば、ミソカやツヅキ、ライラや姫乃相手でも楽に勝てたはずなのに、なぜそうしなかったのか?

・ライラルートで、朔が自力で脱出したのに朔を取り返しにいくという発言や、金剛斎と会ってないのに会った様な描写がある。

・ライラルートでミソカが最初にフツノミタマを出す寸前、ウォルロックは何をしようとしていたのか?

・ライラルートでは加賀見は失脚したはずなのに、『六波羅・陰陽寮連合軍は一気に地上のヨモツイクサを殲滅』のシーンで加賀見の絵が出ている。そこはツヅキの絵を出すべきだと思うのだが。

・ライラルートで、ウォルロックとの一度目の戦いの後、クロウが逃げ延びたという事を、何故明かさなかったのか?

・ライラルート最終決戦で、クロウは何故フツノミタマの事を知っていたのか?

・壬生ツヅキの『ツヅキ』は、漢字だとどう書くのか? ミソカは朔ルート終盤で『朔と晦日』という章タイトルがあるから『晦日』だと分かるのだが……




上記(個人的には、この設定はこうした方がいいと思います、というのも幾つかありますが)以外にも細かい粗は幾つかあると思います。




ミソカの過去の設定はもう少しやりようがあったのではないでしょうか? 作中のようにトラウマにする必要は無かったと思います。

朔ルートでは金剛斎の殺意に怯えてすぐに救出しに行けなかったという事にすればいいですし、作中では過去のトラウマを乗り越えて、各ルートで結ばれるヒロインだけでなく、『俺は、仲間を護る!』と他のヒロイン達も護ろうとするといった展開は朔ルート以外存在せず、それもどこか熱さに欠けました。

それに、片寄ら"裏切り者たち"がどういう人間なのか見極められなかったミソカにも落ち度があるのではないでしょうか?

本当は自分を嫌っていたり、いざというときに我が身可愛さに仲間を見捨てる人間なんだと見抜ける観察眼がミソカにあれば、トカゲの尻尾切りにされても、拷問を受けても、作中ほど心の傷を深くせずに済んだと思います。あいつらの本性を見抜けなかった俺にも落ち度はある、って。

この設定、上手く利用すれば、この過去を経て『切り捨てられる痛みを知っているからこそ、何も捨てず全てを護ろうとする』という熱い主人公になった、という事も可能なのではないでしょうか?




巴ルートでは『裏切り』への結びつきと囚われぶりが酷すぎます。

そのせいで加賀見を討とうとしたツヅキは死に、憎むべき敵である加賀見が生き残るというユーザーにとっては面白くないであろう(事実私がそうでした)展開になってしまいました。

あの時は利害が一致するツヅキと協力して加賀見を討つ事だって出来たはずです。




もう一つ。

ライラルートでのウォルロックとの最初の戦いで、ミソカは焼け焦げた人間の死体を見て、ライラが一般市民の命を犠牲にしてでも復讐を遂げようとして、街中でも構わずガルガリンを放ったからこうなったんだと勘違いして、『……お前のそれは……裏切りだ……』と思います。

実際はウォルロックがガルガリンの盾にしたから焼け死んだのですが、仮にミソカの誤解が真実だったとしても、ライラの行動は『酷い事』ではあっても『裏切り』ではないでしょう。

クラスメイトとして付き合ってきて育んできた、『こいつはこういう奴だ』というイメージが現実と違っただけでは、『裏切り』にはなりません。そういう人間だったと知らなかった、見抜けなかっただけの話です。

自分のイメージと違ったからって『裏切り』に結びつけるのは間違っていると思います。




2010年6月17日追記:アクティベート有りのゲームは買わない事にしているのでリメイク希望を撤回。