このノリは、どこか歪んだ人じゃないと楽しめないのでは。バカゲーのふりした良作。茶化しているところに思慮深さを感じる。
(※すいません、実はまだコンプしてないです。悠莉、薔薇乃、琴佳、祀璃の四人クリアしただけで、そのあとがどうなってるのかわからない状況です。攻略できねえ。)
おかしいよ、教頭はかっこいいけど、能力的に人間じゃないし。でも面白い。校則違反(実際はただの言いがかり)だとか言ってローター持ち出したりするとか、こういう病んでる感じがすごい好き。あり得ないだろって思いつつも、まあゲームだしといって笑って認めちゃう。なんだかんだいって結構楽しいんだよね。狙いすぎた中途半端なギャグのやりとりに終始するぐらいなら、ここまで狂ってしまったほうがよっぽど潔い。あと、主人公と教頭の関係がルートによって異なるのも趣が深い。教頭を崇拝していなくなった教頭のあとを継ぐのが基本だけど、教頭に助けられるルートもあれば、教頭と敵対して決着をつけるルートもある。エンディングは中途半端なものが多いけど、これはもしかしたらトゥルーエンドに行きついてないだけか。それと学園モノのはずなのに、こう木刀のシュッと入る奴とか、爆発の瞬間とか、どうしてこうも演出に違和感がないんだ。なんか間違ってるはずなんだがすんなり受け入れてしまっている。バトルの時のBGMもノリノリすぎて笑うしかねえ。「心頭滅却すれば火もまた涼しっ!!」それで済むんかい!
残念なのは、エロの絵がかなり不安定なことと、教頭はじめ男性陣の声が入っていないこと。教頭の声がないなんて、すっげぇもったいない。この演技をこなせる人がいたかどうかにもよるだろうが入れてほしかった。あと、悠莉ルート以外では、体験版で教頭の出番がほとんど終わってるから寂しいよね。主人公と教頭ではオーラが違うね。教頭はやっぱ年季が入ってるよ。名の通り不動って感じ。もう何を言っても、反論されて啓蒙させられちゃう感じですごすぎる。後半はそれが見られない。主人公が教頭代理になるんだけど、カリスマ力が足りない。そして主人公VS反主人公側という構図の陰湿な戦いになっている。それはそれでまあ面白いけど、なんか方向性がズレてるね。最後はエスパーな話になってるし。とはいえただのバカな流れではなく、おかしなノリのうちに興味深いテーマを巧く取り扱ってて、内容がそこそこ充実している。行き着くところまで戦い抜いてるよ。伏線も素直で、適度に先の展開を期待させる感じでくどくもなくちょうどいい。ただとにかく非科学的でなんでもありなので、先読みをしようとするとイライラするかも。先読みする必要はないんですけどね。
それぞれのキャラの話を軽く紹介しておくと、悠莉については、父親が国会議員で、父は娘をブランド力の高い後光学園に通わせたかった。けれど実際には変態学園であったと知ったため、娘を転校させようとしたのだが、うまくできなかったらしい。だから(どう考えても変なんだが)教頭を襲撃し、娘を奪回しようとするのだが、またこれも失敗し、彼女は囚われるかのような形に。そして教頭と主人公は敵対する形になるが、この話はかなり不合理な点が多く、流れがぶつ切りになっている部分もあって、出来が悪いように思える。読み落としがあるのかもしれないが、ちょっと分からない。教頭がなぜ悠莉に固執したのかというのは、最後のほうに書かれているけど、話がぶっ飛んでます。悠莉との言論バトル時の教頭の発言が「お前が言うな!」の連続なのが痛い。
薔薇乃の話は、まあ想定内のもの。ネタばれしてもしょうがない。薔薇乃と主人公の陰湿な小競り合いが見ものか。資金力と権力を盾にして味方をつける薔薇乃と、彼女の失敗から一発逆転に賭ける主人公とのバトルは、二転三転面白い。皮肉混じりの展開も良いと思うが、例によって最後はぶっ飛び展開。なんだかなあ。
琴佳については、彼女の母親が宗教法人のトップだったのだが、体調が芳しくなく、それと同時に派閥争いが勃発してしまったというもの。琴佳もその争いに巻き込まれるのだが、その過程で琴佳は自身の持つ超能力を強くするアイテムを手に入れてしまい暴走してしまう。これも超能力とか出てる時点でアレなもんだが、バトルは面白い。かなりアホらしいが、ノリでカバーしてます。エピローグで「人間誰しも間違いがある」って、いくらなんでも間違えすぎだろ(笑)。
祀璃の話は、冒頭に述べられる彼女の秘密が明かされるもの。祀璃ルートは上の三人が終わってから初めて開放されるルートなので攻略は後になる。はたまたバトルだが、ここは銃弾飛び交う物理的な戦闘で、最後は、なんじゃこりゃ。伏線が張ったりしてるから、そこが面白いところかな。ぶっ飛び度も一番いいから、トリ(?)を占めるという意味では面白い。教頭は敵なの?味方なの?なんかおかしくなってる気もするが。
エロに関しては、良いと思うけど、キャラデザが気に入ってる分評価はかなり甘い。微妙に発育途上な体つきがエロいなーって思ってる時点でやっぱりロリコンなのかなあ。そうは言っても絵によってばらつきがありすぎて、正確なスタイルが把握できなかったりする。それとエロは凌辱だと割り切って捉えないと楽しめないね。基本的には、校則を作ってそれに従わない奴をエロで罰するというもので、他には裏切った同僚女教師をお仕置きしたりするのもある。主人公が参加するのもあれば他の教師が凌辱しているのを見てるというのもある。主人公は指導とか言いながら、自分だって好きで指導してるわけではないんだがお前が言うことを聞かないから心を鬼にしてとかなんとか言いながらエロに走るというなんとも微妙な雰囲気で、流れからするとエロくない。罰則に関しては、授業をさぼったからとパイズリさせたり、テストを盗んだからと処女を奪ったり、フェミニストが見たら確実に卒倒するよ。まあ狂ってるわな。女の人権をことごとく無視してる。シーン数は86と聞いているが、実際にはCG使い回しもあるので10個分ぐらい引いてカウントすべきでしょう。
けど、ストーリーは、なかなか。ちょっとは正面から社会とか教育とか法律とか何のためにあるって考えてみる、か。一昔前にあった「なぜ人を殺してはいけないのですか?」の議論によく似てると思うけど、あの答えは何なんでしょうね。人によって異なる回答があるのだろうけど、多分人を殺してもいいことを認めてしまうと、自分が殺されることも認めなければならないから、人を殺すことを認めるのか、認めないのかという点で、認めないほうがいいと思う人が多く、それで人を殺してはいけないという結論に至っているのだろうな。
そもそも今は、社会全体が奇妙奇天烈な状態であって、ルールなのか、マニュアルなのかあいまいな集団的規則に従うことに違和感を覚えない、鈍感力の高い人間が跳梁跋扈…悪意を込めて書けばそうなる。情けをかけること、感傷的になることは少しも許されない。ボーダレス、ゆとり、多様な個性へと目標を変えていった結果は、ただ正しさを疑う感性が劣化しただけ。どうしてそうなるのかという点はマニュアルに委ね、それを前提にしてどうすればよいのかという利己主義を善とする。競争激化の社会では、正しさを疑うなどという益体もない行動は贅沢でしかない。まあ、いつの時代でも倫理や正義感は幼稚な概念として扱われるけれども、本当に世知辛い世の中だなあ。徹底的に自分が正しいと思ってなければ…いや、正しいとか、正しくないとかじゃないんだよね、議論一つとっても、如何に自分の言い分がもっともかということを言わないといけない。ただ、この作品にもよくあらわれているように、自己正当化よりも、相手の落ち度を徹底的に責め立てるやり取りが多い。実際には、相手の言い分が間違っていることと自分の主張が正しいことは合致するわけではないが(つまり相手の言い分も自分の主張も間違っているということがある)、言論を戦闘として、正しいか正しくないかということを、勝つか負けるかの問題に巧くすり替えて、言論の目的を変えているからまるで相手の言い分が正しいかのように感じてしまう。自己正当化というのは言論闘争においてはほとんど役に立たない。言論闘争は意思疎通とは違い、理解し合うのではなく否定し合う。わかろうとしない人にいくらわかってもらう努力しても当然無意味ですからね。まあ、それでも言うことを聞かせなければならないのであれば、今回の教頭のように暴力に訴えるしかない。言葉であってもいいし、体を使ってもよい。こうして強者によって正義は作られる。自由―どちらかと言えば個人主義という名の無秩序というべきか―というのは独裁を狙う人にとっては非常に都合のよい環境であると、そういう皮肉が表現されているようにも思えますよね。勝ち組というのはどうして独裁者になれるかというのは、マニュアルを作れる側になれるから。価値観を規定できてしまうわけですね。今までは大衆の共通理解ということで今まで築かれていた常識というのは個人主義の尊重という名目で破壊され、強者が与えた新たな価値観を疑うことも知らずに、マニュアルとして受け止める。結局は弱者の組織力というのが情報社会の発達とともに薄れていった技術革命の負の遺産とも取れますがね。そんな中。教頭先生はかっこいいけど、狂ってるのもまた事実で、それでいて現代においては存在していてほしいと思う。狂った社会には狂った教頭が必要なんですね。もちろんこの狂ったような環境というのは必ずしもネガティヴとは限らないんですよね、大貧民ゲームの革命現象に似ていて、社会的な倫理が変わっただけで、その変化に対して恩恵を受けるか損害を被るか、人によってまちまちだということであって。このようなけんか腰のやり取りを駆け引きだと思って楽しめないというのもまた役立たずな人間だということですかね。
教育というのも、社会の変容とともに変えていかなければならないんだろう。道徳的であろうとして遠慮したりするのは、何も考えていないか、事なかれな偽善であると捉えられる。実際に自分のしたいことを表現できないでいる人間が増えているということもあるのかもしれないが、とにかく相手に自分の意見を徹底的に主張しなければだめなのだ。自分の意見が伝わらなければ自分の伝え方が悪くても相手の理解力が足りないことにし、相手の言いたいことが分からなければ、自分の頭が悪くても相手の伝え方のせいにする。他人や社会を気遣う暇があったらてめえの事心配しろや。そういう個人主義に対応できるかどうかが、社会性があるかどうかということに直結する。自己責任(つまりそれは、自己責任にならないように責任転嫁できる能力を養えということ)と主体性を育ませることが肝要になっていくのでしょうかね。で、どうでもいいこと書くけど、ゆとり世代ってなんだかんだ言って頭いいと思うよ。というか生まれついて日本が不況の時期を感じているっていうのは言い得ていて、しっかりしてるよな。自分なんか本当のゆとりだと思うわ。だってほんとにゆとりのある時代に育ったんだからしょうがないじゃないか。
終わってみれば、笑えるのか、考えるべきか。いや、めちゃくちゃだけど、ストーリーは少なくとも退屈しないはず。抜き目的で買うというよりは、ストーリーに期待したほうが良さそう。DL版発売してますよね。ただゴールが一つというタイプの作品ではないので、話のスケールがそれほど大きくなく、割とすぐ終わってしまう。いわゆる大作に比べると物足りなさはあるけど、このぐらいの作品ができてくれれば大満足です。けど、これ実写化できないかなあ。Vシネとかなら面白くなりそう。