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めいせいさんのイノセントガールの長文感想

ユーザー
めいせい
ゲーム
イノセントガール
ブランド
FrontWing
得点
70
参照数
1837

一言コメント

前作(ピュアガール)の尖った部分を平らに均して丸くしたような作品。間口は広くなったものの峻烈さは失われたか

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作「ピュアガール」に続く、商業でのななかまいさん原画二本目となる作品です。
批評空間では続編ということになっているようですが、基本的に全く別の作品ですのでこちらから始めても何ら支障はありません。前作のキャラクターがモブや台詞の中で登場する、ということすらありませんのでご安心ください。
以下、随所で前作との比較があります為注意してください。

今作は元詩人の主人公が事情により芸術科しかない学園に転校し、そこに在籍する子たちと一緒に寮で暮らすことになるという出だしから始まります。
個別ルートも含めて概ね日常パートが多く、そこをメインに据えていることが感じられました。
それ自体は良いものの、前作のようなノリを期待していますと案外普通で拍子抜けするかもしれません。
というのも、まずサブキャラが前作より弱いんですよね。
前作はれもんと圭という、メインヒロインを食うどころか作品の方向性を揺るぎないものにしていた強烈なキャラクターが二人もいました。
ですが今作の莉乃といちごは2,3ランクは落ちるかなという出来で、とてもじゃないですが代替できているとは思えません。
莉乃はただの自由奔放な寮母さん、娘であるこのかのルート内では重要な立ち位置となりますがそれ以外はそこまで存在感は無かったです。
いちごのほうは前作のれもんの焼き直しといった印象が強いですね。
れもんでは取れていた、キャラクターの性格のバランスが崩れ(私見ですが)少し鼻につく方向へ傾いてしまいました。
その反面、メインヒロインは今作のほうが全般的には可愛くなったかなと思います。この辺りは完全に好みの範疇ですので気になるようでしたら体験版をプレイすることをおすすめいたします。


で、日常パートの進行ですが概ね体験版と同じです。それがゲーム全般に渡り続きます。
テキストはそこまで面白い、というわけでも無いですし先ほど記したようにぶっ飛んだキャラクターがいないのも相まって、ちょっとだれやすく感じました。
また、終始にわたり同じような反応を繰り返すキャラクターが少なくないのもしつこさを覚えましたね。
前作もそうですが立ち絵ありで出てくるキャラクターが6人しかいませんし、今作はそこを増やしても良かったのかも。
それか、いちごを前作のれもんを意識せずに新しい方向で個性を持ったキャラクターとして描写する手もあるかもしれません。
どちらにせよ、良くも悪くも前作からあまり進歩していないように感じられ少し残念でした。


おまけモードはハーレムルートといちごルート、CG鑑賞、BGM鑑賞、Hシーン鑑賞、シークレットの各項目となります。

ハーレムルートは今作で一番はじけているシナリオかも。短いですが楽しめました。
いちごルートは前作のれもんルートと同じく夢オチに近いようなもの。
シークレットでは、攻略を終わらせたヒロインのシステムボイスがダウンロード出来ます。
この三項目は前作でも存在しましたね。

音楽は鑑賞モードに登録される枠が26、うちボーカル曲3曲とインストゥメンタル3曲を除きBGMは20曲になります。
ボーカル曲は前作より1曲増え、雛子だけED曲が専用のものとなります。
OP曲はKOTOKO、ED曲がAyumi.、雛子EDがはなの歌唱です。
特にはなさんの楽曲「First Song」は引退を発表したszakさんこと松本文紀さんの作品ということで。これが遺作となるのかはわかりませんが、これまでお疲れ様でした。
個人的にはボーカル曲は前作の2曲のほうが好みでした。BGMはこちらのほうがいいかな。

CGは各ヒロイン22枚ずつ、その他で14枚の登録で合計102枚です。
各ヒロイン枠はうちSD3枚、HSG10枚です。全員同じで均整が取れています。
その他欄は、いちごやハーレムルート以外に共通ルートのSD絵や複数人のCGが登録されている模様です。
かがりとの初対面時のイベントなど、ヒロイン枠に入れても良いものもその他扱いされています。
シーン鑑賞は各ヒロイン7、その他も7枠で合計35。
その他ではOPとED、雛子EDムービー3本といちご、ハーレム3本が再生可能です。
Hシーンはこの手の作品では多めかつ長めで結構頑張っていると思います。
共通から全ヒロインとあるだけでなく、個別に入ってからイベントごとに連続して挿入されることが多いです。
ただ前作よりマニアックなプレイは減ったでしょうか。あとフェラが全体的に多かったと感じました。



システムはういんどみるのものを使用。
一見それなりに細かいように見えてバックログからジャンプ不可、BGVのOFF不可、ボイスカットOFF不可など粗はあるかも。
後、演出過多気味なのもあってか演出や場面切り替えでたまに重くなります。
いずれにせよプレイしにくい、というほどではないかな。


では以下個別ルートについて簡潔に述べます。

>このか
壊れてしまった父親の忘れ形見である変わった形の粘土の人形、このかはそれを再び作れれば出て行って父親が帰ってくるかもしれないと思い長年再現しようとしていた。
母親である莉乃に才能が無いからやめておけと諭されていたものの、それは自分への不安の裏返しでもありました。
同じ芸術家だったものの作品が認められずに出て行った夫から、(自分を含めて)気持ちを切り離して欲しかったのでしょうか。
結局その忘れ形見を莉乃の協力の元巨大なオブジェとして復元し、海外でオークションにかけたところ警備員だった父親の目に止まりました。
父親曰く長年作品を作っていなかった莉乃を奮起させるために離れたんだとか。
そんなこんなで仲直りすることが出来ました。

>雛子
特待生の発掘も兼ねている成果発表会で歌う話がメイン。
本番では自分の思うどおりに歌うことが出来なかったものの、いちごの計らいにより年末にもう一度チャンスを得ることになります。
いちご曰くこの学園に入学する際も同じようなことがあったとか。
最終的には主人公と一緒に自作で歌を作り、それを歌うことになります。

>鼎
足早に身体の関係から入れたものの、何も恋人らしいことができていなかった鼎。
ドリーム荘のみんなにそのことを突っ込まれあたふたしてしまいます。
みんなに根性を叩き直される中、主人公が行った特別授業で価値観の違いを受け入れます。

>かがり
かがりはその昔、両親に褒められてから絵を描くようになったが、才能を伸ばすようにと両親に久里咲学園に入れられ、またいちご経由で仕事を請け負うようになりました。
それを両親に遠ざけられたと感じたかがりは、結ばれた後絵のことばかり話題にする主人公に対してもどこか不満を抱き、技術面での絵のリテイクという事態になってしまいます。
その点を主人公に諭され、同じころに持ち上がった学校の作品展示会への学科での出展についてのクラスメートと一緒に絵を共同制作をすることになります。
しかし賊に絵を壊され、一人で抱え込んで復元しようとしたものの上手く行かず、最終的にはみんなで直すことになりました。


こんなところでしょうか。
ヒロイン別の個別シナリオはどれもそれなりの出来でしょうか、逆に言えばこれといって秀でたものはなかったように感じました。
個人的には鼎ルートが物珍しい展開だったかなと感じましたね。ヒロインとしては好みから外れていましたが。
このかなど最後に詰め込んだ感触があるルートもありますし、そういう観点では個別エンディング曲がある雛子が優遇されていたのかもしれません。
いずれにせよ本作のテーマである「芸術」に関しては、各個別ルートでもメインかそれに近い題材として扱われております。
ちょっと扱い軽いかな、というかかがりや莉乃の凄さが分かりにくい印象も持ちましたが。
せっかくなら主人公が詩人として歩むルートもちゃんと作っても良かったかな。
ハーレムルートがそれですがおまけ扱いなので短いですからね。なお、一応個別ルートで復帰するという選択をしたものも存在します。
また、付き合う過程が全てのルートにおいて蔑ろ気味だったと感じました。
あと主人公が目つき悪いという設定はあまり必要なかったですね。結局プロローグでちょろっと使われただけに終わっています。

今回はこんなところで。お疲れ様でした。