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アミーゴさんの姫狩りダンジョンマイスターの長文感想

ユーザー
アミーゴ
ゲーム
姫狩りダンジョンマイスター
ブランド
エウシュリー
得点
80
参照数
2020

一言コメント

「エロゲとしては」の但し書きが附くとはいえ遊べる作品に仕上がっている本作。シナリオに関してはわざとやっているとしか思えない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 この作品に限らないのだが、エウ作品群のプレイする際にどうしても馴染めないのがロウとカオスの数値システム。
 せめて悪と善とかにでもしておけばいいのに、よりにもよってLOW(秩序)とCHAOS(混沌)。それぞれに数字が推移する行動が言葉の意味と全くリンクしていないのだ。優しく振舞うと性格がLOWに傾きますと言われても違和感しか浮かばない。優しいとか優しくないとかそれ自体はLOWともCHAOSとも全く関係ないだろう。未も蓋も無く言ってしまえば中二病的ネーミングセンスのみを強調させるシステムになっている。この辺はどうにかしてもらいたい。エウシュリーに善と悪から切り離された秩序と混沌を描いた物語を作れるとはとても思えないので出来ればネーミングを変える方向で。
 そしてこのシステムによって後半ルートは分岐するわけだが、その分岐がいかにも遅すぎる。もっと早く分岐させて欲しかったのが正直な所。それか、性格によってリリィの成長が変化するとか。高望みであるとは思うが。

 
 全体的に見れば、過去の作品群に比べるゲームパートに関しては順当に進化していると言える。特にありがたかったのが汎用ユニットのレベルが統一されている事。種族毎にレベルが共有されているので成長も効率がいいし、死んでも多少のコストを払えば代わりはいくらでもいるため旧ソ連よろしく損害を無視した物量作戦で敵を押し切る事が出来る。この辺を踏まえる汎用ユニットは兵士というよりは戦車や航空機などの兵器に近い扱いだと言える。

「戦いは数だよ兄貴」

 そんな声が聞こえてきそうだ。事実、私の初回プレイ時カオスルートのラスボスは水精四人のアウトレンジ攻撃だけでなんとかなってしまった。あんなに緊張感と達成感に欠けるラスボス戦も珍しかった気がするが。
 しかしこの事はそうでなくても低いゲームの難易度をさらに著しく下げる原因にもなっている。

 また魔法に関しても、行動済みのユニットを強制帰還出来る、支配陣地にユニットを送り込める、敵見方全てのHPを1に出来る等々反則的なものが多く、全体的に非常に初心者向けのゲームであるといえる。

 ほとんどのマップは一方面からしか敵の侵攻を受けない(そもそも普通にプレイしていればほとんど侵攻を受けることが無い)為戦術性は著しく低い。主力ユニットを前線に出しつつ進軍していけばほとんど問題なくクリア出来てしまう。もう少し頭を使ってプレイできるようにして欲しかった。そう行った意味では最初のEXステージが二方面から敵が攻めてくる上に敵の増援も多くプレイしていて一番楽しめたステージだった。
 一つ気に入らなかったのがレベルアップごとの成長率にランダム要素が強すぎる事。セーブ&ロードを前提にしたような作りは褒められたものでは無いと思う。

 シナリオに関しては「もしかしてわざとつまらないつまらないシナリオを書いて、シミュレーション部分を際立たせようとしているのか?」と疑うレベル。中学生が勢いだけで書いたようなシナリオで伏線も何もあったものではない。エウシュリーにシナリオを期待するような奇特な人間がそう何人もいるとは思えないが、だからと言って適当に作っていい理由にもならないだろう。シルフィーヌルートなど隣国との情勢も絡んできて上手く料理すればいくらでも面白くなりそうだったのだが。又、最初のCGがそうだったようにもっとコミカル調でいくのも面白かったかもしれない。
 エンディングも粗製濫造を地で行く感じ。もっと数を絞って一つ一つをしっかりと書いた方が良かったと思う。そう何度もの周回プレイに耐えられる作りにもなっていないのだから。

 Hシーンに関しては手放しに評価できる。CGの枚数も昨今の作品の中では群を抜いて多く、シーンそのものも重複があるとはいえ十分すぎるほどの数。コンプリートには非常に骨が折れるが。

 良い意味でも悪い意味でもエウシュリーというブランドの特色を裏切らない安定感のある作品。改善すべき点は多々あると思うが同系統の作品が数品質共に極めて低調なこの業界においては大切にされて然るべき作品だと思う。