よくできた2次元イメクラ。
よく考えてるなと感心した。
シナリオを二分化するのに併せて、ヒロインすら二分化する。
片方が貧弱体型ならもう一方は大人の女性に。片方が自由奔放を望むなら、
片方は過剰なまでに責任感の強い娘に。片方が堅いお嬢様ならもう一方は
親しみやすい親友タイプの娘を配置と。そのうえで、双方のシナリオの流れ
を基本的に同じものにすることで、結果としてそれぞれが互いの個性を
引き立たせると共に、両極端故に必ずどちらかはユーザーの嗜好に適う
可能性が極めて高くなる。うまくいけば両方気に入ってもらえる。
また主人公だって、スタンスが変わる。彼女らに対し、頼りがいのある兄
を演じたい(包容力のある自分に酔いたい)だけなのか、対等に隣を歩く
パートナーとなりたい(欲望的要素が勝る)のか。故に片方は都合が良い
ほどにシナリオ上に痛みを感じる部分が乏しく、片方は悲しいほどに無力な
序盤と激的な逆転勝ちがセットになるのだろう。
一見、権力にトラウマを持つ正義感溢れる男性が、状況に流されるか弱い娘達
を救い結ばれるという構図は、ひっくり返せば、彼が彼女達に尽くされ癒される
構造を呈する。愛とか恋とかに浸っていれば、感動に満足できるだろうし、
ふと周囲を見渡せば、イメクラ凰華女学院は今日も色とりどりのお嬢様を揃えつつ、
愛とか恋に飢えたお客様をお待ちしておりますよ、言われていることに気付くのだ。
エピローグなぞはその最たる象徴で、苦笑を抑えられなかった。
PULLTOPというメーカーは毎回のように、前作で得られなかった何かに対し、
次回作で前進を得る、良い意味で賢しいメーカーだ。「ゆのはな」はシナリオこそ
優れていたが、牧歌的過ぎてインパクトに乏しく、そもそもプレイするという
段階に導くまでが課題となった。そこで「PRINCESS WALTZ」ではその設定方面の
インパクトで、発売前から爆発的な知名度を得ることに成功するも、結果中身が
伴わないが故に急速に話題性を失った。だから、今回はユーザーの印象に残る
ことを命題としたらしい。企画に沿うために機械的に構成されたシナリオの話題性
こそ薄れたが、未だにヒロイン人気は強烈に根付いたままであり、イメクラとして
の本懐は100%以上の成功を得たと思える。
得点基準は、作品自体はいたって予定調和の塊であり、シナリオは添え物に過ぎない
ことから、私的良作基準のボーダー60点に、忠実に命題を追求したことを評価
(当たり前を演じることは至難の技術であり、決してライターを卑下する意図は無い)
して+15点。「ゆのはな」以降企画面において2度の前進を得ていることから、
期待点として5点。インターフェースの軽さと使い勝手を評価して更に5点。
作品の評価とは別の意味でも、次回作が楽しみなメーカーは貴重な存在と思う。
回を追う毎にプレッシャーは増えるだろうから、砂上の楼閣に等しいものだけど、
今後の奮闘を期待している。