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エロゲにはエロゲの良さがある。さんのChuSingura46+1 -忠臣蔵46+1-の長文感想

ユーザー
エロゲにはエロゲの良さがある。
ゲーム
ChuSingura46+1 -忠臣蔵46+1-
ブランド
インレ
得点
85
参照数
1075

一言コメント

燃えと萌えは,その配分が難しいことを如実に表した作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

公式ジャンル:「燃え萌えサウンドノベル」

忠臣蔵について,全くと言っていいほど事前知識がない状態でした。

本作の同人時代の作品は未プレイだったのですが,評判を聞いてこの機会に
プレイしてみました。
以下,ざっと√ごとの感想を。


<假名手本忠臣蔵編>
忠臣蔵を家老である大石内蔵助の傍で見守るという,いわば山科側視点から
見た忠臣蔵のお話です。
プレイ当初は,またよくある主人公が過去にタイムトラベルして,女人化
した歴史上の人物といちゃいちゃするだけのゲームかと思いました。しかし,
プレイしていると,主人公が謎の持ち上げられ方をするような展開ではなく,
直向きな努力を積み重ねる姿に好感が持てました。
また,大石内蔵助という人物が時には家老として,時には一人の女として,
強さと弱さを併せ持って苦悩する姿を応援したくなりましたね。
ただ,大石内蔵助がロリ化したり,成人化したりと姿を変える設定は要らなか
ったと思います。

<江戸急進派編>
忠臣蔵を江戸急進派の筆頭である堀部安兵衛の傍で見守るという,いわば江戸派
側視点から見た忠臣蔵のお話です。
前の√との相違を上手く活かしていて,良かったですね。
特に,主人公の大石内蔵助に対する思いをしっかり消化させた上で,堀部安兵衛
との関係を新たに構築させる流れが印象的でした。
また,堀部安兵衛という人物が,大石内蔵助とは対照的な人生を歩みながらも,
武士の鏡ともいえる程に魅力的に感じられました。
最後の二人の決闘も,手に汗握る展開で良かったです。


<百花魁編>
前の2つの√とは打って変わって,主人公が極力周囲への干渉を避けようとする
お話です。主人公の言動が途中まで厭世的であるにも関わらず,周囲から何故か
評価されるというありがちなシナリオで,しかも,萌え的要素が強いルートなので,
好き嫌いが分かれると思います。
ただ,最後の最後で主人公が現代へ帰還できるので,三度目の正直という感じで感慨
深かったですね。

<仇華・宿怨編>
前の√で現代へ無事帰還できた主人公のもとに,清水一学及び吉良上野介の子孫である
甲佐一魅という女性が現れ,過去改変を目論んでいることを宣言してきます。
そこで,主人公がそれを阻止するために一緒に自らの意思で過去へ再びタイムトラベル
するというお話です。
この√では,それまでの呪いに翻弄される主人公という立ち位置が,自発的に過去へ
タイムトラベルする主人公という立ち位置に変わる点や,シナリオが悲観的である点など
から,盛り上がりに欠ける箸休め的な√であると思いました。

<刃・忠勇義烈編>
前の√の最後で協力関係となった主人公と甲佐一魅が赤穂や吉良の協力関係を成立させ,
真の敵である丹羽赫夜に立ち向かうというお話です。
右衛門七という一見弱々しい人物がどのような経緯で一介の武士として成長していったかを
描いているので,歯痒くも応援したくなる展開でした。ただ,この√では主人公のダメさが
顕著で,今まで散々人を切る覚悟だ何だと言っておいて,主人公こそが一番武士に成り切れて
いなかったというのは正直拍子抜けもいいとこでした。
そして,最後の締めもグダグダで,ファンディスクのためにお茶を濁した終わり方に
したのではと邪推したくなるような終わり方でした。


以上,いろいろと不満も述べましたが,ユーザーが歴史物としての燃えを期待するか,
歴史上の人物のパロディ萌えを期待するかで本作の前半と後半のどちらに面白みを感じるか
に関わると思いますので,前者の方は,後半の展開に過度な期待をしない方がいいでしょう。