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ひのきさんの空の青と白と/瞬きの夏の長文感想

ユーザー
ひのき
ゲーム
空の青と白と/瞬きの夏
ブランド
Barista Lab
得点
60
参照数
255

一言コメント

小説執筆を通してヒロインとひと夏の青春を謳歌する純愛系ロープラゲー。小説執筆というテーマも、ヒロインとのイチャラブ描写ももう一歩踏み込んでほしかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【シナリオ】

自作小説の執筆に行き詰まり、部員1名となった「創説部」の廃部を申請しようとしていた「倉田 貴一郎」の前に、
彼の小説のファンと名乗る同級生「桧ノ原 つぼみ」が入部届を手に現れる。
自身の恋愛経験の無さから続きが書けないという貴一郎に、つぼみは取材のための恋人役を申し出て…というお話。

小説を意識した章仕立ての構成で、選択肢なしの一本道。各章は短くもテンポよくまとまっており、サクサク読み進められます。
前半は二人の出会いから小説執筆の取材を通して二人が互いに惹かれ合い恋人になるまでを、
後半は恋人になってから初体験を経て二人がひたすらイチャラブする様子を楽しめます。

付き合うまでの前半部分は丁寧に描かれていますが、後半は付き合いだして間もなく初体験を済ませ、
その後はエロゲーとしてのノルマと言わんばかりに1章ごとにエッチして、気付けばエピローグ…というやや駆け足な印象。
この手のゲームは恋人同士になってからのイチャラブが醍醐味なので、もう少し後半部分のボリュームがほしかったところです。

小説執筆の要素も今ひとつ活かしきれていないのが惜しい点です。
前半部分では取材(デート)や、小説の完成=告白のタイミングとするなど重要な要素として機能していましたが、
後半は次回作や過去作の話がちょろっと出たり、前半で完成した小説の文化祭での出版が軽く話題になる程度。
執筆を中断した処女作「虹の修理人」を完結させる展開を期待するも、それもなし。
(主人公がその作者だとつぼみが知るドラマチックな展開かと思ったら、その辺もあっさり流されます)

せっかく前半で取材や執筆を重点的に描写していたのですから、後半も小説をテーマにした展開でもう一捻り見たかったです。
文化祭での出版や処女作の件など、もう一イベント起こせるだけのお膳立ては出来ていただけに残念でした。
この辺りがロープラゲーの限界なのかもしれませんが…。


【ヒロイン】

●桧ノ原 つぼみ

 小説とオムライスをこよなく愛する、ちょっと天然な清楚系ヒロイン。
 知り合う前から主人公の小説のファンだったり、付き合う前から合鍵渡して通い妻状態だったりと、まさに男の理想
 (というかここまで来るともはや妄想レベル)を体現したかのような存在です。

 最初から恋人役を買って出る展開は、付き合うまでの手探り感を楽しむ派としては当初どうかと思いましたが、
 この天然具合ではこれが最善手だったようで、おかげで主人公への好意を自覚してからのテンパり具合が非常に可愛らしくなっています。
 オムライス寿司も最初はネタかと思いました。
 普段オナニーするのか、何をおかずにするのかをすんなり答えてくれたのはこの娘が初めてかもしれません。


【エロ】

シーン回想は6つ。描写はあっさり短めで、実用性はあまり高くありません。
エロゲーにしては珍しく(?)主人公が腟内射精を避けようと外出しに努めます。
花火大会での野外シーンと、エピローグの水着でのシーンがなかったのは残念。


【総評】

小説執筆を通してヒロインとひと夏の青春を謳歌する純愛系ロープラゲー。
タイトル通り瞬く間に終わってしまい、プレイ後は夏の雰囲気が淡い思い出とともに残る…そんなゲームです。
小説執筆というテーマも、ヒロインとのイチャラブ描写も もう一歩踏み込んでいれば良作になりえただけに惜しいです。