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のびのびーたさんの処女はお姉さまに恋してる ~2人のエルダー~の長文感想

ユーザー
のびのびーた
ゲーム
処女はお姉さまに恋してる ~2人のエルダー~
ブランド
キャラメルBOX
得点
88
参照数
1024

一言コメント

おとぼくの世界にどっぷりハマりました。とんでもなく面白い。自分は2から入りましたが、全く大丈夫でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

~最初に~

まず最初に私の経歴を書きます。こういう人がレビューしているのかという参考程度で。

女装物が好きで「ひめしょ」「花と乙女に祝福を」「アッチむいて恋」「ときどきパクッちゃお!」をプレイ済みです。

良かった順に並べました。すいませんがおとぼく前作はやっておりませんm(__)m


~序章~

ギャグが面白い!テキストが泣けて良かった!などではなく、純粋に文章のポテンシャルが高い。

世界観にどっぷりハマれた。

原画がまたいい味出してて、シナリオとイラストの相乗効果で非常に完成度の高い内容に仕上がっています。

全く飽きない。むしろやればやる程味が出てきてハマる。

ある程度のラインを超える良作に出会うとまだ終わらないでくれ~!とプレイ最中に常に思ったり、終わった時の喪失感がなかなかシャレにならないレベルに達する経験をよくします。

それが正にこの作品でした。

パッチの存在を4章辺りで気付き、DLしたらキャラの服装がガラリと変わっていた。もっと早く気付いておけば。

いつもルートごとに順位をつけているのですが、つける必要が無いですね。全て神です。


~考察・感想~

最初に香織理に見つかるのはなんとなく分かってました。

しかしその後間髪入れずに薫子に見つかったのは驚きましたね。話大丈夫か!?とも思いましたが、薫子が特に男だというのを気にする事が無かったので物語の進行に影響は出なかったです。

ただ最初の薫子との百合百合しいシーンが無くなったのは残念ではありました。百合的要素は雅楽乃に取られたのでしょうか。

その後薫子が千早を男として認識し惚れていくのですが、欲を言えば千早は人気者なのでもっと嫉妬シーンを入れても良かったかな。

薫子ルートは文句なしです。そして次の史ルートをやって気がついたのですが、薫子ルートと共通が多いですね。

次回予告で使われてないシーンがあるのは他ルートも入っていたからなのか。

若干共通が長くて史が薫子と比べたらサブキャラルート的な感じになっていたのは残念でした。

でもそこが共通じゃなかった場合は全クリするのにとてつもない時間が掛かるのだから仕方が無いのかな・・?

私は100時間分あっても良いと思いますが(笑)

ケイリルートは9話から分岐していたので、史ルートと比べたら共通が少なかったです。

ケイリが攻めで千早が受けなのは中々新鮮で楽しめました。

薫子も千早の事が好きなので、ケイリと取り合いになるという展開があればよかった。

よく考えると薫子が千早の事を好きだというのが寮でモロバレになった後に、ケイリが千早をプールに呼び出すシーンがあったのでケイリが今の内に・・・と千早をかっさらったという形ですね。

結果的に薫子ドンマイなのですが、結局ケイリと千早が付き合っているというのは誰にも知られず終わったので、薫子が思いを千早に伝えるという事はしなかったのでしょう。

ケイリルートのラストの超展開はちょっとおとぼく世界観にはそぐわないかな。普通にシリアス抜いて平凡に終わって良かった。



~香織理ルート~

香織理ルートは最後の家庭の問題がなかなか考察のしがいがありますね。魂の長文を載せさせてもらいます。

香織理との世界を守る為に相手とは結婚をしないのを貫き通した香織理の母。

政略結婚で家庭を築いたが香織理の母と恋に落ち、不倫状態になった香織理の義理の父。

義理の父は香織理の母と結婚できれば、すぐにでも偽物の家庭や職など放り出しても良かった。

香織理は何故自分の父親が浮気をしているのか理解できなかった。最初から再婚という形で父と母が結婚していれば香織理の義理の父に対する反応は違ってきていただろう。

しかしそれが無かったので香織理は母親と義理の父から仲間はずれにされている様な気持になったのです。

本当は母親から愛されているという事を義理の父から知らされた時に驚いていたので、内心では母親に本当に愛されていたのか、自分は邪魔では無かったのか不安だったのでしょう。

また、香織理は母が結婚しなかった理由について義理の父が家庭を持っていたのでしなかったという考えを持っていました。

ですが、義理の父から香織理の母が香織理との世界には誰も踏み込ませたくないから、結婚を申し込んだがそれはできなかったという事実を知らされます。

そして香織理の母は香織理を世界で一番愛していると言っていたので、香織理の母は義理の父を香織理を選ぶのならば香織理を選んでいたことだと思います。そこまで母の愛は深かった。

なのでもはや香織理は義理の父を怨んでいる理由は無くなったのです。母は自分を一番愛していたのですから。そして義理の父は無害である事が分かったのですから。

そこで香織理は気付きます。もはや当人二人の問題で私には関係のない話であったのだと。

それは千早と香織理がハモって、私には関係のない事だわと言っている部分でも分かります。また、あそこで香織理はその事実に気付いたのでしょう。

母親が死んでいなかったらまた違う結末だったでしょう。少なくともこの様に悲しい物語にはならなかったはずです。

義理の父と会った時に軽口を叩きあうぐらいの仲ではあっただろうと思います。

母親が死んでしまって、その気持ちが確かめられる事は無く、心は冷たく冷え切っていってしまったのです。

両親の話は深く、自分に干渉できる場所もなかった。物語は完結していた。誰も悪くなかったのである。

香織理は全てを理解し、カフェテリアを後にしました。


千早が一番難しい問題だと思います。

香織理の場合は義理の父親は割と誠実な人で見方によっては善人ですらある、なので香織理の心の折り合いの問題で香織理はあの後義理の父の事を許している可能性があります。

しかし千早の父親の場合は取り返しのつかないと言っても良い過ちを犯してしまった。香織理の誰も悪くなかったというパターンではないのです。

姉が他界し、母親がショックで姉の存在を忘れて精神が不安定になるという家庭崩壊といってもいい状態になってしまう。

その時に千早の父親はその問題に向き合う事を恐れ、自分の仕事に逃げてしまったのだ。これは千早には相当なショックで父親は怨まれても仕方が無いと思う。

千早のケースでは最初から千早の父親が悪いと分かっているというパターンなのだ。

それを千早は理解し、父親が全面的に悪いとし父親との関係を拒絶する。

しかしそれで本当に良いのか?とこのルートでは家族の関係性を問うているのだ。

率直に言おう。千早は父親と和解するのか、しないでこのままで行くのかという簡単な二択を迫られているのである。

父親もいくら仕事に逃げたとしても定年や何かの用事で家に帰ってくる事があろう。そこには冷え切った家庭があり、そこに父親の居場所は無いだろう。

冷え切った関係。無言の食事が食卓の上で花を咲かすだろう。

そこでようやく自分は何か間違っていたのではないか?こんな家族を夢見ていたのか?と自問自答する事になる。

千早以外の人物であれば「私は悪くない。悪いのは全て家庭を顧みなかった父親なのである。」と思考を停止しているのかもしれない。

しかし千早はそんな人間ではないのだ。もっと何かすべき事があっただろう!!と思うはずである。

だから千早はそんな後悔をしない為にもあそこで父親を許そうという気になったのである。何も千早は悪くないのにだ。

ここでの千早の最大限の譲歩は「父親が自分との関係を修復する意思があるなら、私は全てを許そう」だった。

千早には父親と和解する為に父親と会いに行くという手段も当然可能性としてあった。

しかし千早はそれを取らなかった。いや、取れなかったのである。そこでそこまでの譲歩ができる程安くはなかったのだ。それは仕方のない事である。

なので香織理ルートでは千早は父親と和解するシーンは無かった。その後和解したのかもしれないが。

自分は千早が父親と和解するシーンがあるとさらに良いENDになっていたかなーと思った。

千早の父は弱い人なのだ。千早の父は母と結婚するために、なりたい職業を捨てて外交官になる程の母を愛していた。

その母の気が触れてしまい、最愛の長女までもがこの世を去るという想像を絶する苦痛を千早の父は目の当たりにした。

そしてそこに千早を置いて父は逃げた。それを責められる人がいるとしたら、それは千早以外にはいないんですよ。

千早は父を許す事もできるし、突き離す事もできた。しかし父親が非を詫びるのならば、そこに一本の可能性を作ってあげてもいいのではないかと思う。

父親を許す。許さない。この話の本質はただそれだけの事なんです。

しかし家庭に許せない父が居るのと心を許した父が居るのではどちらがいいのですか?そういう話になります。私にはその二つにはあまりにも大きな差があると思いますよ。

そして千早は父親を許したがっているという自らの心に気付き、呪縛から解き放たれ、憑き物が取れた様な顔をしていました。

その後、父親と顔を合わせる日も遠くはなかったと思います。

本当に千早と香織理が親の事を理解したかどうかは対談が終わった後、千早と香織理が喋っている文章の1つで証明できます。

「私達もそろそろ本当の反抗期をしてもいい頃よね。」と香織理が言っているので自分達の親を理解したという事が分かります。

今までのは反抗期でも何でもなく、ただ親を理解せず、理解しようとしなかっただけであるという千早と香織理の意思表示なのです。

香織理ルートはハッピーエンドではありませんが希望が見えるENDです。

ハッピーエンドでは問題が見えてきにくい傾向があります。なにせ記憶に残りずらいですし。

なかなか難しいシナリオでした。

こんだけ長文書いといてあれですが、私は何も考えずプレイできるシナリオが好きですね。

史ルートや薫子ルートや雅楽乃ルートの様な軽~い感じのが好きです。ケイリルートは特殊すぎてなんとも言い様がないのですが。



淡雪ルートはちょっと喧嘩が多かった気がしますがおおむね良かったです。

うたちゃんと千早に駄目出される→キレる→うたちゃんが家元試験に出る事を隠す→キレる→千早が男と発覚→キレはしないが、無視される。と波乱続きでした。

淡雪が千早に慰められて寮に泊まった時は、やっと仲直りしたか・・やっとイチャイチャが見れる、と思った瞬間男だとバレたのにはビビりました。短い平穏だった・・

もうちょい尺を長くして日常シーンやイチャイチャシーンを取り入れて欲しかったかな。

話はよくまとめられて良かったと思いますよ。

雅楽乃ルートはシリアスが皆無といっていいほどありません。

なので日常シーンやイチャラブを思う存分楽しめました。

最後にいいものをプレイさせてもらったと思ったのですが、おまけが凄かった。これは凄い。

おまけなのにCGやHシーンがあるとは(笑)



~最後に~

ルート別の共通の多さに若干げんなりしましたが、それを差し引いても素晴らしさが余り出る出来です。

ただ、千歳が成仏するシーンが薫子・ケイリ・淡雪と3パターンもいらなかった。これ3回も見せる事に何か意味でもあるのでしょうか?

話のつじつまを合わせるのには仕方がないのかもしれませんが、3回も見せられたら感動も掘り下げられるというものです。

それと優雨ぅうううう!!!何故優雨のルートがないんだ!!

あれだけ関わっておいて、まさかルートが無いとは・・。こんな可愛いサブがいてたまるかと。血の涙を流しましたよ、ええ。

愚痴はそれぐらいですね。欲を言えば初音・陽向・沙世子も攻略したかったのですが(笑)


久しぶりに素晴らしい主人公と出会えました。女装ものの主人公の中ではNo.1です。

他の女装物では髪の毛をごまかす為にウィッグを使うのですが、それが無かったので男成分の減少に繋がり、安心して百合成分を補給できました。

甘い言葉を囁く主人公は普通なら気障なキャラなのですが、千早なら許せる。むしろカッコ良い・・!!

女装もので主人公が完璧超人な作品は斬新でしたね。これは病みつきになりそうです。

またこういうのが出たら速攻で買います。もっとも全てがおとぼく2の二番煎じになるでしょうが・・

もしも、次回作が出るのなら激しく妹成分を取り入れて欲しいですね。

こんな魅力的なキャラクター達に一度に出会えるとは実に幸せ者というものです。

本当にありがとう!!