処女厨、NTRに耐性がない人には一部拷問のようなシーンがあります。私には本当に辛かった。しかし、それでもこの作品にはやり遂げる価値があると思えました。辛く、悲しく、愛しく、それでいて綺麗な物語です
この作品のヒロインは2人のみで、正反対の性格をしています。
美雪は日常がニセモノで、舞台が本物だと思っている。
これは日常生活で猫を被って生活しているのを表しており、日常生活でも舞台と同じ様に過ごしているのだ。
一方、アオイは日常がゲームであると思っている。
ゲームと日常を混同しているだけだと回りから思われている。
日常がゲームの世界ならば、彼女にとってゲームとはなんなのか。どちらも彼女にとって日常な気がしました。
アオイがアップデートといい、世界を改変した後にそれに主人公が気づいていない描写がある。
世界を改変すると強制的に忘れさせられるのか、そもそも改変したことを認識することができないのかもしれない。
その後アオイの手助けによって美雪と付き合うことに成功するのだが、主人公はアオイのことを忘れてしまう。
しかし、何かが欠けている・・と思考の渦に意識を飛ばしたりするので、完全に忘れてはいないようだ。
それはアオイが私はサブヒロインなので、ここで消える・・と言っていたことと合致していた。
ここで初めて美雪とアオイは共存できないのではないか?と疑問を感じ、それが永遠のテーマでもあることに後半になってようやく気付くのだ。
衝撃的だったのが、アオイはカミサマが生み出した攻略ヒロインで男を攻略してCGを集めて回っていたと告白するシーン。
しかもアオイは心一のことを好きなんだけど、他の男とヤらないと存在を持続できないので仕方なく~という鬼畜極まりない設定。
ビッチで自分の快楽のために~という話ならば気持ち良くビッチ認定できるのだが、多少仕方ない理由をつけてあるのが心苦しい。
初期の日常シーンで雄太郎がアオイが男をしょっちゅう入れ替えているという噂があるという話をしていて、凄く嫌な予感がしたが見事に的中したのだ。
勘弁して下さい。処女厨&アンチNTRの自分にはあまりにもキツかった。
アオイが実際に龍二郎と部屋でヤッていようがいまいがどうでもよく、コンビニでキスしている時点でNG。立派なNTRです。
アオイが他の男とヤらないと存在を持続できないので、心一が龍二郎を呼んでアオイと一発ヤらせるシーンはかなりキツかった。
拷問かよw
と思ったんだけど、それにはちゃんとした理由がありわざとプレイヤーを胸糞悪くさせていたのだった。
しかし、まだ物語も序盤でそんな理由があるなんてことには気づかない。
ここのひたすらストレスを受けながら、話を進めて行く作業は辛かった・・。
特に普段から純愛系ばっかやってる人がこれをくらうと、かなりの精神的ダメージを受けます。
自分としては凌辱ならばまだマシでNTRは完全にヒロイン取られてるし、ヒロインが受動態じゃなくて能動態になってるので余計キツかった。
しかもBADエンドならば心の平静を取られるにしろ、物語を進めるには回避不可なシーンにNTRがあるので死ぬかと思った。
アオイと主人公が撲殺された後に、美雪に主人公が監禁される所から話が始まり、???となります。
さっき死んだんじゃ・・?と思いましたが、後に説明があるだろうと思い考察は避けひとまず進めました。
そして物語というパズルに次々とピースが当てはめられていき、話の本筋が見えてきました。
美雪がカミサマと交信する方法を知ったのは、アオイが猫を拾った時。
アオイがスマフォを忘れ、美雪がそこでカミサマを知ったのだ。
つまりそれまでの話は全てが真実であり現実である。
その後の話は、美雪が改変した世界の話であり真実ではない可能性がある。
アオイがハルと寝ていたという話も、ハルが龍二郎であり男であるという話も嘘なのではないかと推測できる。
しかし、アオイが男をとっかけとっかえしているという噂は美雪がカミサマを知る前から出ているのも事実。。。
この噂を信じるか信じないかで、ストーリー自体違って見えてくるかもしれない。
噂を信じてしまえば、アオイは美雪が言うとおりビッチだろう。とてもヒロインの器ではない。
噂を信じなければ、アオイはヒロインと呼べるかもしれない。
しかし美雪が現実世界と虚構を織り交ぜてしまった世界で話が進むので、何が真実で何が嘘なのかが全く分からない。
それによりアオイというヒロインそのものの人物像すらよく見えてこないのだ。この子はビッチなのか、ヒロインなのか。
それは心一が唯一手に入れることができる、美雪からの情報を頼りに情報の真否を確かめていかなければならなかった。
私は噂を信じたくはないが、信じざる負えないものとして捉えている。
アオイは他の男に股を開いているのは事実なのだが、心一のことが一番好きなのだろうと思う。
我々プレイヤーは主人公という虚像に則ってヒロインを攻略していくのだが、そのヒロインである美雪が主人公が虚像だと理解しており自分に直接ゲーム内から語りかけてくる演出にはビックリした。
ちょいちょいプレイヤー側に語りかけてきた理由が最初よく分からなかったのだが、そういうことだったのか。
美雪は心一を通してプレイヤーを好きになっていた・・?
凄い演出だな。とにかく表現の端から端までセンスが良い。
割とジャンルとしてはキワモノをやっているはずなのに、凄い安定感・安心感を感じてプレイできる。
これはニトロブランドの成せる技なのかもしれない。
主人公が閉じ込められているのはアオイの存在が否定されている世界なので、美雪側からの情報を多数知ることができます。
美雪が心一以外の男と結ばれることがないのは、アオイが心一の前で世界をアップデートし美雪が寝取られないように世界を改変したためでした。
なので自らは精一杯つくし、かつ心一を独占しようとしたと言います。
美雪の話は心一に好きになってもらうため、歪曲がふんだんに盛り込まれていますがまがりなりとも納得できる点があるのも事実です。
物語中盤で大分ストーリーやこの作品の楽しみ方が見えてきたが、まだまだ謎が多い。
なんというかこの感覚はひぐらしをプレイした時に似ている。
次の章に移って、なんでこいつら生き返ってるんだ?と、まずそこから分からないあの感じに。
しかし話が進む内に、物語の様々な出来事に意味があるということが分かってくるのだ。
謎を解くキーが出てきても、今度はそのキーを解読するためのキーを見つけなければならない。
長編ミステリーだとよくある展開です。
自分の読解力がないだけかもしれないけど、美雪に部屋に閉じ込められて何回もループしている内にやっと話の本筋が見えてきて、物語を楽しむためのスタート地点に立てた気がしました。
そして物語の終焉を迎える選択肢が現れます。
アオイを呼び出して美雪も交えた2人の前で、主人公はどちらのヒロインを選ぶのかを問われます。
現実世界に戻ったら二度とセーブもロードもできません。
(ややこしいのですが、我々プレイヤーにはできます。現実世界ではプレイヤーはカミサマの立ち位置なので)
主人公(プレイヤー)は、運命の選択を決めなくてはならない。
それは過酷な選択でした。
もしも本当に現実でこんなことになったら自分は選ぶことなんてできませんよ・・。
もちろんここでも、アオイか美雪のどっちかを選ぶ際にはかなりの長考を要しました。
その時、現実の世界へと改変したならば二度とこちら側(ゲーム世界)へ戻ることはできない。どちらかを選んだ後に、ロードしてもう1人を選ぶのはヒロインを裏切る行為だとプレイヤーに告げられます。
ヒロインを選んだ後、現実世界に行くのですがもうそこにはロードできるデータはなかったのです。
私はこれが制作者の意思だと感じたので、アオイを選ぶためにもう一度プレイすることはしませんでした。。。
結論として、私は美雪を選びました。
美雪と共にした時間が長すぎて、アオイの本当の姿が見えなかったからです。
ハルという存在も結局分かりませんでしたが、考察すればきっと答えが出てくるでしょう。
ですが、私は疲れました。
今までNTRゲーなんてやったことないし、処女厨でもある私にとってバイオ氏のシナリオはあまりにも辛く、悲しく、そして綺麗でした。
それ故に美雪の側にいたいと、私は思ったのです。
それが理由でした。
今となって考えると、エロゲーがUSBに!?箱が小さい!?と話題になった今作品ですが、それすらも伏線として用意されていた気がします。
箱を開けた時に中身に謎の番号を記した紙があり、それは世界を改変する番号を入力する時に使用しました。
四角い箱に黒い厚紙が大量に敷き詰められていたのは、前述の紙を隠すためだったのです。
そのため箱は小さくしなくてはならず、DVDではなくUSBにデータを入れたのではないかと推測すらできます。
それぐらいこの作品は検討に検討を重ねて、丁寧に作られているのです。
今作品は通常のエロゲーのようにシナリオを進めて、CGの差分を回収することを目的としていない。
現に、最後の選択肢を選んだ後のCGは回想には出てきていません。
完全に従来のエロゲーの形と一線を画しているのです。
趣が違うのです。
みなさんはエロゲーと聞けばアドベンチャーゲームを想像するだろう。
主人公がヒロインを攻略していき、時には回想を埋めるために分岐をやりなおしたりするだろう。
はたまた、セーブやロード画面が当たり前のように存在すると思っていることだろう。
それは果たして正しいのか?お前は誰だ?とこの作品は、真っ向から疑問をぶつけているんですよ。
そして凄まじいまでのエンターテイメント性を帯びている作品でもあります。
セーブデータが消える、エロゲーの箱すらも伏線、ヒロインがプレイヤーに語りかけてくる・・etc.など、語れば語る程多彩な演出にただただ、驚かされました。
もちろんただ奇抜なだけではなく、内容共々素晴らしいと断言できます。
まるで最初から何もかも決まっていて、あそこであの選択肢を選んだのは導かれたからとしか思えないような、そんな印象を抱かせてくれるのは完成度があまりにも高いからでしょう。
芸術とは完璧な理屈だ――という言葉がありますが、それに則ればこの作品も立派な芸術作品と言えるでしょう。
エロゲーを50本やっている私にとって、エロゲーそのものに疑問を投げかけてくるこの作品には大変な、大変な衝撃を受けました。
何度も言いますが、私はNTRがこの世で最も嫌いです。
就活で何十社も面接に落ちて精神がボロボロに傷つけられ、人の尊厳や今までの人生が否定されたかのような絶望感とよく似ています。
それでも、私が投げ出さずにプレイしたのはそれほどの価値がこの作品にはあると判断したからです。
とても辛い思いもしましたが、それと共に得られた物もたくさんあったと今となっては思います。
つたない文章で批評を終えますが、最後に採点をさせていただこうかと思います。
素点 88点
NTR、非処女 -8点
総合点 80点