女の性について
「femme fatale」
ファム・ファタールとは「男を破滅させる魔性の女(悪女)」の意を持ちます。「悪女」といいますが、実際のところ女性の何が悪いのでしょうか? 女性の何が罪なのでしょうか? それが本作の大きなテーマとなっています。
ですから、形式上「主人公」と呼ばれるものは我々と視点を共有している八神なのですが、実際の主役は本作に登場する「女性キャラ」です。さらに「真の主役」と呼ぶべき存在がいるとするならば、それは「フレイア」に他なりません。本作の犯人とも言うべき悪の親玉は当然「青柳」です。女性の性を売り、金に買え、ドス黒い願望にまみれた悪党の中の大悪党です。しかし、青柳の遥か彼方その後ろで悠然と手を引き、本作の起承転結のうち「起」と「結」、もしかすればその全てを担った真の黒幕は実はフレイアなのです。そこには、男だけでなく女をも魅了する「悪女」、果てしなく罪作りな女がいたことを忘れてはなりません。
幼い頃から性的暴力を受け続け、次第にそれを己の絶対の武器として用いるようにすらなった、あのツェイリンでさえフレイアの前では単なる一介の女でした。フレイアを前にしてツェイリンは嫉妬めいた口調でこう語ります。
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「…貴女、どうしてそう美しいのかしらね…
自分が異性にとって罪だと思った事はない?」
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フレイアは悟ったようにこう返します。
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「……それが……きっと、私の罪…。
生きているだけで……異性を貶める……」
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生きているだけで永遠に罪を背負い続け、それと同時に男に罪を与え続けます。それは、ナオミ、カルメン、キルケー、サロメ、マタハリといった古来より存在した、もしくは悪女というものの、その証明のために生み出された存在。まさに、「悪女」そのものでした。では、彼女(ら)の罪はどのようにして赦されるのでしょうか? それは、本作における最後の選択肢分岐、バッドエンド・トゥルーエンド、どちらを選ぶかによって違った結末が用意されていました。どちらも衝撃的な結末を迎えます。どちらが真のエンディングか、どちらが正しいのかは各々の判断に委ねたいと思います。エロゲでも数少ない、「女」の「性」というものについて真摯に描いた作品でした。
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全ての男は、無垢をさらすその生き物には抗えず…
それを手に収める為には多くを省みないだろう。
僅かに残る後ろめたさを、男は女の罪となすり付け…
力なく赦すその姿にまで、罪深さを感じるのだ……。
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