純愛と調教、両方のポイントを手堅く押さえた催眠ゲーの良作。同人ゲームとして短く荒削りながらも、プレイヤーが期待するものはしっかり描けている。
【シナリオ】
姉の影響で女性不信になった「里中 恭吾」は、卒業した部の先輩が残した催眠術に関するノートを発見する。
その記録にあった被験者の一人が担任の「樋之上 花梨」だと推察した恭吾は、折を見て彼女に催眠術をかけてみる事に。
驚くほど簡単に催眠状態に陥った花梨を前に、恭吾が取った行動は… というオーソドックス?な催眠モノ。
ヒロインは花梨1人、シナリオは大まかに純愛ルートと催眠調教ルートの2つで、どちらも主人公以外の男は絡まない独占系。
(ただし花梨は非処女なので注意)
最初に催眠術をかけた時に花梨を襲うか否かで、催眠調教ルートか純愛ルートに別れます。
なお純愛ルートでも両思いになる前から暗示によって花梨から性行為をさせるよう促すため、凌辱色は割と濃い目です。
催眠に関しては設定・テキストともによく考えて書かれています。
催眠の合図としてキーワードが設定されていたり、催眠のかけ方がプログラミングのように精密なのも本格的な感じで◎。
相手が本当に嫌がる事を強制したり、催眠をかける側が取り乱していたりすると失敗するなど催眠術も決して万能ではなく、
かえって性経験ほぼ皆無、性感帯未開発、性行為への抵抗大なヒロインを徐々に開発していく描写に説得力を与えています。
欲を言えばテキストが全て主人公視点なので、ヒロイン視点の描写もあればより面白くなったかもしれません。
シナリオ自体は短いながらも両ルートともにポイントをしっかり押さえてきている手堅さを感じます。
純愛ルートは催眠術のことを打ち明けずに安易にハッピーエンドに着地しなかった点、
催眠調教ルートは花梨の人生や人格を完全には破壊せずに性奴隷堕ちさせる点が落とし所として良かったと思います。
なお催眠調教エンドを見るとタイトル画面が変わるので必見(その後に純愛ルートを見ると元に戻ります)。
こういう演出からも両ルートは表裏一体でどちらが上とかはないのでしょう。
(催眠調教エンドの方に【TRUE END】と表示されるのは皮肉めいていますが)
ちなみにバッドエンドも地味に多いです。明らかに不正解の選択肢はその後すぐ終わるのでいいのですが、
両エンド到達のフラグ立てが一番最初の選択肢にあって、最後まで行かないと分からないのが不親切に思えました。
【キャラクター】
●樋之上 花梨
明るく親しみやすい性格で生徒からも人気の美人教師にして、本作の被害者。
問題児である主人公の事も気にかけてくれ、催眠術で本音を聞いても誰の悪口も言わない聖人。
一色ヒカルさんの演技が通常時、催眠時と使い分けられており非常に素晴らしいです。
(というかモブ女性の声が全て一色ヒカルさんなのも地味にすごい)
性的な話題になると顔を真っ赤にして慌てふためくので処女だと思いきや、そうではなかった事に
主人公と同様ショックを受けました。まぁ一度きりの事故のようなものだったのであまり気にならないし、
むしろ学生時代の制服を着た初体験やり直し催眠コスプレが見れたので不満どころか満足度は高いです。
やはり教師ヒロインには学生時代の制服プレイは必須ですからね。
主人公への感情も、最初~性的関係を持った後も恋愛感情はない、というのも面白いです。
視点切り替えでヒロイン視点を使わずに本音を聞き出せるのが催眠モノの利点の一つですね。
ただ、そこから恋愛感情に切り替わった部分が性急すぎて描写不足だったのは残念でした。
●里中 恭吾
性格の捻くれた女性不信な男子高校生。
小難しい文化系の部活に入っているだけあって地頭はいいのか、催眠術の使い方も非常に洗練されています。
ヒロインに対するスタンスに一貫性がないように見えるのが少し気になりました。
選択肢次第で純愛サイドにも凌辱サイドにも転がるので多少のブレは仕方ないとはいえ、
ヒロインをどうしたいのか、ヒロインとどうなりたいのかが分かりづらいというか…。
対人関係にも難アリな性格で最初は花梨のことも煙たがっていたのが、いつの間にか恋愛感情やら独占欲が生まれているし、
結局のところ女性不信と言いつつも年頃の男子として性的な好奇心を抑えきれなかった、という事でしょうか。
催眠調教ルートはそれで構わないのですが、純愛ルートもあるのでもう少し掘り下げがあっても良かったと思います。
【エロ】
シーン回想は27枠ありますが、CGは差分抜きで15枚(うちエロ有は12枚)なので水増し感が強いです。
シチュエーションが微妙に違っても絵がほぼ変わらないので視覚的な興奮度は高くありません。
しかしテキストと一色ヒカルさんの演技が良いので実用性は割と高め(特に催眠調教ルートの終盤)。
催眠モノですが相手が主人公一人なのもあってか、アブノーマルなプレイはそんなにありません。
羞恥プレイ(とヒロインに思い込ませる催眠)と食ザーくらいでしょうか。
アナルや道具を使ったプレイとか、露出プレイくらいはやっても良かったように思います。
【総評】
純愛と調教、両方のポイントを手堅く押さえた催眠ゲーの良作。
同人ゲームとして短く荒削りながらも、プレイヤーが期待するものはしっかり描けています。
リメイクを制作予定のようですが、続報がしばらく音沙汰なしなのが不安です。
現在DL版もなくパッケージ版しか入手手段がないようなので、是非とも頑張っていただきたいものです。