素晴らしい純愛物語
元々期待していましたが、予想以上に素晴らしい物語でした。
家の仕来たりや政略結婚などは、お嬢様キャラによく使われる設定ですが、キャラゲーのようにあっさり解決したり、物語に深みを持たせるためではなく、ただ山を作るために無理やりシリアスパートとして使用されることも多く、しっかりとしたカタルシスを生み出す着地点の作り方も難しい設定だと思います。
しかし、この作品は設定をちゃんと活用していて、主人公と茉百合のお互いの未来のために諦めない姿勢が描かれていたり、白鷺家の内情を少しずつ提示して説得力を持たせたり、いろいろな描写を生み出していて、不満を感じることなくプレイできました。
問題解決の場面も良かったと思います。
対立のスタンスを取る人物を説得する場合、それが強く感じられれば感じるほど、解決の場面の説得力を持たせることが難しくなると思います。
大抵何らかの外的要因で解決したり、主人公が説得、奮起し、解決に導くという流れだったりしますが、強く反対する相手の心情を変化させるに値する説得力のある描写って、なかなか見られないんですよね。
きみなごも主人公の説得で解決に至るわけですが、最後に何故巴が心変わりをしたのかがちゃんと描かれていて、理由も過去の自分の境遇と重ねていた部分だったり、茉百合のためにという心情が伝わってきたりで、あまり強引さを感じず、丁寧で良かったです。
安易に完全な形の大団円を取らなかった点も良く。桜子が言っていたような真っ白な未来を思わせる形で締められていたのも良かったですし、小百合の子だったという情報を茉百合に提示して、一つの山を主人公や茉百合に与えるのではなく、秘めたままにして、小百合が茉百合を大切に思っている心情を深くするために使用していたのは感心しました。
キャラの感想↓
晶→FHと同じく少し鈍い部分はあるけど、真っすぐ。といった主人公でしたが、振り回され気味のFHと違って、きみなごでは真っすぐでブレない姿勢が強く表現されていて、とても好感の持てる主人公になっていました。
やっぱりこういうヒロインを常に支えられて、信念を曲げない主人公はいいですね。
茉百合→少しずつ主人公に甘えるようになっていったり、主人公に支えられて強くなっていく過程が素晴らしかったです。
黒茉百合さんも本編と違って、主人公を否定するためだけじゃなく、恥ずかしさや嫉妬の裏返しで出てしまうような感じのかわいい部分が見られて良かった。
守ってあげたいと思えるヒロインでもあり、逆に主人公を鼓舞してくれるような存在でもあり、いろいろな側面が魅力的で素敵なヒロインだと思いました。
シリアスシーンの多い本作ですが、二人の想いの強さを引き立たせる要因になっていて、ただ暗いだけじゃなく、このあたりの描写の上手さも良かったです。
会長→おちゃらけ部分がFHからごっそり削られて、終始真面目に晶と茉百合のために尽力していてイケメン度増大。FHでは目に付く部分も多かったですが、本作では理想の男友達ポジションのような形で、ものすごく魅力的でした。
小百合→この設定があったからこそ、深みが増したというのは理解できますが、境遇が辛すぎて…。
最後のサンルームから見送るシーンがすごく良かったです。
利彦→許さん…。報われない人生だとは思うけど、純粋に茉百合のためじゃなく、小百合に拒絶されて逃避してる感じしか受けなくて許さん。小屋での会長のイケメンパートの踏み台としていい仕事したけど許さん。