必要最小限の構成。十全的なハーレムシナリオの王道。「3人で海に行く」ことの凄さ。最高のラブコメ。明らかに好き合っているのに、なかなかくっつかずに茶番を繰り返す感じがたまらなく良い。 少年誌のラブコメのような微笑ましさ。 日常シーンはそれこそ漫画を読んでいるかのようにテンポがいい。
麗美のポンコツなツンデレ具合、バレバレな愛情。
夕香の甘くおっとりした口調、オタクに理解のある彼女感。
どうしても放っておけない、二人のヒロイン。どちらも最高に可愛い。
「俺が近くにいてあげなくちゃ、守ってあげなくちゃ」と思わせられる。
明らかに好き合っているのに、なかなかくっつかずに茶番を繰り返す感じがたまらなく良い。
少年誌のラブコメのような微笑ましさ。
日常シーンはそれこそ漫画を読んでいるかのようにテンポがいい。
昔のイラストを見られて主人公の好意がバレバレになるシーンなどはこちらも恥ずかしくなってくるようだ。
ずっとこの3人を応援したいと思ってしまう。
武藤此史さんの原画が、二人の可愛らしさ、スタイルの良さ、手を出しづらい格上の美少女感を演出していて最高でした。
今後、チェックしていきます。
シナリオについて。
シナリオライターである十全さんがハーレムを書くにあたって必要最小限の構成となっている。
ここでは「十全シナリオ」の全体論ではなく『二股野郎とパパ活姉妹』に限った感想だけを記す。
目次
◇ギャグ要素について
◇必要最小限の構成について
◇今回に限り指輪を渡す理由
◇主人公のかっこよさ
◇「3人で海に行く」ことの凄さ、その他
◇ギャグ要素について。
十全さんの2022〜23年あたりのネタ帳から"足が速いネタ"を使い切っておこうという意図を感じる。
援交という呼称が廃れ「パパ活」が隆盛を誇っている現在(24年)。
この呼称さえいつまで使われるか分からない。今のうちに使っておこうという意図だ。
ほかにトーヨコ、ぬいぐるみペニス(カエル化現象)など、別の言い換える言葉が生まれて死語になる可能性を持つネタを使い切っている。
最も分かりやすいもので言うと『ドクターK』のネタなどは、2023年上半期の『K2』無料公開ありきのギャグだろう。
ギャグにはしっかりと時事ネタを仕込み、スピード感を大事にしている。素晴らしい。
◇必要最小限の構成について。
『二股野郎とパパ活姉妹』を手にとってプレイしている多くのプレイヤーには、十全さんの書くハーレムにテンプレ展開があることは周知のことだろう。
例えば以下のようなものがある。
・恋愛の競争に負けたくない。確実に男性の庇護下に入りたいヒロイン。
・ハーレムを作る時点でクズだから、女にだらしなくとも問題ない。
・格上のヒロイン。
・妊娠競争。
・正妻日。
・洗ってないペニスが云々。
・直接的な告白によって付き合う展開にはしない。
・基本的に妊娠エンドである。
まだまだあるが、こうしたテンプレ展開には覚えがあるだろう。
これらは全て、この展開を書くことに意味があるためにシナリオから外せない要素となっている。
『二股野郎とパパ活姉妹』はそうしたテンプレハーレム展開とギャグ描写、それに後述の解説のみで構成されている。
話が脇道に逸れるようなことはない。あまりにシンプルな物語には機能美すら感じる。
究極のミニマルだ。
◇今回に限り指輪を渡す理由
指輪を渡しプロポーズするエンディング(以下、指輪エンド)。
過去作では意図的に描かなかった部分だ。
これまでは過程をすっ飛ばしての妊娠エンドにすることに意味があった。
これは今作の構成に理由がある。
今作は必要最小限のハーレム展開に、+αの要素として解説を加えている。
①テンプレ展開が起こる。
②ハーレム形成になぜその展開が必要なのかを解説する。
こうして『二股野郎とパパ活姉妹』ではハーレム展開の解説を繰り返して、プレイヤーの理解を促しながら物語が進んでいく。
そんな中、一つ特異なハーレム展開が描かれる。
麗美のセリフで「道徳も法律もガン無視で中出ししてくれるから大好き』というものだ。
道徳と法律を障壁として描き、姉妹のためにそれを乗り越える主人公を描いているのだ。
過去に法律を障壁の一つとして書いたのは『ナマイキJKライブラリー』であるが『二股野郎とパパ活姉妹』で法律というのは何を表しているのか。
先のセリフの時点ではパパ活のことを言っているのだが、これはだいぶ弱い。この時点でパパ活が違法だから云々という論調が薄いのだから。
実際、同級生の売買春は法律違反なのかもしれないが、道徳や倫理観といった障壁に比べるとどうしても弱い。
しかしこれが指輪エンドへの伏線になっている、つまり指輪エンドによる(形式だけの)重婚の匂わせだ。
愛する姉妹のためなら法律や社会制度への反逆も辞さないという心象描写を描いているのだ。
◇主人公のかっこよさ
十全さんのシナリオでは主人公が「本来の自分なら出来ないこと」を頑張る姿が描かれる。
例えば「陰キャでオタクかつ童貞の主人公が女の子のために二股をする」などだ。
『二股野郎とパパ活姉妹』で障壁になるのは倫理感や、主人公の勇気が主だ。
陰キャが女を口説くというのはとても難易度の高いことだ。
今作でも『トメフレ』シリーズでも、最初に同棲とセックスへの大義名分が与えられる。
初めこそなし崩し的に肉体関係に発展するも、いつかは勇気を出して「自分のものにする」行動を取ることになる。
例えば『ワンピース』でルフィが仲間のために戦うのと、ウソップがルフィの夢のために戦うのとでは、両者の覚悟の種類に違いがあることは想像に難くないだろう。
十全さんのシナリオもそういうことなのだ。
女を口説くなどとても考えられない陰キャオタクの童貞。自分に自信のない男が、本来の自分なら絶対に出来ないことに挑戦する。
また、主人公には勇気や行動力の無さという問題の他に、世間体や常識、倫理などの障壁も立ち塞がる。
「二股するなんて女の子に悪い」「そんな最低なことできない」というような話だ。
とはいえ、この部分は今作では軽めに書いてあったように思う。
このように、主人公は本来なら勝てる見込みのない戦いに挑むわけだが、その問題が内面のものである限りにおいては、実は解決の道が用意されている。
ヒロインが、主人公にハーレムを形成できるだけの度量を持たせようと教育(意味深)する道だ。
ハーレム形成は主人公の手だけに依らず、参加者全員のものになる。
みんなで不器用ながらも自分達の居場所を作ろうとする、常識や世間に負けずに生きていくために。
巨大な敵と闘う男の姿は常にかっこいいのだ。
◇「3人で海に行く」ことの凄さ、その他
指輪エンドの特異性に目が奪われがちだが、海に遊びに行く計画についても新しい試みがなされている。
海でのハーレムエッチは恒例のことだが、学友と建てていた計画ではなく3人だけでの旅行という形で行われることとなる。
これは「自分達3人の心が一番大事」ということの強調だ。
世間ズレした生き方をしていくからこそ、自分達の心が重要。これまでも散々描かれてきたことだ。
学友と海行きを計画するシーンを入れた後に、その計画をあえて無視する。
陰キャ主人公が2人の彼女を手に入れ、問題だと思っていた父親からも受け入れられ、学友も今までと変わらずに接してくれる。
多くのものを手に入れたが、実は本当に欲しいものは最初から姉妹だけだった。
「3人で海に行く」だけでここまでの描写を見せてくるのは流石としか言いようがない。
今作では過去のハーレム展開のテンプレに沿って、素材を生かした薄めの味付けがなされている。
十全さんは『二股野郎とパパ活姉妹』によって、自身の持ち味であるハーレム展開のテンプレを「王道展開」にまで押し上げようとしている。
武道で言うところの"型"の披露、料理人で言えばレシピと調理方法の公開。
十全的なハーレム展開の一般化、王道化は実はもう始まっている。
ヒロインレースの存在しないラブコメ『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』のヒットは記憶に新しい。
これに影響を与えたか否かは別として、世間に"十全的なハーレムシナリオ"を受け入れる風潮が広まっているのは事実だ。
十全さん、アニメ化いけますよ!
でも今まで通り、年に一本はエロゲも書いてね!
あと毎度のことながら主題歌、エンディング曲ともに素晴らしい。アルバムも待ってます。