FDというより続編に近い内容。本編プレイした人は詩桜と妃愛だけでもやって欲しいところ。
・アフター
>あすみ
無印本編あすみルートのクリスマスからスタートして、基本的にはVtuberの活動と並行で付き合っていく話になる。
あすみ自体は好きなヒロインだが、物語としてはさほど大きく動く場面は少ないので詩桜や妃愛のアフターと比べると少々見劣りする内容と言えようか。
凸本編終了後に解放されるエピローグで、主人公の卒業に大きなショックを受けつつも次第に立ち直るシーンが一番心に残った。
>華乃
こちらも華乃の仕事と恋人をどう両立させていくかという内容になっている。
無印本編で失敗した高校デビューのリベンジもテーマの1つとなっていて、その一環として大学を目指して多忙な日々を縫って勉強することとなる。
アフター本編は開始早々半同棲生活を営むことになるが、その際の妃愛が犬に話しかけているシーンが可愛そうであまり入れ込めなかったというのが本音。
無印と凸両方の個別ルートで家を離れる展開がこれだけなので(店舗特典のドラマCDではある)、その点でも異質な展開だったかと思う。
一応フォローされているが、無印本編の共通を見ると「主人公がボランティア合宿からまだ日が浅い時期に妃愛を家に置いて2人暮らしするという行動を取らないのではないだろうか?」という懸念も拭い去れなかった。
個人的には主人公と付き合うよりアメリとの関係性の話の方が好みなので、アメリの出番が思いの外少なかったのも多少マイナス。
>詩桜
アフターの中でおそらく目玉のルートその1。
無印本編で主人公が事故るという衝撃的な展開を見せた詩桜ルートだが、その後で3人での共同生活を始めるところからスタートする。
このルートでは無印本編同様に妃愛が大きく絡むが、どこか遠慮がちだった妃愛に対して詩桜がアプローチをかけて姉として認めてもらうところとか、また無印本編妃愛ルートや凸本編妃愛ルートでなあなあだった子役から声優になる際の移籍の話、ミリさんと幼少期の頃の話をするシーンなど見どころが多い。
詩桜寄りの話では文化祭の出し物を通じて「無自覚に残酷」だった自分自身からの変化がテーマになるが、こちらも満足できた。
無印本編では「事故」という矢鱈重苦しくなってしまう要素を入れることによりシリアス要素が全体を食ってしまっているという印象を受けたが、それを凸の内容で上手くフォロー出来ていると感じたし、無印本編で時折片鱗を覗かせた「彼女が出来ても妃愛と一緒に暮らす道もあるのでは?」という疑問をこのルートで消化できたので、個人的には満足度が高いルートであった。
個人的にはあすみルートにこれと近い内容の話を期待していたのだが、可否どころか凸本編で「どう暮らしていくか」についてあまり触れられていなかったのは少々残念とも言える。
まさか本項を見てから凸をプレイする人はいないと思うのだが、上記の通り妃愛関連でこのルートでしか明かされない話がある関係上、このルートを終えてから妃愛ルートをプレイすると理解の一助になると思う。
>妃愛
アフターで目玉のルートその2。
主人公が会長を続投して新生徒会になってから始まるが、最初からゆっこちゃんと生電話したり両親が亡くなった際のドラレコを視聴したりと衝撃度の高い展開が続く。
そのドラレコ内の両親の発言や無印本編から続く兄妹の関係性などで、妃愛が元来持っていた「兄が離れるかもしれない」という恐怖心を徐々に和らげ、2人の間だけに終始した関係から徐々に他のことに目を向ける余裕が生まれる。
その安心感は主人公の誕生日にスーツを贈るシーンの台詞とか、妃愛が他の女の子からの主人公への好意に気がつく場面での対応などでも見て取れる。
えっちシーンで幼少期の話を唐突にするところも兄妹ならではの距離の近さが感じ取れて好み。
いいスパイスになっているのが小説の話だろうか。
詩桜の小説の題材として2人を取り上げたいということでしばらく継続して取材を受けることになるが、この過程で2人の間だけの閉じた関係から脱却し、信頼できる面子である生徒会の人たちに兄妹がお互いをどのくらい大事に思っているのか知ってもらい、この先何があっても2人の味方でいてもらえるように考えるようになる。
このルートだけ新キャラで新生徒会の新人2人が立ち絵と声ありで登場するが、この2人の役割も欠かせない。
無印妃愛ルートの朗読劇を見て生徒会を志望したという2人、元々これまでの生徒会の面子にも勝るとも劣らないキャラ付けがなされているが、詩桜のインタビューを生徒会全員+ミリ先生の面前で公開聴聞を受けたあたりから距離が接近する。
あすみと伊々奈の過去の類似性の話も凸本編に出てくるが、他人に対してのガードが硬い彼女たちが主人公抜きで下校中買い食いしたり、それを見た妃愛が寂しがるシーンは新しい関係性の萌芽を感じさせられる。
この観点だとあすみも凸本編の本人ルートよりこちらの方が魅力的に映った。
上にあげたような要素が合わさって終盤の妃愛の誕生日の話に繋がり、妃愛の自分の友達にする宣言だとか、エピローグの幸福に謙遜しない姿勢などは、一緒に妃愛の成長を見届けているようで感慨深かった。
無印本編での閉じた関係のエンディングも好みだが、凸本編の終わり方は閉じた関係性(兄妹恋愛が明るみになっていないこと、兄妹でえっちする仲であることなど)と開かれた関係性の双方がミックスされてこの上ない満足感があった。
補足でげっちゅ屋の店舗特典ドラマCDについても触れたい。
こちらは本編の5年後の話、主人公が大学を卒業してからエーゲ海の中のどこかの離島を貸し切って結婚式をあげるというもので、凸本編で妃愛が言っていた「2人だけの結婚式」の内容になる。
何か重大なネタがあるという内容ではないが、〆にこれを聴くと読後感が更に良くなると思うのでおすすめしたい。
>アメリ
この子だけ本編と同列の扱いになっているので、実質的な分岐は本編の共通ルートでボランティア合宿に行った後になる。
いきなり2人でお城巡りになるのだが、ここでアメリが孤独と退屈が嫌いで「陽キャ」なのかと思いきや実は苦手な会話を克服するたびに敢えて飛び込んだこととか、彼女の周りにいる陽キャグループの人たちとモラル面での価値観が合わず、一方で人の悪口を言わない性格なのでギャップに苦しんでいることなどが判明する。
無印本編でもおなじみの文化祭の出し物だが、このルートでは紆余曲折の後現行の制服の別パターンを提案するファッションショーとなる。
コスプレが趣味の広夢がガッツリ手伝ってくれたりなど、無印本編と少し変わった面子が共同作業するさまは真新しいく感じた。
無印本編でも仲の良さを見せつけていた華乃との関係性ももちろん補足されている。
お城でのデートで「義理堅くてずけずけものをいう人を友人として求めた」という話が出てくるが正に華乃のことであるし、3人で夏祭りに行くエピソード以降の話は華乃とアメリの間の信頼関係をまざまざと見せつけてくれる。
グループの子より華乃を取るところも無印本編より踏み込んで書かれており、もっと読みたいと思っていた事柄が見られて嬉しい。
惜しむらくはアメリだけアフターストーリーが無いことだが、ソフマップ特典のドラマCDで後日談が少し描かれている。
日常シーン中心だが、本編の延長線上にある内容で中々に楽しませてもらった。
華乃あすみアメリでカラオケに行く描写とか、妃愛とアメリが偶然仕事で出会ったときのやり取りだとか、他の個別ルート以上に生徒会メンバーの女子同士の横のやり取りに力が入っているのも嬉しかった。
凸の追加BGM、どこかのタイミングでCDに収録して欲しいなと思いつつ終わりにしたい。
以上