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ぱぴぷ~ぺんさんのひまわりのチャペルできみとの長文感想

ユーザー
ぱぴぷ~ぺん
ゲーム
ひまわりのチャペルできみと
ブランド
Marron
得点
92
参照数
218

一言コメント

人を選ぶけれど…軽くて明るくてものすごく優しい世界

長文感想

<はじめに>
「秋桜の空に」の大大ファンなので当然のように発売直後にプレーしました。
(レビューを付けている他のゲームも大体そうですが)感想を書くにあたっては、もう一度通してプレーした上で、当時書いたメモなどが残っていればそれも踏まえるようにしています。

<総合>
システム・シナリオその他どこを取っても突っ込みどころ満載ですが…それを補って余りある竹井ワールド。
膨大なギャグと登場人物全員のキャラの良さを生かした優しい雰囲気に溢れています。

「鬱好き」「つじつま重視」「ご都合主義はダメ」「システム重視」という人には不向きで絶対にお勧めできません。
(このゲームの特徴を端的に表してますね…)

私のように鬱ゲーはダメ、軽くて、たくさん笑えて、ハッピーエンドが約束されていて、ルートクリアするたびにほっこりしたいという人には最高のゲームです。

<笑い>
数Mの膨大なテキストの9割以上はストーリーと直接関係ないギャグ。典型的なバカゲーでしょう。
ニコ動のコメントだったかなぁ…どこかで見た「痒いところにギャグが飛ぶ」というコメントがすごく気に入っています。
いつでもどこでもいろいろな方向からいろいろなギャグが容赦なく飛んできます。
どんな鉄仮面をもってしても全てを防ぎ、かわし切ることは不可能でしょう。

「笑い」の質は(植田まさしの4コマ漫画ではないけれど)全て笑える人は異常、というか1~2割位笑える人が普通ではないでしょうか。
しかしツボにハマると強烈で思わず声を上げて笑ってしまうこともしばしば。
また、ツボにハマるネタも人によって変わってくるでしょう。
いろいろな方がこのゲームのレビューで気に入ったネタなどを書かれていますが、私はその多くを笑えません笑

現時点(2021年)で言えば、40代以上の人が笑えるネタが多いかも知れませんが、20~30代の人が強く反応できるネタもあります。
ただし、パロディの元ネタがわからなくても不快感はほとんどなく、軽く読み流せて疎外感を受けないのが竹井テキストの特徴でしょう。

ムキになって全てに反応しようとすると、どうしても理解できないものがあって「こりゃギャグが合わないワ」となります。
それで腹が立ったり不愉快な気持ちになる人はプレーしない方が良いです。
しかし、ギャグって、そういうものではないような気が。
限られた時間でできるだけ多くの笑いを取らねばならない漫才とは違うものではないでしょうか。
1割笑えれば、1~2時間プレーしたら数十回笑えます。そういうゲームです。

もちろんパロディとか無関係で単純に笑える部分も多いです。
期末試験のパートは何度も何度も何度も何度も汗、リロードして全部読みました。
パートナーごとにテキストが変わるママチャリレースも全てスキップなしで読まずにいられませんでした。
選択肢が出るたびにセーブ~ロードして全てのテキストを読んでいました。
同じように感じる人は少なくないと思います。

<シナリオ>
設定からしてぶっ飛んでいます。
わかりやすい言葉を使えば、「サイボーグ」が大きなテーマの1つ。
(サイボーグという言葉自体、石ノ森章太郎を知っている世代なら小学生でも知っていましたが、現在はどれくらい知られているのでしょうか…)

世紀末に大変不幸な事変が起こり、世界の全人口が1年ほどの間に1割程度にまで減る。
諸悪の根源は最終的には数名の英雄を中心とした集団によって倒されて平穏な日々が戻る。
この諸悪の根源も、英雄の一部も、そして主人公や一部のヒロインもサイボーグ。
(そしてこの諸悪の根源が実は主人公の…)
人口が激減したので結婚可能な下限年齢が大きく引き下げられる。
そしてその事変から5~6年後の世界…という設定。
主人公は普通に○校生だがストーリーが始まった時点でバツ2…

この時点でもうダメ、という人もいるかも知れません…
しかしそういった暗い背景をほとんど感じさせない全く普通のおバカな学園生活が繰り広げられ、大半の人は、特に問題なくこの世界に入っていくことができるはず。

個別ルートですが、一言で言えば、全て最後は「ご都合主義」で落とします。
そこを許せるかどうかで評価が大きく分かれます。
どのルートもバカップルぶりを見せつけることに終始し、最後になって必ずトラブルが発生(というか露見)して、でもあっけないくらいあっさり解決してハッピーエンドになります。
細かいことを気にしなければ、どのシナリオもポカポカした気持ちになれます。

シナリオ重視の人、鬱ゲー好きな人なら最低レベルの評価になるでしょう。
絶望的な状況を、苦労して、何かを犠牲にして、傷つき、人間的に成長しながら(ご都合主義と言われないように)解決していく…それが鬱ゲーの魅力でしょう。
説得力がある作品ほど、すぐれた鬱ゲーなのでしょう。
しかしこの話はもう、この部分が一瞬で終わるので。
でも個人的にはこれくらいがちょうどよかったです。
(まだ幼い?頃は鬱ゲーにもじっくり挑戦しましたが、少し落ち着いてからは避けるようになりました。WhiteAlbum2とかまだ積んであるし爆死)
ご都合主義の世界に入る以前でもウルっとなる場面は結構ありますし、ちょうどいい感じの軽い感動でした。
そういう意味で本当に人を選ぶゲームだと思います。
KEY信者の方や、「秋桜の空へ」は「ONE」のパクリと思いこんでいる人は絶対にプレーをオススメしません。

ご都合主義が目立つ部分もありますが、基本的には各ルートに伏線とその回収が分散して散りばめられていて、全ルートコンプすると謎のかなりの部分が解決します。
謎は残りますが、少しづつ解決されていく過程が面白く、また謎を1つ解決するごとにヒロインの誰か、または主人公への理解が深まります。
各ヒロイン、各ルートが複雑に絡み合わせて作品を作り上げるのはかなり大変な作業でしょう。
シナリオ全体としての構成の素晴らしさを感じずにいられません。

<キャラ>
登場するヒロインですが、すぐ上にも書いたように、お互いの関係がうまく絡み合っていて、他のヒロインのルートの中でそのヒロインの評価が上がることも多いことが1つの特徴です。
全てよいキャラなのでどのシナリオも安心して進められます。

多分に漏れず「秋桜の空に」のファンとしてこのゲームをプレーしましたが、各キャラの「萌え度」については、残念ながら「秋桜の空に」の方が上カナ。
でもまあそれは「秋桜の空に」が異常だったと言うべきでしょう。
(晴ぴーやすずねぇの強烈さは衝撃でした。ツンデレとか姉萌えとかいう言葉が存在する以前の、というかそういったその後ブームになる属性の走りのようなキャラでしたし)

それでもゲーム終了後は喪失感を覚えるくらい魅力的なキャラが揃っています。
また、人気キャラが分散しそうなこともこのゲームの不思議な魅力の1つで、誰がプレーしても絶対に1人はツボにハマるヒロインがいると思います。
レビューサイトなどを見ても人気はかなり分散しているようです。
個人的には姫やひなりん、もなむーが好きでしたが、他のキャラもあまり差はなかったです。
どのキャラでも個別ルートに入ると、かなり強烈、というか歴代最強レベルのバカップルになります。笑えます。
(笑ったというか驚いたのは、このゲームの発売日のなんと5日後!に、朝日新聞に「アイスにかける醤油が人気 カラメル風味に」という記事が載ったことですね。何という偶然でしょうか…参照:https://news22.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1188375908/)

また、このゲームを盛り上げているのはサブキャラの素晴らしさ。
姫シナリオで姫が唯菜(母親)と手をつなぎ、主人公が父親をおぶって歩くCG、ヒロインと唯菜(母親)と3人で入浴するCG、ナノ子がペタ子に後ろからのしかかられるCGなどをゲーム内容を知らない人に見せて、彼ら彼女らの関係がわかるか…と尋ねたら誰も想像すらできないでしょう。
そんな、ちょっと普通は考えられないような設定のもとに作られた多くのサブキャラがゲームの中で暴れまわり、盛り上げます。
唯菜ママやショーちゃんの人気が高いようですが、いっちゃん、猫タマ、ルーン先生、そしてミファソラコンビと、進行に欠かせない素晴らしいキャラが揃っています。
(ショーちゃんと猫タマの単独CGがSD1枚ずつというのは悲しすぎる涙)

<CG>
パケ絵だけを見るとかなり引きますが汗、ゲーム中のCGとは印象がかなり違います。正直言って、パケ絵で大損している作品です。
イベントCGも立ち絵も問題ないですし、非常に綺麗なイベントCGも多いです。SDもよいです。
サブキャラのほとんどは立ち絵だけでの登場になりますが、それでも十分に惹かれます。

<Hシーン>
「秋桜の空に」と同様にマニアックな状況設定も多いです。最初のHは普通であることが多いですが、中には寮の3人部屋で他に(寝たふりしている)同室2人がいる中での初夜とか。制作スタッフの誰かの趣味が反映されていると思います。着衣H(スク水、ウェディングドレス)、獣化、放尿などはまだ普通の方、極めつけはロリ+腹ボテ+剃毛…汗。趣味が合う人には合うでしょう。そうでない人にとっては、やや薄めという評価になりそうです。

<音楽>
OPは癖になります。システム画面でOPのインストバージョンが流れますが、気づくとメロディーに合わせて歌詞を口ずさんでいます。
EDはほっこりした気分に浸らせてくれる優しい佳曲です。
その他のBGMもよくできています。ママチャリレースのBGMがよいですね…F1放送風味カナ。
もう1つ、「雫」の「瑠璃子」を思わせるようなフレーズが入った曲もあってこれも個人的なお気に入り。

<システム他>
前世紀からこの世界にいる人間としてはまぁ……許せる部分も多いかな、というレベルです。最近この世界に入った人には相当苦痛かと想像します。
また、パッチは必須です。(現在は入手が簡単ではないかも知れません…)
CVはありません。ビジュアルラノベです。
テキストの多さゆえ、現実的に難しいというのが大きな理由かと思いますが、大半の会話が異常なテンションの下で行われるので、CVがあるとかえってうるさいカナ。(でもミファソラ実況だけはCV欲しかったカナ)

<攻略>
攻略は難しいと思います。
最初数回は個別シナリオに入れず、何も起こらないバッドエンドでした。
自力攻略は諦めて、「愚者の館」さんの作られたフラグデータを見て攻略しました。
ちょっと頑張れば全ルートクリアは出来るでしょうが、攻略サイトの助けを得ずにCGコンプするのは至難の業でしょう。(虫取りコンプCGを除いても)
このフラグデータを見ると、どれがフラグに無関係の選択肢かわかるので、無関係なものはセーブして全選択肢をあたってから次に進み、次の選択肢で同じセーブデータに上書きして…を繰り返していました。全ての選択肢ごとに別のセーブデータに保存していたら、何百個セーブできても足りません汗
攻略サイトの助けを受けてもゲームを楽しむ上で全く問題はないと思います。