グリザイアの果実をプレイ済みならば雄二ルートは絶対にやるべき。物語の根幹に関わる重要なエピソードであり、期待に違わぬクオリティに仕上がっています。
構成は雄二ルート&各ヒロインルート&おまけHシナリオ&ショートショートで構成されています。
○雄二ルート
一言で言うと凄まじい出来でした。
グリザイアの果実からずっと作中で語られてきた、雄二の師匠麻子とのエピソードや雄二の家族の話や生い立ちの全てが、このルートで解き明かされます。
美浜学園の生徒のほとんどが壮絶な人生を送っていますが、雄二は次元が違いましたね。
よくJBがこの世の不幸を全て体験してきたような面をする奴という風に雄二を例えていましたが、まさにその通りと言えます。
前作では何か辛い体験をしてきたのは分かるけど謎に包まれている人物として見ていましたが、今作で一気に主人公の心理に近づくことができました。
雄二ルートをプレイしてから前作をやると色々と新たに気付くことがあるかもしれませんね。
雄二が肉を食べられないことや、謝るのではなくありがとうと感謝の言葉を述べろと口酸っぱく言っていたのも、全て主人公の生い立ちに原因が存在していました。
肉を食べられないのは死体を数多く見たり人を殺してきたからであり、謝罪ではなく感謝を好むのは自殺した母親が常に父に対して謝っていたのが原因です。
死にたくなるような過去の人生を持っていても、そこから学び這い上がろうとする主人公の生き様には涙を誘われます。
雄二がこうして理性を保って学園生活を送っていられるのは、周りにいる人間に救われていたのが大きいですね。
麻子には師匠として生きるための術や処世術を全て叩きこまれ、「一人前の男なら人間5人救ってみせろ」と教え込まれました。
そしてその言葉が、グリザイア(灰色)のヒロイン達を主人公が救うこの作品のストーリーのテーマの1つになっているのです。
今まで闇のドン底にいた主人公が、軍人の女に拾われて助けられ、今度は主人公が誰かを救おうとする・・。
ここだけ聞けばありがちなストーリーとも言えますが、この作品は作り込みが違うので、心に訴えかけてくるものがあります。
一番印象に残ったのは、以下のシーンの主人公と教官とのやりとりです。
教官「お前はどうしてここに入ったんだ。何をしたんだ。俺はここの指揮官としてそれを知る必要がある。」
雄二「親を殺しました・・両方ともです・・」
教官「そうか・・」
ここのシーンには深いメッセージ性を感じられました。
まず、雄二のセリフには違和感があります。
普通親に対して「両方」なんて無機質な言葉は使用せず、両親と呼びます。
ここには雄二の過去のトラウマにより、家族というものに対して深い諦めにも似た感情を抱いていることが伺い知れます。
その後雄二の過去を聞いた教官は、組織において雄二を特別扱いし、様々な便宜をかけてくれるようになりました。
今は市ヶ谷にいるという当時の教官は、決して家族にはなってやれんが、ここでお前の居場所くらいならば作れる・・という気持で雄二に気をかけてくれたのではないでしょうか。
これは予備官時代の一コマで重要なシーンではないのですが、こういったシーンからでも受け手によってはメッセージ性を感じることができる。
私がグリザイアを好きな理由の一つです。
各ヒロインのAFTERルートをプレイしていた時は多少眠くなったりしたのですが、雄二ルートは本当に素晴らしく、気合を入れてプレイできました。
これだけやるためにグリザイアの迷宮を買うとしても全然損に感じることはない程のクオリティの高さだと私は思ってます。
○各ヒロインAFTERルート
ヒロインのAFTERなので、FD的な立ち位置ではないでしょうか。
そこまで長くはないし、内容も平和です。
最初はグリザイアの続編が出ると聞いて、あの内容で続編出すとしたらFDだよなと思っていたので、思っていた通りの感じでした。
その分、雄二ルートをやった時は度肝を抜かれましたが。
○Hシナリオ
清夏は本編では憎たらしかったのに、めちゃくちゃ可愛かったw
○ショートショート
基本的に流し見程度で、時々クスッと笑うような出来でした。文句はありません。