青臭い、本当に青臭い青春の物語。値段に比例して短い作品だがテキスト、グラフィック、演出、BGMが渾然一体となって心地よい雰囲気を醸し出している。
身も蓋も無く言ってしまえばライトノベル一冊をそのまんまゲームにしてしまった印象。
テキストの質は悪くなくさくさくと読み進められる。この手のライトノベルにありがちなわざとらしさも感じられなかった。
ストーリーは竜頭蛇尾といった印象が強い。最後の最後で「実は義父はいい人でした」と言われても説得力に欠ける。お約束でもなんでも最後には二人手を取り合って走り出していった方が物語として美しかったのではないかと思ってしまう。義父との和解はその後でも遅くはなかったのではなかろうか。
ただし、そのラストに行き着くまでのストーリーは十分過ぎるほど面白かったし、何より物語全体の雰囲気が抜群に良かったからラストの箇所も作品の評価を下げるには至っていない。あれはあれでよかったと思えてしまう。
小さくまとまった作品だが、ボリューム不足を感じさせる事は無かった。この作品はこれだけで十分完成しており、これ以上何かを附け加えようとすればバランスを崩してしまうだろう。
分岐も選択肢も無く登場人物も少なくHシーンもお飾り程度。絵附き声附きライトノベルでこの値段を安いと見るか高いと見るか……。