一見実妹といちゃいちゃするだけの抜きゲーだが、実のところは変化球のような内容である。妹2人と戯れる家庭内と風俗ライターのバイトとしての顔、どちらも両立させつつ程々に干渉し合い、それらを恰も実際に起こり得たかのようなのような筆致で描き出す、中々に読み応えのあるシナリオだった。作画が安定しない点、UIが弱い点はマイナス要素だが、それを辛抱できるならば一度触れて欲しい作品だ。
本作だが、ただ2人の肉親(妹だが)と触れ合う自宅、また主人公が志す文筆業において良きライバルとなり仲間でもある友人や編集、その2つのコミュニティにおいてリアリスティックな筆致で確固とした書き分けがなされており、「風俗ライターのネタのために、妹にえっちないたずらをするよう強要される」という如何にもなシチューエーションでも何故か確固たる説得力を持ったまま読み進めることができた。
もちろん2つのコミュニティ間にも糸が通されており、個別ルート内での妹との付き合い方によって文筆業に対する姿勢に変化が出たり、もう一方のルートでは友人が主人公宅のコミュニティを垣間見ることで彼の作品作りに影響が起こるなどする。
2人の妹についても性格が正反対だが、家庭内のシナリオとして興味深いのはみなみだろう。
彼女のルートでは「彼女自身の無垢さ」を全面的に押し出しており、これを主人公(や一応えみ)がどうやって教育するか、というストーリーが軸になる。
もちろん抜きゲーなので性知識が中心となり、えっちで覚えさせるシーンが多くなってしまうが、それでもトリガーとしてバイトで「紹介記事を書いた風俗店」が大きく関わるなど他の作品ではあまり目にしないような展開が待ち受けている。
文筆業では精神的に幼いみなみに風俗ライターの仕事を妨害され、職務の遂行が難しくなる。
一方で友人もスランプに陥り、編集から劇薬として主人公が受け持っていた風俗ライターの仕事を言い渡されるが、本人曰く「経験がないから書きようがない」とこちらもどん詰まり状態。
童貞の風俗ライターだった友人の転機、それはひょんなことで出会ったみなみへの恋だろう。
彼の恋だが、主人公とみなみの性交をまざまざと見せつけられ、それをネタにNTR小説を書いて成功するという劇的な終幕を見せる。
主人公側の変化は「みなみが精神的に成長したことで今までのいきさつを受け入れられるようになった」という面によることが大きいので、こちらの視点では「友人の成長」の方が大きくクローズアップされている。
えみルートはそれと比較するとおとなしい内容になる。
上で書いた編集にいたずらをそそのかされるルートがこちらで、それを発端として倒錯的な関係にのめり込んで行く。
このルートの核は文筆業の方で、えみと関係を持ってしまったことを発端としてスランプに陥った主人公が、今度は競い合っていた友人にそのポジションを奪われてしまう。
妹との実体験を題材にしたティーン向けの"フィクション"小説の原稿をダメ出しされ、その隙に乗じて主人公の風俗ライターとしての手法を完コピした友人が躍進してしまうのだ。
その後主人公は掲載媒体を変えることで生き残り、友人はそのままライターとしての仕事をこなす。
元々お互いが志していた仕事を"とりかえっこ"した状態で物語は幕を閉じる。諸行無常である。
本作には2本のルート、4つのエンディングが存在するが、これらを妹視点から見つめた場合はいずれもハーレムエンドになる。
一方の妹と結ばれ、実兄との子どもを身籠ってもなお、もう1人の妹との将来的な"関係"を示唆されるのだ。
一見"ノンフィクション"っぽい本作では「実妹の妊娠や「ハーレム」という超常現象もさほど違和感を感じないから不思議だ。
私が一瞬でもこう思ってしまったこと自体、ライターの噓屋氏には「してやったり」なのだろうか。
と、内容的にはミドルプライスの抜きゲーとは思えぬほど語る要素があった本作だが、残念ながらネガティブな面も見られた。
それは「不安定な作画」と「微妙なUI」である。
個人的には「抜きゲーたるもの作画が一番重要ある」という考えだが、本作はHCGで構図が崩れているものが非常に多い。
UIもUIで、セーブ画面でサムネイルが表示されない、個別ボイスの設定が不可などかゆいところに手が届かない。
その2点さえどうにかなれば、という思いが残ってしまったことが残念だった。
以上