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アミーゴさんのさくらむすびの長文感想

ユーザー
アミーゴ
ゲーム
さくらむすび
ブランド
CUFFS
得点
97
参照数
913

一言コメント

とにかく萌える。ひたすら萌える。絵もテキストもBGMも全てが高いレベルで纏まっている。若干ボリュームに不満があるがロリ好きなら黙って買っておいて問題ないレベル。

長文感想

 同コンビの作品、水月も多くの謎を孕み尚且つその謎を謎のままにしておくというシナリオで賛否両論があったがこのさくらむすびは更にその傾向が強い。
 悪く言えば投げっぱなし、よく言えばプレイヤーの想像力を喚起するシナリオはミスリードと思われる記述が多数存在し、明確な答えがないままに終結してしまう。プレイヤーが十人いれば十の答えが出、答えを出しても尚多くの人はしっくりしないような印象を受けるのではないだろうか。可憐の年齢や世津子とセツの関係の不自然さなどを見る限り確信犯的なものだろうが。

 だが、そういった謎かけ以外にも別の魅力が溢れているのがこの作品の特徴。

 水月で非常に人気の高かったヒロイン琴乃宮雪と同系統の魅力を持った幼馴染秋野紅葉。彼女を筆頭にしたヒロイン達は世の名作萌えゲーヒロイン達を凌駕する魅力に溢れている。
 あざとい。とにかくあざとい。さくらむすびのヒロイン、特に紅葉を見ているととにかくあざとさを感じてしまう。
 幼馴染という古典的属性でありながらその特性をフルに活かしてヒロインを魅力的に描くその手腕は圧巻。序盤から好感度マックスで他のキャラクターを置き去りにしてイチャイチャラブラブ。その様は他のヒロインを選ぶ事を躊躇させてしまうほど。そうでありながら他の作品にありがちな「主人公が度を越えた鈍感orへタレ」で恋愛関係に発展しないわけではないので全く嫌味を感じさせない。
 どういうシチュエーションがユーザーに受けるのか。どんな仕草に男は悶えるのか。それを非常によく理解した上で書かれているシナリオはあざといと思いつつも魅了されてしまう破壊力がある。縁側での髪を切りながら行われた紅葉への告白シーンはもうこれ以上素晴らしい告白シーンは世界中探しても見つからないのではと思ってしまうほどだった。
 萌えとはどういうものなのか。絵に頼らずテキストで萌える事が出来るのか。世の萌えゲーライターはこの作品を大いに見習って欲しいと思う。

 シナリオは全体的に平坦ではあるが所々暗い影のようなものが見え隠れするのが印象的。原画と塗りもあり非常にほのぼのとした雰囲気の作品で内容もその通りほのぼのと進む事がほとんどだが時折、鋭く尖った切っ先が見え隠れする。部落問題や近親相姦などを題材に取り組んでいるとよく言われるがそう言ったものが直接的、間接的に目の前に現れる。

 何も考えずにただただヒロインの魅力を愛でているだけでも十分過ぎるほどだとは思うが、他の人の考察などを読んでみるとまた新鮮な発見が出来て楽しい作品。


 ただ、深い事を考えるよりも紅葉の魅力に萌え尽きるのが正しいエロゲユーザーの姿かもしれない。