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アヲトさんのましろ色シンフォニー -Love is pure white- Remake for FHDの長文感想

ユーザー
アヲト
ゲーム
ましろ色シンフォニー -Love is pure white- Remake for FHD
ブランド
ぱれっと
得点
91
参照数
137

一言コメント

男女恋愛における醍醐味全てをギュッと凝縮したようなシナリオでした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

SNS上でのフォロワーさんに勧められ、秋から冬に変わるこの時期にぴったりだと思いプレイしました。

俗に「キャラゲー」と言われがちな王道な恋愛ストーリーを主軸としたノベルゲームは、

①キャラが可愛らしく魅力的なこと
②主人公に好感が持てること
③お互い惹かれ合って恋に落ちるだけの説得力のあるストーリー展開であること

が大事だと個人的に思ってますが、ましろ色シンフォニーは各要素全て満点に近いと言ってもいいくらいツボを押さえていてクオリティが高く感じました。並のキャラゲーからは本当一線を画しているかと。

共通のシナリオは短めですが、どのヒロインから攻略するか迷っちゃうくらいには皆可愛く魅力的で序盤で既に心掴まれてしまいました。(メイド、妹、ツンデレ、包容力のある歳上という属性全て自分好みというのもあるかと思いますが...)
肝心の主人公である新吾は気遣いの塊でまさに紳士。心の底から好感の持てる主人公でした。そんな好感の持てる主人公だからこそ、お互い惹かれて恋愛に至るまでの日々も、交際が始まってからの日々も、読む手が止まらずに存分に楽しむことができました。総じて男女恋愛における醍醐味全てをギュッと凝縮したようなシナリオで、読み終わった今ちょっと喪失感を覚えてしまうくらいにはハマってしまいましたね...。
以下各シナリオを少し振り返って終わります。


アンジェ√
共通シナリオで毎回ハイテンションに画面外から飛び込んでくるアンジェちゃんが面白可愛すぎて気になったので最初に攻略。シリアス成分はほとんどない代わりに明朗快活なアンジェちゃんの魅力を存分に楽しめる個別シナリオでした。
アンジェちゃんの身を思い遣って積極的に行動する新吾と、そんな新吾を慮って気を緩ませてあげようとするアンジェちゃん...。
お互い気遣いの精神を持った似た者同士だからこそ、補って支え合える関係性が本当に素敵に感じました。「呪い」じゃなく「幸福」だったという転換表現とっても好き。
あと作中二人の関係性が「上も下もない一つの球」と評されてますが、それがラストシーンの「雪だるま」に繋がっているのが上手いなぁと。
Hシーン中にヘッドドレス取れたりしないかなぁとかちょっと思ってしまったのは内緒。

桜乃√
実妹ヒロインのシナリオはいくつか読んできましたが、義妹ヒロインのシナリオはこの作品が初でした。実妹の場合血縁という障壁が重くのしかかり、その障壁を乗り越えて恋人関係になるまでを描いたシナリオが基本かと思いますが、じゃあ義妹なら血縁という障壁がないので簡単に恋人関係になれるかと思えばそんなことは全然なく。寧ろ血縁という何物にも変えられない絶対的に保証された繋がりがないのがシナリオで大きな意味を持っていましたね...。踏み込んで関係性を変えてしまっていいのかという葛藤や、今ある関係性を失って距離が離れてしまうかもしれないという恐怖心等胸に渦巻く心情が丁寧に表現されており、読み応えが凄かったです。
事情を知らない周囲から心無い言葉を浴びせられてしまったりと、テーマがテーマだけに全体として重苦しく心が痛くなる場面が多かったでしたが、だからこそお互い踏み出し想いを伝えられて恋人関係になった時の感動は一入でしたし、そんな二人のために親身に相談に乗ってくれる友人たちの心優しさが際立って良く感じられて胸が温かくなりました。好き嫌い結構分かれそうなシナリオですが個人的には好きです。

愛理√
模範ともいうべき生真面目で気高い表の姿の裏に抱えているのは、どうしようもないくらい不器用で怖がりな側面で...。そんな愛理ちゃんの内面が新吾との交流を経て無自覚に変えられていってしまうのを見るのが楽しいシナリオでした。付き合ってからのデレの破壊力の高さはやはり凄かった。
個人的に一番主人公新吾がカッコいいなぁと感じたのは愛理√なんですよね。変化が嫌いで自分の内側を変えちゃダメだと思い込んでいる彼女と真摯に向き合い寄り添って、張り詰めた精神の弦を解していくのが本当優しくて賞賛したくなるくらい...。
付き合ってから出てきた問題にも本当に対処を間違えなかったなぁという印象。母親に対して素直になれず意地を張ることしかできなかった問題と向き合ってずっと愛理ちゃんが胸に抱えていた本音を引き出したり、クラス署名で矢面に立たされてしまった愛理ちゃんを見てすかさず堂々と宣言したり...。どこまで株を上げ続けるんだこの男は...ってずっと感嘆してました。愛理ちゃんだけでなく新吾の魅力も存分に出ているのもあってか付き合ってからのシナリオは個人的に愛理√が一番好きかも。
最後雪道を二人で一緒に歩くシーンがその文章表現も相まってまさに「ましろ色シンフォニー」という作品を象徴していて読後感めちゃくちゃ良かったですね。

みう先輩√
みう先輩√は引きずるとの情報を受け最後に攻略。みう先輩の動物たちのことを思い遣る慈愛の精神に共感と尊敬のしっぱなしでした。(自分も猫のいる家庭で育ってきているというのもあるかもしれませんが)
個人的に感情の振り幅が一番大きかったのはみう先輩√なんですよね。瓜生兄妹の掛け合いを始めとしたぬこ部での会話パートや、自由奔放すぎる結子さんとの会話パートには大いに笑わせてもらいました。「可愛い男の子が困る姿は、人妻の大好物」...。かと思えば紗凪ちゃんの失恋描写に心抉られて情緒持っていかれそうになったりと笑える場面と切ない場面の両極端っぷりが凄かったです。新吾がみう先輩と付き合ってからも新吾の幸せを願う紗凪ちゃんが本当もう健気すぎて...。
自己犠牲も厭わずに表向きは強い精神を保ち続けていたみう先輩の胸の内が垣間見えるぱんにゃとの別れシーンは「さよなら君の声」の挿入歌も相まってホロっときてしまいましたね...。欲を言えば「黒みう」を妄想だけでなく現実でも見たいと思ってしまったのは内緒。


こんなところですかね。もし読んで下さった方がいるのであれば取り留めのない駄文にお付き合い頂きありがとうございました。この作品を読めて良かったです。