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まつさんの黒曜鏡の魔獣の長文感想

ユーザー
まつ
ゲーム
黒曜鏡の魔獣
ブランド
雨傘日傘事務所
得点
50
参照数
465

一言コメント

蓋を開けてみれば、ガッチガチの燃えゲーでした。戦闘シーン1つ取ってみても演出の仕方が本当に凝っている。これを言っても詮無いのだけど、ボイス無しというのが悔やまれる程。ただ、ギャグシーンの過剰な暴力表現には目も当てられず・・・大幅減点要素です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今作をやっていて、ギャグ表現としての暴力描写に色々思うところがあったので、愚痴をつらつら。

この作品、ネタとして、あくまでコメディの一環として暴力描写が添えられていますが、はっきり言って私は理不尽な暴力描写が不愉快です。
例えそれがギャグの範疇であるという免罪符を持っていたとしてもです。
別に気にならない人は気にならないままで良いと思うんで、これは同意を求めようとかそんなのじゃなくて、あくまで私個人としての話。


メインっぽい3人の女性キャラについてですが、
リィ・ルゥは、寝起きに目潰しを見舞ってくる危険人物で(ざくめり)、「お茶目さんだね☆」とでも言って笑うところなんでしょうけど、正直笑えないです。不憫に過ぎるでしょう。
アーベルは、原型を留めないまでに顔面フルボッコにしてくださるし、これも笑えばいいんですかね、いや、私には恨み辛みしか募りません。
クリスも一見害がないようですが、エルをディールに近づけまいと暴力的手段を持って排除しに掛かってくるので同類。

こうして一度でも悪感情を抱いてしまうと、なかなかそれを払拭するのは難しいのです。
折角の見せ場も、これらの悪感情はしこりのようについて回るため、そこまで没入することは敵いませんでした。


ギャグにかこつけた暴力表現は昔からありますが、本作に限らず、今やそれは形骸化している様に見えてなりません。
暴力ギャグのルーツは定かではないけども、かつて一世を風靡したラブコメ漫画『うる星やつら』では既に登場してましたね。
あれです、浮気やドスケベを働いたりする主人公に対して、ラムちゃんが制裁を加えるというお決まりの流れ。
で、私がこれについて腹を立てたかというと別段そうではないのです。
というのも、主人公の側も不貞を働いちゃってるわけで、まぁお仕置きもご愛嬌として受け止めてしまえるような妥当性があったからなんですよ。
この「妥当性」というのはとても大事で、理不尽かそうでないかの分水嶺となるわけです。

翻って、昨今巷に溢れていますが、ツンデレと称して暴力を振るってくるヒロイン達は、時代の流れとかそういうのもあるんでしょうが、“暴力”要素のみ一人歩きしてしまって、中身の伴わない理不尽さ、アンバランスさが目立つような気がします。
先人に倣うのは別段それ自体悪いことじゃありませんが、テンプレって怖いもので、様式美とでも言うように、一種の“お約束”として大衆に認知されているがゆえに厄介なのです。
表現手法として確立されてしまっている。
全くもって害悪としか言いようが無い。

そして重要なのがもう一点、男の側に落ち度も何も無いのに(例えあったとしても、たいてい事故とか不可抗力ってパターンが多いですよね)、女からの暴力を甘んじて受け入れている風潮。
女には手を挙げない、ええ、たいそうご立派ですが、だからと言って野放図にしておくのは堪忍袋の緒も切れるというもの。
フェミニズムでも気取ってるんでしょうか、それもとびっきり履き違えたまま。
殴り返せ、反撃しろ。


なんというか、我ながらネタにマジレスしているみたいでみっともないですね……お目汚し失礼しました。
私が狭量ってだけか。