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のびのびーたさんのD.C.III P.P. ~ダ・カーポIII プラチナパートナー~の長文感想

ユーザー
のびのびーた
ゲーム
D.C.III P.P. ~ダ・カーポIII プラチナパートナー~
ブランド
CIRCUS
得点
79
参照数
812

一言コメント

FDにやや近い感じの次回作です。キャラゲーとも言えます

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作のDC3では、実は魔法学校にいた時の記憶が現代に甦った処で終わります。

なので、今作ではヒロインの殆どが主人公と付き合っていた時の記憶を持っているので、
高感度がMAXの状態からスタートする・・のかと思っていたのですが、それは違いました。

主人公が「前世の自分と今の自分は全く異なる人物なので、別の人物の記憶として認識することによって気持ちの整理を行った」という発言をしていたので、
あくまで過去は過去、現代は現代というスタンスを取っているように感じられました。

かといって、完全に過去と現代を切り離している訳ではなく、「ヒロイン達との関係にはきっちりとけじめをつけたい」という発言もしています。

確かに、ヒロインと恋人関係にあった過去の記憶を共有しているからといって、現代でも恋人関係になる訳ではありません。それは四股を意味しますので。

一方リッカさんは「過去の私と今の私は同一人物ではないけど魂は繋がってるので、過去を完全に切り離してしまうのは、寂しく思う」という発言をしています。

前世の記憶を思い出したことにより、大きく登場人物の関係に変化はありませんでしたが、お互いに意識するレベルの影響は及ぼしているようです。

今作では全てのヒロインの高感度は最初から非常に高い状態ではありますが、恋人関係のステップとしては1からまた築き上げることになっています。

現代編では主人公達の関係が異なっている部分が多いので、登場人物は同じですが新たな物語として認識することになりそうだな、と序盤をプレイしながら感じました。

やはりダ・カーポシリーズなので繰り返しの物語を意識させられました。



・立夏ルート

立夏と主人公との記憶に差異が度々見られたのは、立夏がループを抜け出した後の記憶を新聞部で唯一保持していたからでした。

前作では語られていませんでしたが、ループを抜け出した後に立夏と主人公は婚約し、初音島に移り住んでいました。

立夏は過去の世界でTOP5に入る程の大魔法使いであり、魔法とは想いの力です。

主人公に対する想いが非常に強かったため、立夏のみ最初から過去の記憶を有しており、桜に託していないループ後の記憶をも持っていたのです。

強力な魔法使いである主人公達が転生したことにより、
桜の「人々に願いを叶える」魔法が暴走し「見境いなく想ったことを現実に変える」魔法に変化し初音島の人々に災いをもたらしていました。

それを防ぐために立夏は、魔法の源である「想いの力」を消去し、前世の記憶と魔法に関する知識を全て失いました。

唐突に訪れた立夏の記憶喪失は、「想いの力」を消去するために、過去の記憶を頼りに部員を集めて創設した新聞部に関する記憶を失ったために起きた出来事だったのです。

主人公は立夏の苦悩に気がつくことができず、正義の魔法使いの助力を得て辿り着いた日記を見て、そこでようやく真相を掴むことができました。

立夏は自己犠牲によって、初音島の災いを解消しようとしましたが、これでは立夏が救われません。

立夏を救うには記憶を取り戻し、且つ桜の暴走を食い止める以外に方法はありません。

桜の暴走は正義の魔法使いがなんとかすることができるかもしれないと言っていたので、この問題はさしたる影響はないように思われます。

問題はどうやって記憶喪失を解消させ、主人公との記憶を取り戻させるかになります。

ここが主人公の一番の魅せどころであり、立夏ルートの最大の山場となるでしょう。

魔法使いにとって魔法の源である「想いの力」は、いかな魔法といえども消去することはできず鍵を掛けることぐらいしかできません。

後はその鍵をどうやって外すか・・。そこに全てがかかっていました。

結果、主人公が記憶を失った立夏さんに対して告白した時のセリフがキーとなって、記憶を取り戻すことに成功。

「100年前から立夏さんのことが好きでした!!」が鍵というのには色んな意味で驚きました。

思い返してみると「想いの力」を消去する前の立夏さんはこうなることを見越して、いや期待していたのかもしれませんね。

立夏ルートでは前半の日常パートと後半の複線の回収に多くの時間が消費され、
恋人同士になった後の描写がED前の少しの部分でしか描かれていなかったので、そこが少し物足りなかったですね。

立夏ルートはこの作品の正史ルートともいえるので、一番物語の骨組みがしっかりとしていたように感じられました。


・姫乃ルート

やたら怪談のシーンに気合い入っててビビった(笑)

全体で10分以上もボリュームがあったし、定番ですが最後のオチには少しドッキリとさせられました。

その後の体が入れ替わるシーンも斬新でしたね。

まさか主人公の立ち絵を延々と見せつけられることになるとは思いもしませんでしたよ。

体が入れ替わるシチュエーションは抜きゲーや同人誌なら見ることはあるのですが、こういった純愛系の普通のエロゲーでは珍しいですね。

まぁ正直、姫乃が入っている主人公が照れている姿とかを見るのはむず痒い気持ちにさせられましたが・・・┌(┌^o^)┐

そして主人公と姫乃と体が元に戻ったと思いきや、ジェットコースター的スピードでエンド。

主人公と姫乃が付き合い始めてからの描写をもうちょっと描いて欲しかったですね。

なんかもう、姫乃が入った主人公を攻略した印象しか残ってない(汗)

自分も数々のエロゲーをやっていますが、気づいたらヒロインではなく主人公を攻略していた・・みたいな経験は初めてですよ^^;


・さらルート

立夏&姫乃のルートとは異なり、ルートに入ってすぐに主人公とさらが付き合うことになります。

そのおかげでイチャラブ日常シーンを楽しむことができました。

物語の締めになるシーンも重いシリアスシーンが入ることもなく、
さらがソフトボールで精一杯頑張り、独り立ちできていることを病気のお父さんに見てもらって安心させるという、心温まる話に仕上がっていました。

小動物的可愛さと危うさを持っているさらと、彼女を引っ張ってくれる主人公の関係は前世と変わらず、前作を思い出させてくれました。

前世ではサラの家族に認められるために主人公が魔法競技を行い、今世では両親の前でさらがソフトボールを行っています。

結果としてはさらはアウトになってしまいましたが、お互いがお互いを思いやり、両親に認めてもらおうと奮闘する姿には心が打たれました。

話の感想としてはそんな感じですが、さらルートはキャラ萌え成分によって成り立っている部分が多いと思ってます(笑)

複線も何も、魔法のまの字も出てきませんからね。

完全にキャラ萌えゲーの学園物ですよ。(悪い意味ではないです)

さらを可愛く思えるかどうかが、さらルートを楽しめるか否かの全てだと思いますね。


・シャルルルート

さらルートと同じく、個別に入ってからすぐに付き合います。

そしてこのルートには全くシリアスシーンが無いのが特徴的です。

物語の山場も、クリスマスプレゼントとして施設の子供達に人形劇を見せよう!といった具合で、全般に渡ってほのぼのとした感じでした。

前作ではシャルルルートはかなり泣けるシナリオに出来上がっていたので、不足していた日常シーンを今作では堪能できました。

また人形劇の内容も、前作のストーリーとは対照的に感じられました。

前作では自立したシャルルを見てエトがこの世から去っていきましたが、人形劇ではエトが元気になりシャルルと2人で幸せに暮らせています。

今作はハッピーエンドを意識したストーリーに仕上がっていました。


・葵ルート

立夏ルートと話が被っていますが、こちらもヒロインが記憶喪失の危機にさらされます。

前作では呪いに掛かり、今作では魔法に関する知識が戻ったために病にうなされる。

常に元気一杯な性格の葵ちゃんですが、かなり悲劇的な人生を歩んでいます。

病を治すには記憶喪失の魔法をかけるしか無く、主人公が別の手段を探すのですが結局ダメ。

そして葵の記憶が消去されたと思ったら、実は記憶抹消の魔法は効いていなかったというオチでした。

記憶が消えなかったので病は残っているが、今後も葵ちゃんと一緒にいれることが何よりも嬉しい・・という流れで締めくくられます。

正直、BAD ENDでは!?という気がしなくもないです。

続編への布石かもしれませんが、かなり続きが気になる終わり方ですね。



以上が、前作と同じである5人のヒロインについてプレイをしながらのレビューとなります。

それにしても美琴や巴さんを攻略したいですねー。

美琴は今回公式新聞部に入部したのでグッと出番が増えたのですが、ルートまでは用意されていなかったので残念です。

さて、今作は前作の続き物となっていますが、全体的に前作と比べシリアス成分が少なくなっています。

前作ではかなりストーリーに力を入れている印象を受けましたが、対照的にストーリー重視というよりはキャラ重視のような印象を受けました。

かといってシリアス成分やストーリーが全く無いといった訳ではないので、FDにやや近い感じの次回作といった形に収まっています。

まあまあ楽しめましたがキャラゲーには飽きがどうしても来てしまうので、続き物が出たとしても購入するのは後一回ですかね。