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やんごとさんのはなマルッ! 2の長文感想

ユーザー
やんごと
ゲーム
はなマルッ! 2
ブランド
TinkerBell
得点
57
参照数
1945

一言コメント

キャラ重視作品として評価。苺役の丹下桜さんライクな声が素晴らしいです。あおじるさんの描く魅力的なキャラに愛着を持たせた後に貶めるという意欲的な設定ですが愛着を持たせる過程が冗長過ぎて、アイデアにシナリオが付いてこれなかった感じです。また、音速丸の人が活きてなくて勿体無い感じです。<絵>17/25点、<設定>0/15点、<キャラクタ性>30/30点、<笑>10/10点、<システム>▲10/10点、<クリア後>10/10点(ifは本編と見なす)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

<絵>・・・あおじるさんの綺麗な絵が満載です(+2単位)(+1単位)。
      いつものおどおどろしい雰囲気とは異なり明るく可愛らしい絵が中心ですが、
      迫力に欠け抜き目的としては力不足を感じました(▲1単位)。それでもあおじるさんの貧乳猫はさすがです。

<設>・・・本編(前座)で愛着を持たせたキャラを後日談で貶めるという野心的な設定ですが(+1単位)、
      前座の作りが甘くだらだらと長いだけで見所に欠けるためキャラに愛着が持てない話が多かったです。
      エロゲで寝落ちしたのは初めて。使えるシチュとどうでもいいシチュの二極分化が激しいです(▲1単位)。

<キャ>・・・個人的には苺や光のキャラが好みでしたがインパクトに欠けると感じる方も多いと思います(+2単位)。
      青川さん演じる苺の声が可愛らしいです。

<シス>・・・ボイステスタの無い音量調整のため一度OKしては確認するというのがすこぶる面倒(▲1単位)。

<後>・・・いつもの菊桜姉妹編(ちょっと手抜きです)や声優コメンタリの他、結構手ごたえのある神経衰弱など楽しませようという
      努力がちらほら(+1単位)。コンセプトの割に全体が力不足だったので、後日談の後日談が欲しかったです。

(ゲームについて)
 一度持ち上げたキャラを後日、急転直下で貶めるという手法は個人的嗜好抜きにしても面白いです。
 しかし後日談に行き着く過程がダルいため、肝心の愛着感を持てないまま陵辱話に突入してしまうルートが多く、
 狙った成果をあげられてないように感じました。
 今回の変化球は『淫妖蟲』『蠱惑の刻』と続いた同様の流れに飽きを感じさせない様に工夫したのかもしれませんが、
 前作までのファンはエロに迫力不足を感じるケースが多いかと思います。


(内容についての愚痴)
 観劇者にカタルシスを見せ付ける手法の効果として、擬似的なリアリティの生成があるのだと私は考えています。
現実世界では物事がうまく運ぶかもしれないし運ばないかもしれませんが、往々にして観劇において人々は、
うまくいかない方にリアリティを感じ、うまくいく方にご都合主義を覚えます。「事実は小説はよりも奇なり」という言葉が
ありますが、二極論で言ってしまえばフィクションにおいては多幸感よりもカタルシスにこそ、
鑑賞者はリアルさ(擬似リアリティ、または似非リアリティ)を覚えるものと思います。
 田山花袋の『蒲団』で女書生の残り香を噛みしめながらむせび泣くバッドエンドではなく、「すみませんでした、やっぱり
先生の所で勉強したいです!」と戻ってくる「もうちょっとだけ続くんじゃぞ」的な逆転ハッピーエンドや、主人公があっさり
気持ちを入れ替えて立ち直ってしまうノーマルエンドであれば、あの小説は新自然主義文学の覚醒として後世に残る事は
なかったでしょう。現実として充分ありうる転結であるにもかかわらず、です。

 NTRやバッドエンド満載の作品が好みというエロゲユーザはこの種の悲劇的展開(転回)にこそ擬似的なリアリティと、
率いては臨場感を感じる人が多いと、私は勝手に考えています。
 私を含めこうした層は、例えばAVでも出来ればストーリ部分から楽しみたいという実に面倒くさい輩な訳で、
彼らはいくら好みのキャラや陵辱シチュであったとしても、上記の様なカタルシスを伴う擬似リアリティを作り上げる過程が
機能してない場合(つまり説得力が欠如している場合)、臨場感を喪失し、置いてきぼり感や唐突感を抱いてしまいます。
その点で上げて落とすというギャップを狙った本作のコンセプトは面白い試みである反面、前座の作りが甘きに過ぎていたり、
おもしろ展開が冗長なために冷や水になっていたりで、作品が秘めるポテンシャル通りの成果を収めているとは言えない
大変惜しい作品になってしまっているように感じました。
 また不必要なEndや選択肢は前座のボリューム不足を無理に補おうとして失敗したのかな?という不信感にも繋がっています。
もしかして本当はまだまだ前座のボリュームが膨らませる予定だったのを、何らかの事情で無理に切ったのかな?と邪推してしまう
程の中途半端さです。
 それとあるヒロインが「幽玄種」を「れいげんしゅ」と連続で誤読するシーンもあることから、
メーカスタッフ自身もあまり世界観に執着の無いまま制作進行したんじゃないかな?とも思います。

(声について)
 声は青川ナガレさん演じる苺の声がNHK某変身ヒロインを髣髴とさせる好演となっています。
個人的には『超昂閃忍ハルカ』での青葉りんごさん以来のヒットです。音速丸さんは唐突すぎて作品中で浮いちゃってます。
勿体無いなぁ。

(注記)
 ちなみにハッピーエンドの劇作やエロゲが嫌いと言っている訳ではないです。読書では結構雑食で乱読派です。
 また「そうした層」が過程でリアリティを通して臨場感を感じる事を重視すると描きましたが、
 別に触手妊娠や子宮突破にそれを感じていると言っている訳でもないです。あくまで過程までの話ですよ。
 それはそれ、エロはエロ、ということで。

(補足)
 学校や海辺など背景で『淫妖蟲』や『蠱惑の刻』の使いまわしが多く、桔梗の設定やマリアと蟲子の寸劇でも『蠱惑の刻』を
思わせるやりとりがあり、前3作を意識したものになっています。まぁ前作やらないと、と言う程では無いですが。
 男子トイレも『蠱惑の刻』の転用ですがパースがおかしくて酔いそうになります。
あと苺のトイレ堕ちシーンのモザイクが大きすぎです。シロタンのバーでシロタンのグラスをクリックするとミニゲームがあります。