変に小難しいことを並べ立てるエロゲというよりは、社会性の強いテーマにエロゲの皮を被せただけという方が本作の実態に近い気がする。故に、それに気付けないか、気付いても興味をもてないと、とてもではないが魅力的には映らない。
ヴァンセンヌ体制への依存が強過ぎて、卒業後実社会での自立に失敗した卒業生らを
OG職員として雇用するという救済処置を施していたら、人件費を賄い切れなくなった。
対処方法は2つあって、一つはより大きな財源の確保であり、もう一つが体制依存から
の脱却となる。これは校長とメインヒロインの主張そのものであり、本作はとどのつまり
本国の年金制度や生活保護費といった諸問題と同じ根っこから造られている。
ヒロインが4人いるのは、そのテーマに関して、保守と改革の側面を、理想主義或いは
現実主義との掛けあわせで構成された4つの概念からアプローチしているからであって、
白百合会の会友だからといって、メンバー全員が改革主義者というわけでもなく、
メインヒロインの理瀬自体が理想主義者であるから、オブラートに包んだような発言
しかしない。これらの組み合わせが難解さを増す要件にもなるし、読解を好む方には
パズルのような趣向をもたらすのかもしれない。
結果として、興味をもたせるために被せたエロゲの皮の方が中途半端すぎて、
今ひとつユーザーの満足感に到達していないんじゃないかというのが個人的結論。
主人公のもてもてっぷりを充実させるために、幼馴染の千帆を早期に合流させて
しまったため、2人の主人公への好意のベクトルを同様な趣旨のイベントにしか
活用できなくなる。折角紅薔薇会という対抗組織があるのに、三角関係をうまく
昇華できていない。ニュートラルな勢力として摩理香や民恵をヒロインに昇格
させれば、より多くのアプローチが導けたはず。シナリオ抜きにしても、各ルート
の中盤以降に大体1人は非攻略ヒロインの関わりが大きくなるから、回想の分岐
作りも加えれば、エロ成分の充実も難しくなかったと思うのだが…。
キャスティングの甘さが目立つかなと。
不満点も多いが、「ギフト」以降テンプレ萌えゲばかり作り続けてきた同ブランドにも、
改革の兆しが見え始めてきたのは、結構なことではないかと思う。