一言で表すならば純愛ゲーです。主人のため身を粉にして衣装制作に没頭する朝日の一途な姿には感動しました。固い信頼で結ばれた主従は美しく映え、心が洗われました。本当にこの作品をプレイして良かったと思います
Navel設立10周年記念作品とだけあって、相当な意気込みとクオリティの高さを感じられる作品に仕上がっていました。
特筆すべきはルナルートで、主従関係の絆がこれでもかという程の濃密さで丁寧に描かれています。
自分はルナルートが全ルートの中で最も作り込まれているルートになっているだろうと、予め予想ができていたので、最後にプレイしました。
ルナが人を信じられなくなった理由や、桜小路家との確執など気になる部分が共通ルートで仄めかされていましたが、気になる心を抑えつつルナルートを最後に回した分感動がひとしお深まった気がします。
人によって楽しみ方は多々あるとは思いますが、推奨攻略順としてルナルートは是非とも最後に回した方が良いと思います。本当に素晴らしいので。
他のお嬢様達には申し訳ありませんが、やはり一番お似合いなのはルナ様ですね。
主人公の才能が如何なく発揮され、物語として最も完成されているのはルナルートが一番だと感じられました。
喜怒哀楽の全てが詰まってます。
大蔵衣遠にフィリコレの出展衣装が盗作されて実質的な受賞辞退を迫られ、それを防ごうと立ちふさがったお屋敷のお嬢様達が次々とねじ伏せられるシーンは見ていて本当に辛かった。
そんな中、朝日の主人としてルナだけが一人で立ち向かい、衣遠が次々と心を折りに来る言葉をぶつけても、気丈に撥ね退けようとする姿を見て感動しました。
最初は、一度も逆らったことが無かった長兄に逆らっていた朝日ですが、最も精神的ショックを受ける状況を作り出してから性別をバラされ、床に屈してしまいます。
出展衣装を盗作されフィリコレの受賞が絶望的になるどころか、朝日の性別詐称により退学を迫られ、朝日班のモチベーションはドン底まで低下し、「もう仕方が無いのではないか」という雰囲気にすらなりかけました。
少なくとも自分にはそう感じられましたし、自分がその場にいたとしても何1つ反論すらできなかったでしょう。
しかしルナは臆することなく、朝日の手を取り「性別がどうした」と言い放ち、心の折れ掛けた朝日を奮い立たせようとしました。
このシーンで本当の主従の絆というものが感じられました。
今まで仕えていた従者の性別が偽りであったと急に知らされれば、絶対に動揺くらいはしますし、普通ならば嫌悪感を抱くものです。まぁそれが衣遠の狙いでもあるのですが。
それを全く意に介さず、即答で反論し従者に叱咤激励を行うことができたのは、本当に2人の間では信頼関係が結ばれているという証明以外の他はありません。
衣遠は想像した結果とはならず、今度は絡め手を使って朝日を揺さぶってきます。
今度はルナの退学と服飾業界からの追放を宣告され、これは朝日の最も恐れている結末でした。
朝日は頭を床に擦りつけ自分の退学と引き換えに長兄に許しを乞います。
ここでルナは全身全霊で朝日を諭しました。
しかし、朝日の決断は固くルナの言葉は朝日の決心を変えることはできなかったのです。
朝日には自分の言葉が届かないのだと分かった時の悲痛なルナの表情が今でも忘れられません。
朝日にはルナの言葉が届かず、もうこれ以上学園長室にいても意味がないことを悟ったユルシュールにルナが引きずられながら退室していったのを見た時は、絶望的な気持ちになりました。
ですがすぐに朝日はルナの言葉が届かなかったのではなく、本質ではちゃんと理解していたが手段がルナとは違っていただけと判明します。
朝日はフィリコレでの優勝・ルナが退学にならない・自分自身が退学にならない方法を考えていたのです。
しかしそれは修羅の道。
フィリコレまでの一ヶ月間は寝食の時間すらも極限まで削って衣装制作に没頭したとしても、間に会うのは難しいのが実情。
甘えを一切捨てるために、ルナにこのことは告げず一人孤独に衣装制作に取り組みました。
全てはルナにまた仕えるため。朝日の一途な思いに涙が出ました。
ラストは三日間眠ることなく制作に没頭し、憔悴し切った朝日の意識は闇に埋没します。
そして再び目を開けて朝日の前には、それはもう優しい微笑みを浮かべたルナ様のお姿が。もうここで完全に涙が止まりません。
こんな素晴らしいものを魅せられて感動しない方が難しいですよ。
後はもう失敗することは絶対にないショーが開幕し無事に最優秀賞を獲得したルナ様の晴れ姿を見届けて、自分の胸はいっぱいいっぱいになりました。
本当に素晴らしかったと思います。
あまりもの素晴らしさに夢にまで出てきました。
ここまで心が動かされたのは久しぶりです。それほどの影響力がこの作品にはあります。
私には全く関わり合いも知識もない服飾業界と主従関係をモチーフにした作品でしたが、全てが新鮮で色彩豊かに目に映りました。
王雀孫というシナリオライターの腕は噂には聞いていましたが、彼の作品に手を出したのはこれが初です。
非常に文章力があり、今後は彼の携わる作品は用チェックしたいと思います。
鈴平ひろと西又葵も好きなイラストレイターの一人なので、最高のメンバーで作り上げることができた作品になったと思います。
是非とも、このメンバーでまた何か作って欲しいものですね。