C93新作同人ゲーム、喫茶店系の恋愛ADV。ヒロイン2人がとても可愛いが、内容は期待よりは下回ったかな・・・。
同人サークルCANVAS+GARDENの看板娘による喫茶店が舞台の恋愛アドベンチャー。
企画以下が宮坂みゆさんということでエロゲーマーとしても馴染みがあると思われる。
あらかじめ断りを入れさせてもらうが、同年発売でテーマも類似性がある商業作品『しゅがてん! -sugarfull tempering-』との比較検討を行うので未プレイでネタバレを踏みたくないよ、という方は注意。
あと、"CANVAS+GARDEN"の同人誌については詳しくないことも付記させていただく。
本作は"逆しゅがてん"とでも呼ぼうか、『しゅがてん』に近いテーマでありながら真逆の設定も多い内容になっている。
具体例を上げるとまず女の子のほうがアルバイトを志願すること、喫茶店に住み込むヒロインがいないこと、喫茶店が繁盛すること、などである。
これ自体は良いとして、問題はその次である。
住み込みがないとバイト先ないし学校で会うことになるが、必然的に重要度が増しているはずのその描写も薄くなってしまっているのだ。
これに関しては主人公とヒロインの関係について仕事場とその他、ようするにオンオフの切替がはっきりしていない点が大きいのかなと思う。
彼らはそれぞれ仕事場(喫茶店)では雇用人と従業員なのでヒロインが敬語を使用することに納得はできるが、同じ学年なのに学校や野外活動でも変わりないことはどうなのだろうか。
これでは主人公とヒロインの間に見えない壁があるかのように感じるし、2人の仲が接近するとも考えづらい。
かと言って2人を元来敬語を話すキャラクターとして見た場合だと、時たま唐突に出るタメ口の台詞が気になってしまう。
結果としてどっち付かずになってしまったように思えた。
次にカルメラ(喫茶店)についてだが、こちらはリニューアルオープンから盛況という結果となる。
ところで『しゅがてん』ではオーナーが倒れ閑古鳥が鳴く喫茶店「フォルクロール」の孫娘「める」に主人公「クロウ君」が助けられ、彼が喫茶店を手伝うも客足は戻らず、店内には彼女らの友人である「ショコラ」や「小町」たちが居着く。
ここで重要なのは『しゅがてん』では常連客ポジションである人間に確かな情報が付与されていることである。勿論サブヒロインである「小町」にも、だ。
対して本作はどうだろう。
テキストに「男性常連客」などといった人間が登場するが、設定はおろか立ち絵の類も一切ないので視覚的に分かりづらい。
フレーバーテキストで常連客であることを訴えても深みがないのだ。
ちなみに『しゅがてん』では主人公である「クロウ君」ともう1人「氷織」がフォルクロールで住み込みで働いている。
ということは必然的に日常生活での繋がりも増え、閑古鳥が鳴く店内においても主人公とヒロインの関係を育みやすい。「雇用人と従業員」という一方通行の主従関係にはならないのだ。
そうした方がいい、という提案では断じて無いが『しゅがてん』の設定はカフェものにおいての最適解の1つだったのかもしれない。
プレイ時には流していた部分だが、流石実績のあるライターだと感心させられた。
個人的な見解を述べさせてもらうと、言葉遣いの件は仕事中だけ敬語、その他はタメ口が適切かと思う。
年齢など特段事情がない限り関係が対等であることが2人の距離感を縮めやすいと考えるからだ。
そしてサブヒロインの「奈々」をシリアス要因としてではなく、最初からカルメラの常連客として配置することで"同じ客が通いつめている"という裏付けを行う。
「奈々」自身についても"嫌がらせに加担したキャラクター"という事実があるとユーザーに受け入れ難いだろう。
ただ、これらに関しては元より同人誌で何かしら設定があるかと思われるのでこの辺りで留めておく。
次に個別であるが、「莉良(以下りら)」は"学校でのちょっとした嫌がらせ"と"主人公との昔の想い出"、「璃貝(以下りしぇ)」は"ライバル店の強引な勧誘に捕まり店舗対抗のスイーツ勝負をする"というものだ。
りらルートは前者カットで良かったと思う。本作のテーマの甘味関係ないし。
後者はかつて公園で1人落ち込んでいる「りら」に豆大福をあげて元気づけたという話。ロリりらちゃんかわいい。
りしぇルートはテーマ的には合致しているものの同人ゆえの尺の都合上だろう、やや急転直下で終わってしまった印象を受けた。
それらが片付くとしばらくして本編が終わり、Hシーンは追加エピソードと後日談という形で収録されている。
追加エピソードは作中の場面の前後にHシーンを追加したもの、後日談も結局のところHシーンに多少足がついた程度で過度な期待はできない。
要するにいちゃらぶシーンがほとんど収録されていないのである。
尺の問題を考慮しても早めにルート分岐の選択肢を置いて欲しかったかな。
例えば『しゅがてん』と同じくしらたまさんが参加している『ずっとすきして たくさんすきして』は正にそれで、商業のフルプライスタイトルにも関わらず最初の30分でルート分岐が決定するという作品である。
それが不可能なら個別ルートのちょっとしたシリアスや共通の一部を削ってもいい。
原画家の前作である『ソラコイ』は作風の制約もあり個別ルートのいちゃらぶ"は"薄かったが、それにすら負けている有様である。
脇道に逸れるが『ソラコイ』は是非ともお勧めしたい作品である。最低限ヒカリとソラのルートをプレイして、その後でバックログでもいいのでシナリオを読み返して欲しい。
あと、こちらも低価格故だと思うが描写が不足している点も目立った。
例えばりらルートで御見舞とはいえ初来訪のはずの彼女の家にすんなりと上がっていること、「シエル」と「ころん」がバイトのヘルプに入るシーンなどだ。
後輩の女の子2人のバイト参戦の理由は"「りら」と「りしぇ」が定期試験でバイトに出れないから"だが、自分たちは間近に控えていても許可が降りるせいで食い違いが生じている。
せめて一言、誰かに「学年によって試験期間が違うんです」と喋らせれば解決なのに。
回想枠やシステム面などについて。
CGは41枚(うち甘味9枚、SD6枚、各ヒロイン11枚ずつ<うちHCG4枚×2人>)、Hシーン4枠(2人×2枠)、音楽18曲(うちボーカル曲2曲)。
エンジンは『ういんどみる』のcs2。
声優陣の面子も含め商業作品とは何ら遜色ない豪華な作りである。
クオリティに問題がない故に商業と比較してしまうのはかえって残酷であるが。
原画は初回特典冊子によると「ころん」のみ宮坂なこさん、他を宮坂みゆさんが担当。この点についても言うことなし。
本作リリースに先立って先月から「Cutie☆Smile」をプレイし始めたこともあり感慨深い。
とシナリオについては物申したい事柄が多いが、それだけ期待値が高かったということでご容赦願いたい。
C93会場限定セットのおまけ本には今回攻略対象にできなかった看板娘や収まらなかった部分が心残りとあるので、可能なら本作のヒロイン2人のいちゃらぶパートも見れたら嬉しいかな。(勿論新規ヒロインでも買うが)
ヒロインは2人とも非常に可愛らしいだけに勿体無い、という気持ちが先立ってしまう作品だった。
とりあえずまずはサントラが欲しいです。
以上