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ヌイさんのLOVELY QUESTの長文感想

ユーザー
ヌイ
ゲーム
LOVELY QUEST
ブランド
HOOKSOFT(HOOK)
得点
100
参照数
691

一言コメント

瑚乃瀬羽美という女の子に出会えて本当に良かった。こんなにも純粋で美しい世界を見られて本当に良かった。例え平坦でもいい。彼女が幸せに過ごしているその後の世界を見たい。どうかお願いします。以下理性の檻をぶち破って感情のままに書き連ねた汚文。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

純愛とは何か。ときに肌を触れ合わせ互いに頬を染め合いながら。ときにほんの少しの勇気を振り絞って自らの気持ちを伝えようとしながら。会えないときに相手のことを思い、高鳴る鼓動を抑えられずに身悶えながら。こうすれば喜んでくれるかなと緊張と淡い期待を抱きながら、相手のことを想い行動しながら。そして相手のことをもっと知りたいと思いながら。そのような営みを通し試行錯誤を繰り返し探求していく(あるいはその営み自体もまた純愛なのだろう)。体を交わすことも唇を触れ合わせることも気持ちを伝える手段でしかない。そんな純愛の営みを余すことなく堪能できた。例えるなら一ホールのケーキを味わうようなそんな感じ。大方の人は全部食べる前に飽きてしまうかもしれない。特にこれといった障害もないし(実妹ですら世間の倫理など知らぬと開き直ってるし)スパイスとなる出来事もない。大方の人は全部を食べる前にお気に入りの1~2ピースを食べたら終わってしまうのではないだろうか。またその甘さだけを味わって平坦に感じるかもしれない。しかし私はかき乱され非常に切なくなり幾度も涙を流した。恐らく最後まで味わえたのは確かにそこに存在する「切ない」という酸っぱさを所々でかみ締めることができたからだと思う。何より羽美ちゃんのことをもっと知りたいと思えたからだろう。

以下それぞれの娘の雑感。

アイノ

蛍のシーンが特に印象的だった。羽美ちゃん以外では一番心に残ったかもしれない。互いに言い訳を交わしながら触れ合った掌。小さな声で歌われる蛍の唄。
それがあまりにも幻想的でずっとずっとこんな優しい瞬間を見ていたいなって思いました。
肝試しの後の羽美ちゃんの件は非常に胸が締め付けられる思いだった。
「そっか......うん、何か、そんな気がしてたんだよね」
羽美はいつものようにご飯をよそってくれた。
いつもと同じ笑顔で
「はい、めしあがれ」本文抜粋
この裏で彼女がどれだけの苦しみを押し殺していたのか。よくある「ありふれた」失恋だ。それでも心の傷はその人だけのものだから。抱いてきたおもいの分だけ深く深く刻み込まれるから。誰にも打ち明けることなくその痛みを抱えて生きていくのだと思うと涙が出てきた。
話をアイノに戻すとアイノは天真爛漫で異性をあまり意識してないような娘だったけどそんな娘が少しづつ恋に目覚め、初めての感情に戸惑いながらも好きという気持ちを素直に伝えていく姿は非常に初々しくてとても良かった。

水穂

正直やってて一番苦しかった。最初の方は特にそうでもなかったんだけど.......
学外では高嶺の花のように扱われている娘が、家の中ではお兄ちゃんに甘えまくる。
うん、うん。悪くない。これだったら人気も出そうな気がするけど、なぜだかやたらと優遇されてるようだから逆によく思われなかったのかな?とかって思ってました。
ただ羽美ちゃんから料理を教わるところを見てからはもう印象が180度変わりました。本当にこのときばかりはその酷さに怒りすら湧きました。長年想いつづけて来た人を奪われその心の痛みすらまだ残っているだろうに、今まで自分だけが知っていた好みを全部教える。いうなれば今まで自分を支えていた特権を差し出せと言っているのだ。それでも羽美ちゃんは辛さを押し殺して笑顔で料理を教えていたのだと思うと心苦しくて涙が止まらなかった。一体今まで自分が何年も何年もかけて手探りで編み出して覚えてきた味をほんのわずかな期間で奪われていくのを目の当たりにしたとき羽美ちゃんは何を思ったのだろうか。その上料理を覚えたらお役御免だなんていくらなんでもあんまりすぎる。このシーンの後のことはおかげであんまり覚えてない.....ただなんとなく気持ちをわかってる上で羽美ちゃんに頼りすぎなんじゃないのって感じた。

いろは
最初見たときはなんとなく五人の中で一番苦手なタイプだなって思った。
でも独自の固い恋愛観を持っていたり、実は非常に初心だったりけっこう動揺したりとかわいらしい側面を持ち合わせていて最後までいくと割と悪くないなあと思いました。

先輩
キリっとして身の振る舞いも完璧で若干の厳しさを併せ持ちながら皆の羨望を集める生徒会役員。それを本人も意識してか、あるいは年下に情けない姿を見せられないということか恋愛でも常に一歩リードしようとするけれども、初めての経験でうまくいかないことも多い。下着を選ぶときにサイズを重ね合わせられて慌てたりとギャップがよかったです。

羽美ちゃん
そもそも知ったきっかけがこの娘が可愛いなというただそれだけの理由だった。今思うと運命だったのかなって思いますね。最初の方なんて一つ進むごとに妄想して頬を赤らめる彼女があまりにも可愛すぎて叫びながら自分の太腿を叩いたり悶えてたり。でもいつしかそれだけじゃなくなってて彼女の一挙手一投足に目が離せなくなって。正直ただ可愛いって思う女の子は今までいくらでもいたけれども、もっとこの娘のことを知りたい、もっとこの娘と一緒にいたいと思う人は本当に全然いなかったので正直すごく戸惑っています。泣いたところはほとんど彼女絡みでしたね。本当に本当に健気でいい娘で、たとえ主人公が誰か他の人とくっついても主人公の幸せを願ってくれて。自分が一番つらいはずなのに。いつも主人公が誰か他の人とくっつきそうになるとき真っ先に気づいちゃうんですよね。他の誰よりも主人公のことを見てきたから本当は気づきたくないのに心情の機微がわかってしまって。他の人と付き合うことになったことを告げられるたびに「ああ、やっぱりそうなんだね。」って寂しそうな顔をするのは見ていられませんでした。一番最後だったんですけどもうそれまで何度も何度も失恋してそのたびに苦しむ彼女を見てきたからようやく幸せにしてあげられるんだなあって気持ちでいっぱいでした。ラブスマ活動の本当の目的、唯一彼女だけが恋心を自覚し、告白をしようとしたという流れからやはり彼女と結ばれるのが一番あるべき結末であるように感じられたし。正直いうと出会ってそんなに間もない娘に主人公がなびくのを見ると寝取られたように感じてあんまり好きじゃない。しかも悪いことにそれがハッピーエンド扱いされるのだから、溜まったもんじゃない。理屈では恋愛に年月は関係ないことはわかっているけれどもこれはいつまで経っても割り切れないですね。まあそれはとりあえず置いといてとにかく可愛かったです。砂浜に相合傘を書いてたり、匂いをかいでて我を忘れたり。かなり匂いフェチなところが変態チックなんだけどもそこがまたいい。ガーリートーキングでは常に身悶えていて本当に好きって気持ちが伝わってきました。転校生が来るってときも「自分のライバルが増えちゃうかも~」ってところだけを心配してるところとか、汗をかいてても絶対にいい匂いだもんって言い切っちゃうところとか、本当は死ぬほど恥ずかしいのにそれを堪えて抱きしめてもらうところとかすごい良かったです。てかてかもう全部が可愛いよ!なんだよもうこんなの見せられてなびかない男がいるかよ、クッソどうしてそんなに可愛いんだよもう。
幼馴染なのに少しのスキンシップでも文字通り顔を真っ赤にして恥ずかしがるのはすごい新鮮だった。というか羽美ちゃんとのラブスマ活動まじで最高なのばっかじゃないですか。世界の中心で愛を叫ぶとか耳元で愛を囁く、とか耳元で愛を囁くとか。あの手この手でにやけさせられて頬が引きつってしまった。。個人的には膝枕も見たかったな~とは思ったけれども大変満足しました。
そして結婚指輪を渡す場面。はにかみながらも喜んでくれる彼女を見て、本当に良かった。本当に良かった。と泣きながら繰り返すしかできなくなりました。本当に彼女が幸せになってくれて良かったです。
もう少し幼い頃のお話とか見てみたい場面もいっぱいあるし、羽美ちゃんのことをもっと知りたいけれども、こんなにも純粋な気持ちを知ることができて本当に良かったです。

付けたし

最後の海辺に出ることを渋る羽美ちゃんが手を差し出され一緒に砂浜に向かう所は、今までの二人の過去、現在、そしてこれからについてが本当に短くはあるけれども良く描かれてるなあと思いました。きっと遠い昔の幼かった頃も渋る羽美ちゃんに手を差し出して連れ出したことがあって、そのときのことを思い出して少しびっくりした表情をするんだけども、彼の掌はあの頃と変わらずにずっとずっと羽美ちゃんの手を引いてきて、きっとこれから先も変わらずに優しく引いてくれるんだろうなっていう想いがあって。......だからこそ最後の「大好き」って言葉に繋がったんだと思います。
「君と一緒に行けばきっと大丈夫。」幾星霜の月日が経っても。この先描く恋の模様はわからなくても。まさにその歌詞の通りの想いが溢れていたと思うんです。

最後に

最初からシナリオがないとかって決め付けて、ただ表層の意味だけをなぞって読んではいけないと思うんです。それは先入観となって読んでいく中でのただの障壁にしかなりません。LOVELY QUESTも決してシナリオが良いとは言われてないし、奇跡のようなドラマチックな場面もほとんどありません。それでもこの世界に生きる彼女たちの想いの純粋さ、それの美しさを想うだけでこんなに感動したんです。もしかしたら気づけてないだけでそういう例はいっぱいあるのかもしれません。そんなことを教えてくれたLOVELY QUESTの世界に出会えたことを私は忘れません。本当にありがとうございました。
もう何かいてるのかうまく考えがまとまらなくなってきたけど、とりあえず羽美ちゃんが可愛い。もうそれだけでも今は
十分です。