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エロゲにはエロゲの良さがある。さんのSTEINS;GATE 比翼恋理のだーりんの長文感想

ユーザー
エロゲにはエロゲの良さがある。
ゲーム
STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
65
参照数
311

一言コメント

STEINS;GATEのまったりFDで,シリアス要素は皆無です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作は,冒頭に書いたように「STEINS;GATE」(以下,「本編」)のFDです。
本編と異なり,シリアス要素は皆無なので,本編のようなシリアス展開を期待すると確実に拍子
抜けすると思います。

本作のストーリーは,Dメールの影響によって過去改変がなされた世界で特定のヒロインとの間
でちょっとしたトラブルに陥り,その過程でイチャイチャするというお話です。

以下,ざっとプレイした順に感想を。

●共通√
 共通√の開始時点は,本編で発見されたDメールを多用した結果,過去改変が生じてしまった
世界線変動率3%台のδ世界線という設定です。一見すると,ラボメンが8人に増えていたり,
未来ガジェット研究所が資金難に陥っていたりと些細な変化に思えますが,各√に入るとその
変化に色々と気づくと思いますので,本編との違いを楽しむのも一興かもしれません。


●紅莉栖√
 ストーリーは,開発した未来ガジェット12号機(男女それぞれの腕に付けるウソ発見器)
を誤って付けてしまい至近距離での生活を強いられるという,手錠などでよくあるお話でした。
そう途中までは・・・。途中から,13号機(脳の記憶を映像化する)と14号機(電波ジャック
を可能にする)が不慮の事故で第三者の手に渡ってしまったため,回収に向けて奔走するという
お話です。

 本編でも思いましたが,岡部と紅莉栖の関係性は見ていて微笑ましいですね。紅莉栖は,
相変わらずなスイーツ脳ですが,普段のサバサバした姿とのギャップが魅力的ですね。
そして,何といっても,普段厨二病全開な岡部の時折見せるツンデレが,格好良かったです。
個人的には,岡部はとても空気が読める人間で,意図して道化的な役回りをすることも多く,
昨今の朴念仁で鈍感な主人公よりよっぽど好感が持てますね。


●鈴羽√
 ストーリーは,鈴羽に片思いをしたダルが,アキバ系の趣味を捨てようとしてしまうため,
自己の存在が消滅するという歴史改変を恐れた鈴羽が岡部と協力し,それを阻止するというお話
です。

 本編で既にダルと鈴羽の関係は判明しているので,ダルの一人相撲であることは事前に分かって
いましたが,やはりこの√でも,岡部の格好良さが光っていましたね。特に,ラボメンのため,
形振り構わず奔走する姿は,不器用ながらも,さすが主人公だなと思わせるくらい眩しかったです。


●フェイリス√
 ストーリーは,フェイリスの経営するメイドカフェが4℃にメイドを引き抜かれ,買収されそう
になったため,岡部を始めとするラボメンが協力して経営を立て直すお手伝いをするというお話です。

 本編がシリアスな部分を受け持っているため,他の√同様にドタバタ展開がメインで,終始小悪魔な
フェイリスに振り回される岡部という構図でしたね。恋愛色は薄目でしたが,ラボメンが万遍なく活躍
するお話なので,そういうラブコメ的な展開が好きな方は楽しめるのではないでしょうか。


●萌郁√
 ストーリーは,資金難に喘ぐラボメンが演奏動画を投稿して賞を取るために練習をする傍ら,岡部が
萌郁から頼まれた仕事を通じて関係を深めるというお話です。

 本編で√がなく,不遇な扱いだった萌郁なので,本作の中では比較的シリアスな展開でした。ただ,
萌郁の抱えるトラウマは,萌郁自身で解決するしかない類の問題なので,何というか薄っぺらいラブ
コメでありがちなお話で,別に「STEINS;GATE」のコンテンツとしてやる必要は無かったと思います。


●ルカ子√
 ストーリーは,男のママであるルカ子と知らないうちに恋仲になっていた岡部が,偶然見かけた竜を
封印するために修行をしていくうちに,次第にルカ子に惹かれていくというお話です。

 他の√と違い,恋人関係から始まるので,終始2人しか絡まないお話ですね。また,「竜」騒ぎも
紅莉栖のミスに起因する幻想なので,結局ドタバタがあっただけでしたね(苦笑)。


●まゆり√
 ストーリーは,Dメール実験によって高額の電気代に悩まされたラボを助けるため,まゆりが陰でバイト
をするというお話です。

 岡部とまゆりの幼馴染という関係が心地よい√です。まゆりは,異性というよりは家族と言った方が
しっくり来る関係なので,ストーリーも終始マッタリとした感じで進行しますね。ただ,どうしても
起伏に乏しい展開ですので,退屈感は否めませんね(苦笑)。
 本筋とは関係ないですが,紅莉栖が段々と腐女子化していくやり取りは面白かったです。


●総括
 事前に「STEINS;GATE」のFDと聞いていたので,さほど期待はしていませんでしたが,それでももう少し
くらい盛り上がる場面があればなあっと思わずにはいられませんでした。個人的に「STEINS;GATE」という
作品は,本編での不条理な世界に翻弄されながら,それでも抗うラボメンの姿に魅力を感じられたので,
本編のように胸が熱くなる展開はもう味わえないんだろうなあと思うと非常に残念です。