この作品をプレイして本当に良かった、と心から思える程素晴らしい作品です。シナリオが完全に洗練されていて、終盤は鳥肌が止まりません。
プレイ後は、歴史の偉人の長い自伝でも読んだ後のような心象に包まれました。
ヒロイン一人一人の過去の壮絶さは筆舌にしがたく、濃いキャラクター性には全て因果が存在しており、数多の経験の蓄積によりヒロインの性格が構成されているのだと知った時は総毛立ちました。
心に深い傷を負っているヒロインを救う方法など自分には到底思いつきません。
軍人の主人公が思考を凝らし、経験則に元ずいた方法を使用して解決していく姿は本当に素晴らしく格好良かった。
ヒロインを守れるのはこの男しか世界に存在しないと思える、理想像を体現したかのような主人公であったと言えます。
私は元々シナリオライターの藤崎竜太氏の大ファンで、このゲームには絶大なる期待を寄せていたのですが、全く期待を裏切らないどころか最高の出来に仕上がっていたので感激しました。
クオリティが本当に凄い。どれだけ綿密に作り込まれているんだ・・!とため息すらつく程の作品です。
特に印象的なのが天音ルートですね。
インパクトが尋常じゃありません。
まるで現場にいるかのような臨場感のあるテキストで描かれています。
人間が数日間食料を摂取しないとどのようなことが体に起きるのか、死体を食べると人体にどのような影響を及ぼすか、人間がPTSDに掛かるとどのような症状が起きるのか(幸ルート)など、
その場所にいる人間しか知らないような情報が雪崩れ込んで来るので悲惨さがより一層伝わってきます。
なんでこんなことをライターさんは知っているのだろうかと不思議に思うと共に尊敬の念が浮かびました。
シナリオライターが博学であれば博学である程、物語に深みが出るというものです。
テキストの他に演出も素晴らしく、幸ルートでは反則的とも言えるラストの演出に多くのプレイヤーが号泣したことでしょう。
一つこの作品の難点を言うとしたら、あまりにもストーリーが濃すぎるのでプレイ後にどっと疲れが押し寄せることぐらいですかね(笑)
それは物語に集中していた証拠でもありますけどね。
本当に素晴らしい作品に出会うと、人間はその作品からより多くの情報を得ようと脳が活発に活動するのでその結果として、他のどうでも良い作品と比べて疲労を感じると何かの文献で読んだことがあります。
発売前から懸念していた複数ライターによるルート別の違和感など全く無く、丁寧に仕上がっていました。
あまりにも個性が強すぎて過去散々やらかしている藤崎竜太氏をここまで使いこなすのは本当に優秀なクリエイターが集まっているんだなと実感できました。
良作をプレイすると実に清々しい気分になりますね。本当にありがとうございました。